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リアクション
【パラミタ雀姫伝 〜女流麻雀王に、私はなる！〜】
そこはいつもは、多くの人の癒しの場所であるタシガンの酒場【密楽酒家】
空賊や商人など、多くの表と裏の者がごったがえす雑然とした場所が
かつてない熱気に包まれていた
緑に彩られ、淵を木の枠で囲んである正方形の机の上には、立体のホログラムウィンドウ
それぞれに６桁の数字が表示されている
そんな最新式な機能に反して
机に並べられているものはアナログな無数の小さいな直方体
【ユリア樹脂】で形成された手に収まるほど小さいそれには、様々な模様が刻まれ
それがそれぞれ一定のパターンで並べられ、お互い見えない様に１３個並べられている
無人のその様に反したように、周囲のギャラリーはその行為を熱狂的に見守り
その熱気を盛り上げるように、その机の前で
メイド服姿のレティシア・ブルーウォーター（れてぃしあ・ぶるーうぉーたー）がマイクを片手に盛大に声をあげた
「さぁ！突発的に多くの可憐な少女をを巻き込み
容赦なく開催されましたこのイベント！【勝ち抜け★最強雀姫決定と〜なめんと】
多くの激戦を繰り広げ、気がつけば決勝戦だぁぁぁぁ！
中国紀元前６世紀から連綿と受け継がれたこの弱肉強食の非常なゲームを勝ち抜き
見事頂点に立つのは誰か！
それを見守るギャラリーの熱気が熱いぜ熱いぜ熱くて死ぬぜぇぇぇぇぇ！
お前ら！それ程までに麻雀が好きかコンチクショ〜！！」
おおおおおおおおおおお！と歓声に沸きたつ周囲の声
その反応にガッツポーズで答えるメイド司会者
「オーケー！そんな応援で大丈夫か！？大丈夫だな問題ないっ！！
では待ちに待った可憐な戦乙女達の登場だ刮目せよ！いざ登場っ！！」
レティシアの声とともに、いつどこでそんな魔改造が行われたのか、麻雀卓の周囲の床が開き
ウィィィィィィンというモーター音がうなりをあげる中、４人の少女が顔を出した
「まずは一人ずつ自己紹介だ！
そのアイドル属性のどこにこんな非情なスキルを持っていたのか！？
【牌はトモダチ】茅野瀬 衿栖っっ！」
４人の少女の一人……茅野瀬 衿栖（ちのせ・えりす）が可憐にギャラリーに手を振る
男だけでなく、同性の『きゃ〜かっわいい〜』という声にはにかむ彼女に
隣の茅野瀬 朱里（ちのせ・あかり）が不敵に鼻で笑う
「へぇ、衿栖も此処までこれたんだ？その営業スマイル……どこまで持つのかしらね？」
「おおっと！何やら早々に挑発的な様子な次の挑戦者！
可憐な姿と裏腹に【１８０歳】というギャップ萌えも裸足で逃げ出す老獪さで勝ち残った吸血鬼！
【非情の決闘魔】茅野瀬 朱里ぃっ！」
「誰が老獪だってぇぇぇぇぇぇぇぇ！？」
思わず紹介コメントに牙をむく朱里の隣で、涼しげに座るのはセラフィーナ・メルファ（せらふぃーな・めるふぁ）
さっそく几帳面に目の前牌をチェックしながら呟いた
「そんな感情的になっていると寝首をかかれますわよ朱里くん♪」
「対してこちらの闘志はとってもコールド！見る人のハートを完全ホールドかぁっ！？
徹底した感情を捨て戦いに臨む【数値の魔術師】セラフィーナ・メルファぁっ！」
紹介アナウンスに、ついっと眼鏡を知的に指で引き上げ呟くセラフィーナ
「このようなゲームは感情を捨て、思考に徹したもの勝利を掴む
……とはいえ、まさかここで彼女まで勝ち残るとは思いませんでしたけど？」
その言葉につられ、衿栖達も最後の一人の顔を見る
そこには闘志みなぎる３人とは違い、ワクワクと牌を覗き込む琳 鳳明（りん・ほうめい）がいた
そんな彼女に最後の紹介アナウンスが響き渡る
「さぁ、最後は誰が勝ち抜くことを予想したか！？非情な机上の戦いに笑顔で圧倒の可憐な笑顔！
でも甘く見てると中国四〇〇〇年の妙技が炸裂するぜ！？
【天然の戦乙女】琳 鳳明っ！！」
全員の紹介に一層沸き立つ観衆
その様子と、そろった挑戦者をながめて、鳳明が呟いた
「決勝は衿栖さんと朱里ちゃん…そしてセラさんか。皆知ってる顔でちょっとホッとしちゃったよ〜。
あ、でも８４６プロ所属同士の決勝になったんだね。
よしっ、手加減抜きで行くよ！皆全力で打って、いい一局にしようねっ」
戦う者としては至極真っ当な精神にのっとり呼びかけられた言葉
だが、向き合う者からは涼しげな反応しか感じられない
そして鼻で笑いながら朱里を筆頭に次々と言葉が返される
「フン、そうやって【楽しむのが一番】を看板にして主人公属性でも気取るつもり？
