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【WF】千年王の慟哭・前編

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【WF】千年王の慟哭・前編

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                     *


 一方その頃、第1フロアを突破した契約者たちは、十字部分の横棒にあたる第2フロアへと辿り着こうとしていた。
 そんな契約者たちが第2フロアへと足を踏み入れたその瞬間。
 フロアの明かりに、一斉に火が灯った。

「わわっ!?」

 その突然の出来事に、天禰 薫(あまね・かおる)が声をあげた。
 そんな薫を背中に乗せている巨熊――獣人の熊楠 孝高(くまぐす・よしたか)は、横に長い左右の通路を見て牙を剥き出す。

「挟み撃ちか!」

 孝高の言うとおり、剣や槍などを持った大勢の鏖殺寺院の信徒たちが、左右から契約者たちに迫ってきていた。
 それを見た熊楠 孝明(くまぐす・よしあき)がやれやれといった様子で肩をすくめる。

「いきなり襲い掛かってくるとは無粋な奴らだ」
「ぴきゅぴきゅう!(そのとおりなのだ!)」

 薫の肩に乗っていたわたげうさぎの天禰 ピカ(あまね・ぴか)が、そんな孝明に答えるようにぴょんぴょんと跳ねた。

「でも、先に進む道はすぐそこなのだ……孝高!」
「いわれなくてもわかっている。突っ切るぞ!」

 孝高はそういうと、床を蹴って走り出す。
 そして孝高の上に乗っている薫は弓を引き、進路を邪魔する敵を打ち倒していく。

「グギギギッ!!」

 と、そんな薫の元に翼を持ったヴァリアントモンスターが上から急降下してきた。

「えっ――うわあっ!?」

 上からの不意の攻撃を受けてしまった薫とピカは、孝高の上から転げ落ちた。

「薫!?」

 孝高は足を止め、後ろを振り返る。
 すると、左右から迫っていた敵が武器を振り上げ、倒れた薫に向かって躍りかかっている姿が目に入った。

「やあッ!」
「はァッ!」

 と、そんな敵の体に斬撃が走る。
 そしてバタバタと倒れた敵の後ろから志方 綾乃(しかた・あやの)と孝明の姿が現れた。

「大丈夫か、薫?」

 孝明はそういいながら、薫のことを助け起こす。

「あっ、ありがとうなのだ」
「ぴっぴきゅう!(ありとうなのだ!)」
「お礼は結構です。それより、ここは私にまかせて早く先へ!」

 綾乃はそういうと、襲い来る敵を迎撃する。

「わかったのだ。ここはまかせるのだ!」

 薫は綾乃にそういうと、足早に孝高の下へと戻っていく。
 そして孝高は、薫たちが背中に乗ったのを確認すると、最奥の第3フロアへと繋がる通路に向かって再び走り出した。

「もうっ、敵が多すぎる!」

 小鳥遊 美羽(たかなし・みわ)はそういいながら、左右から襲ってくる大量の敵たちに向かって、脚力強化シューズで強化した足技を放つ。

「これじゃあ、先に進めないじゃない!」
「美羽さん、ここは私にまさせてください」

 と、彼女のパートナーであるベアトリーチェ・アイブリンガー(べあとりーちぇ・あいぶりんがー)は、両目を閉じて呪文の詠唱を始める。
 そして詠唱が終わると、彼女は目を見開いた。

「いきます……ファイナルレジェンドッ!」

 ベアトリーチェが放った伝説の最終奥義に、行く手を阻んでいた敵たちが吹き飛んでいく。
 だが、その威力は抑えられていたため、相手は目を回した程度だ。

「今です! 行ってください、美羽さん! 私もあとか行きます!」
「ベアトリーチェ……うん、わかった!」

 パートナーに背中を押され、美羽はウォルター教授を捕まえるために先へと向かった。

「下は敵が多いみたいね。それなら私たちは上から行くわよ!」

 リネン・エルフトはそういうと、空中を飛ぶことができるハイライダー・ブーツを使用して天井高く舞い上がる。
 そんなリネンに続き、ヘイリー・ウェイク(へいりー・うぇいく)フェイミィ・オルトリンデ(ふぇいみぃ・おるとりんで)も、背中につけた強化光翼で同じように飛び上がった。
 だが、空に飛び上がったリネンたちの前に、空飛ぶヴァリアントモンスターたちが現れる。

「ギィギャァッ!!」
「邪魔しないで!」

 リネンはそういうと、タービュランスを使って乱気流を生み出し、敵を吹き飛ばす。

「則天去私!」

 そんなリネンの後ろでは、フェィミィが大勢の敵に必殺の拳を浴びせる。

「みんなやっちゃいなさい!」

 さらにその横では、ヘイリーが部下である飛空兵たちを指揮して敵を叩き落した。
 タシガン空峡の義賊・シャーウッドの森空賊団として名声を馳せる彼女たちの戦いに隙はない。

「さあ、行くわよ!」

 リネンの掛け声にフェイミィとヘイリーはうなずく。
 だが敵のモンスターたちはまだまだ存在し、彼女たちを狙っていた。

「数が多いわね……しょうがない!」

 と、ヘイリーが動きを止めてモンスターたちに向き直る。

「ヘイリー!?」
「リネン、ここはあたしたちで十分よ。とっとと行きなさい!」
「……わかったわ。ここはお願い!」

 リネンはヘイリーの背中にそういうと先に向かっていく。

「――で、エロ鴉。なんであんたまで残ってるのよ」

 と、ヘイリーはこの場に残ったフェイミィに横目を向けていった。

「ふん、言っとくがおまえの為じゃないからな。これも、リネンやエンヘドゥのためだ」
「まあ、いいわ。せいぜい死なないようにがんばりなさいよ!」
「それはこっちのセリフだぜ、ヘイリー!」

 ふたりはそう言い合うと、それぞれ武器を構えた。
 そして向かってくるモンスターたちとシャーウッドの森空賊団は再び激突する。