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【蒼空ジャンボリー】 春のSSシナリオ

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【蒼空ジャンボリー】 春のSSシナリオ
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リアクション


【お買い物デートで、お揃いゲット♪】 〜 キルティス・フェリーノ(きるてぃす・ふぇりーの)御上 真之介(みかみ・しんのすけ) 〜

「ねぇ、御上君。これなんか、いいんじゃない?」

 そう言ってキルティス・フェリーノ(きるてぃす・ふぇりーの)は、やや細身の黒縁メガネをを指差した。
 独特の曲線を描くフレームのラインが、黒縁メガネ特有の野暮ったさを見事に払拭していた。
 
 御上とキルティスは今日、空京でも一、二を争う大きさで知られるショッピングモールに来ていた。
 去年の秋に約束したまま延び延びになっていたデートが、ついに実現の運びとなったのである。
『二人っきりで、ゆっくりして楽しんで来て♪』という粋な計らいにより、パートナーの東雲 秋日子(しののめ・あきひこ)は同行していない。

「そうだね、ちょっと貸してみて――どうかな?」

 いつもの瓶底メガネを外し、黒縁メガネを試着してみる御上。
 振り向いたその顔を見たキルティスは、思わず「キャー!」と黄色い歓声を上げた。
 何事か、とこちらを見た客や店員たちも、御上の顔を見て一斉にざわつき始める。

「うん!イイ、スゴくイイ!御上君の頭の良さそうな所と、誠実そうな所がスゴくよく出てる!」
「そ、そうかな?」
「そうだよ〜!」

(やっぱり、御上君メガネ似合うわ〜。瓶底は止めるにしても、御上君の魅力を引き出せるメガネならアリよ!)

 周囲のざわめきと集中する視線に優越感に浸りながら、一人悦に入るキルティス。

(咄嗟の思いつきだったけど、やっぱりメガネ買いに来て良かった!)

 と、キルティスはしみじみと思った。


 ――話は、昼に遡る。

 お昼に入ったカフェレストランで、「そろそろ瓶底メガネを卒業しようと思う」と御上から打ち明けられたのである。

「最近、円華さんの後見人の仕事が多いだろ?だから、色々な人に会う機会も増えてるんだけど、そういう席で顔を隠すようなメガネを掛けてるのは、やっぱり心象が良くないみたいでね……」

 御上はコーヒーに入れたミルクポーションをかき混ぜながら、思案気に呟く。

「心象良くないって……。それ、円華さんに言われたの?」
「いや。円華さんは、僕がメガネを掛けてる訳を知ってるからね。勧めてるのは海棠(かいどう)さん」
「あー……。海棠さん、早く御上君に正式に後見人になって欲しくてしょうがないみたいだからね……」
「まぁ、海棠さんだけならともかく、この間ハイナ総奉行や宅美さんからも同じようなコトを言われてね」
「え!?ハイナさんや宅美さんまで!?」
「うん……。それに、円華さんも前から知り合いの前ではメガネを外すように勧めてるし、そろそろ潮時かな、なんてね……」
「そうなんだ〜。私としては御上君には、出来るだけ顔を隠しておいてもらいたいな〜。あのなぎさみたいな子の例もあるし……」
「うん。まぁ僕もそれについては考えなくは無かったけど、そういったことについては、基本的に僕がしっかりすればいいだけの話だからね」
「そっか……。御上君の決心は、もう固いんだね……。それなら御上君、メガネ買いに行こうよ、メガネ!」
「メガネ?」
「うん!御上君元々目は悪いんだし、いっつもコンタクトって訳にもいかないじゃない?それなら、とびきりオシャレなの買おうよ!御上君の魅力を200%引き出せるようなヤツ!」
「に、200%って……そんなのあるかな?」
「モノは試し!早速メガネ屋さん行ってみよ?明日から四州島だし、向こうに行ったら当分買えなくなっちゃうよ!」
「で、でも、今日はキルティスの買い物に付き合うハズじゃ――」
「いいのいいの!私は私で伊達メガネ買うんだから!」

 こうして、半ば引きずるようにして、御上をメガネ屋に連れて来たのだった。


「有難うございました〜」

 深々と頭を下げる店員にヒラヒラと手を振って、上機嫌で店を後にするキルティス。
 その顔には、明るい色の伊達メガネが光っている。
 そして御上の顔にも、先程の黒縁メガネとは違う、真新しいメガネがかけられていた。

「メガネもTPOで使い分けないとね♪」

 というキルティスの勧めに従って、黒縁とは別にもう一つ買ったのである。
 この御上のメガネとキルティスのメガネは同じデザイナーの手によるもので、男女の別と、さらにカラーリングの違いがあるものの、見る人が見ればちゃんと「お揃い」に見えるものだ。
 モチロン、御上のメガネに合わせてキルティスが買ったのである。

(ウフフフフ……。御上君とお・そ・ろ・い♪)

 御上と揃いのメガネをかけているというだけで、世界がまるで違って見える。
 キルティスは、すれ違う人達が、御上と並んで歩く自分を振り返るたびに、優越感と喜びが、体の底から沸々と沸き上がってくるのを感じた。

「御上君、私とのデートの時は、必ずそのメガネをかけてきてね♪」
「う、うん。いいけど……」 
「絶対だよ!約束だからね!!」

 その後のキルティスが、終始上機嫌だったのは言うまでもない。