悪いけどこの世界はそんなスポーツ漫画にありがちな流れはないの、真っ二つにしてあげるわ！」
「朱里さんも大人げないですよ？勝負はすべて結果です。
そんな漫画ネタなんて曖昧なものを引き合いに出すなんて笑止です、徹底した数値の世界を知るがいいです」
「ふふふふ、そうかしら？朱里さん？セラフィーナさん？
麻雀もアイドル活動と同じ！運とすべての流れをつかみ取ってこその勝負！
流行イメージＮｏ１の麻雀！麻雀を制す者は、アイドル界を制するのです！あははははは！」
「く、珍しく【さん】づけまでするその余裕……朱里達の存在意義と勝負を結びつけるなんて！
衿栖……恐ろしい子！」
かくも、闘志を漲らせ熱気に包まれている大会だが……発端は些細なことだった
活動に対しては精力的な８４６プロの面々が、ちょっとした感謝イベントとしてカフェをやろうと思い立ち
空路で人の交流が多いタシガンの【密楽酒家】にお願いして場所を借りたのが一日前
世俗の流行にのっとり【コスプレメイドカフェ】的な展開に、普段そういうのに触れていない荒くれ者も
すっかり盛り上がり、純粋にイベントは盛り上がっていた
………しかし、場所を借りたのが【酒場】だったのが災いしたのか
【ポータブル麻雀】を机に広げ盛り上がる男とある男連中の相手を鳳明がした瞬間から流れの変化が始まった
彼女の意外な強さに驚いた周囲の連中も、デバイスのアプリを立ち上げたりで相手として彼女を指名し
完全に彼女の独占人気になってしまったのである
……こうなると、お客様とファンあってのアイドルの世界
そんな奴より自分の方が相手になると他の者も主張（営業）をはじめ完全に供給が需要を上回った時
……酒場から【ナンバーワンを決めたらどうだ？】との提案が上がったのである
その提案は瞬く間に、客側にも広がり
客として来ていた貿易商のトップが設備機材や景品まで用意してくれた事により
いつの間にやら大それた一大バトルイベントになったのである
一応公平のため８４６プロ以外の女性参加もつのり、多くのエントリーがあったのだが
勝ち残ったのがこの４人になってしまったあたり、勝負の非情さとアイドルの相性は意外といいのかもしれない
そんなわけで、アイドルとしての営業だけでなく
思ってもないスポンサーの協力による【賞金１００万Ｇと副賞の最新自動卓】という景品に
頂上決戦に臨む４人の闘志はいっそうに上がる
………しかし、勝利の美酒だけではこの世界の非情さを知る事はできない
敗者の地獄とも隣り合わせであってこそ、真の勝負は成り立つといわんばかりに
司会のレティシアが高らかにそれを宣言する
「なお！この決勝戦においてのみ、豪華な商品だけでなく非情のルールが用意されております！
レッツカマ〜ン★」
彼女の合図で奥からミスティ・シューティス（みすてぃ・しゅーてぃす）がワゴンをからからと押して登場する
それぞれの適温で保存する透明なケースに入れられた料理に観客（主に女性）が息をのむ
「この勝負、最下位にだけ罰ゲームがあります
当カフェイベントを８４６プロが行う際に、あまりの凶悪さに却下されたという没メニュー
その４つのいずれかを食して頂きます！
もちろん！お残しはゆるしませんえ〜」
その言葉とともに衆目にさらけ出される４種のメニュー
凶悪な赤さで彩られる中に浮かぶ豆腐の代わりに用意された激甘マシュマロの【甘口マシュマロ麻婆丼】
茹でたての湯気を放つ麺にとっぷりとかけられた蜜に乗るフルーツとクリーム【ぶっかけ餡蜜うどん】
丁寧に盛られた山盛りパスタの上に絡みつくのはミートソースでない【甘口チョコバナナスパゲッティ】
深い丼の上に、甘味何処ジャンルのすべてを凝縮そして具現化した【小倉丼（御飯が見えない）】
ひぃぃぃぃぃぃ！と観衆（主に女性）がその醜悪さに目をつぶり、耳をふさぐ中
４人の闘志がかつてないほど非情に、その髪が逆巻くほどにゴゴゴゴゴゴゴゴ……と音を立て
激しく燃え上がるのを誰もが目撃した
かくて戦場の用意は整い、春のSS最大の勝負が展開される
「さぁすべてが整う中！４人の小●宙もセブンセ●シズに目覚める程の勢いだ！
その思考を最大限に加速させて戦うがいい！４人の華麗なる獣ども！！
マージャンファイト！レディィィィィィ！ゴォォォォォォォォォォォォッ！！」
レティシアの声とともに勝負の狼煙が上がり、卓中央のサイコロが華麗に舞う！！
その勝敗の行方は！！
【〜つづく〜】
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