校長室
6つの鍵と性転換
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「よし、ここでひとまず整理をしてみよう」 と、リズィは提案をした。 「まず、この矢印形と丸形で男性の記号になるんだったな」 「この組み合わせだけは、みんな共通していたね」 と、初めから謎解きに参加していたクリストファーは言う。 「マーズシンボルが出来るなら、ヴィーナスシンボルも出来るはずだね」 そう言った天音に一同はうなずいた。 「となると、丸形と十字型でそれが出来るわけだが……」 「矢印形と丸形、十字型の3つが答えでしょうか?」 史織が意見をまとめる。 「まぁ、おそらくそうだろうね」 「それじゃあ、この3つの鍵を差してみよう」 と、清泉北都(いずみ・ほくと)は3つの鍵を手に取った。 そのうちの2つをソーマ・アルジェント(そーま・あるじぇんと)へ差し出す。 「え、俺もやるのか?」 「もちろんだよ。だって一人じゃ出来ないでしょ」 と、北都はもう片方の手で機械を自分たちの方へ引き寄せた。 「まあ、理屈からすれば正解っぽいが、間違ったら責任とれよ?」 過去に一度薬で性転換したことはあるが、好きでなったんじゃないからな。別に女になる事に抵抗はあまりないんだが、恋人より背が低くなるのが嫌なんだよ。などとソーマは文句を言いながら、北都から鍵を受け取った。 「いくよ」 二人は同時に鍵を差した。 何か変化が起こるかと期待した一同だが、リズィの姿はそのままだし、トレルにも変化は見られない。 「おや、違ったらしい。悪いね、ブルーズ」 と、天音は特に悪びれた様子もなくパートナーを振り返る。 ブルーズは何か言いたそうにしていたが、呆れたようにため息するだけだ。 「丸じゃなくて、こっちのドーナツ型なんじゃないかな?」 と、クリストファーはドーナツ型の鍵を手にした。 「ドーナツ型は丸が二つだ。横書きにすると、二つの記号が重なってみえる」 リズィはソーマの手にした矢印型の鍵を受け取り、クリストファーは北都から十字型の鍵を受け取った。 そして二人は目を合わせた後、同時に鍵を差した。 「お手上げですぅ〜」 と、史織は肩を落とした。 クリストファーもやれやれと息をつき、困り顔だ。 そこへ進み出てきたのは明日香だった。 「もうすぐ日も暮れちゃいますし、私の答えを教えますね」 と、明日香は6つの鍵の中から4つを手に取った。 「答えは矢印形と丸形、そして十字型とドーナツ型です」 「ドーナツ型も見方を変えれば円になるからな」 と、補足をする大佐。 一見するとドーナツ型の中には円(丸)が2つあるように見える。しかしその2つの円を輪郭線とするなら、それはただの円であり、1つの丸である。 「なるほど。十字型のすぐ上に丸形があるじゃないか」 と、リズィは納得した様子で呟いた。何も難しく考える必要など無かったのだ。 「私は見てすぐに思いつきました〜」 と、明日香は両手に2つの鍵を持ち、残りの鍵をリズィへ渡した。 「それじゃあ、さっそく解いちゃいますね」 「ああ、頼む」 4つの鍵が同時に差されると、性転換した者たちが一斉に白煙へ包まれた。 「お願いがあるの、リズィさん! この機械、ちょっとだけ貸してもらってもいいですか?」 と、歌菜は目をキラキラさせながら尋ねた。 「ああ、別にかまわないよ」 女性の姿へ戻ったリズィは体つきが変わっただけだった。顔立ちは元から中性的だったようで、男装の麗人にもなれそうだ。 「ありがとう、リズィさん! 使い終わったら、ちゃんと返しますね」 と、歌菜は機械と6つの鍵を受け取った。 「いやー、トレルが元に戻って良かったな」 と、唯斗はいつもの小柄な姿を取り戻した彼女へ言う。 「まったく、さんざんな目に合いましたよ。楽しかったですけど」 「よーし、それじゃあ呼び出されたお詫びに今日は付き合ってもらうぜ」 「え? 付き合うって……」 「観光だ!」 と、唯斗はトレルの手を取って街の中心部へと歩き出す。 一方、八雲は先ほどの青年がトレルだったことに驚きと戸惑いと恥ずかしさを覚え、動揺していた。 「まさか、彼女だったなんて……」 「兄さん、追いかけなくて良いの? あの二人、さっさと行っちゃったけど」 と、弥十郎は言ったが、八雲は動揺が大きすぎて動き出せない。 傍観していた大佐は極端な二人だと思いつつ、女の子に戻ったトレルを追って歩き出す。 「占いの箱?」 と、月崎羽純(つきざき・はすみ)は疑いの視線を歌菜へ向ける。 「うん! 中央にあるボタンを押すだけだよ」 歌菜は満面の笑みを浮かべており、羽純は不思議に思った。しかしこの機械がどんなものかも分からないし、本当に占いの機械である可能性も否定しきれない。 羽純はそっとボタンを押した。 「やったー♪ 羽純くん、可愛いっ」 と、歌菜は瞳をキラキラさせた。 目線が低く、胸にふくらみと下半身に物足りなさを覚える羽純。 そして歌菜もボタンを押して男体化し、恋人へ微笑んだ。 「一日付き合ってくれたら、元に戻す方法を教えてあげる♪」 「……歌菜、それは完全に脅しだろ」 と、呆れる羽純。 しかし歌菜は嬉しそうに言った。 「よーしっ、まずは羽純くんを着飾るところからスタートだ〜!」 と、羽純を抱き上げ、お姫様抱っこする。 性別が逆転した今、羽純は歌菜に勝ち目はない。 「……くそ、元に戻ったら覚えてろよ? たっぷりお仕置きだ」 と、羽純は呟き、彼女の気が済むまで待つことに決めるのだった。
▼担当マスター
瀬海緒つなぐ
▼マスターコメント
ご参加いただいた皆様、お疲れ様でした。 謎解きについて、様々な解答があって面白かったです。 それでは、またの機会にお会いしましょう。 ありがとうございました。
▼マスター個別コメント