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第1章 恐怖と思惑のゾンビ化

「まさにチート……無敵ねっ!」
 セレンフィリティ・シャーレット(せれんふぃりてぃ・しゃーれっと)は笑いながら、【擲弾銃バルバロス】を構え、次々とローゾンビを爆発させていった。
 セレンフィリティの体はすでにゾンビ化しており、パートナーのセレアナ・ミアキス(せれあな・みあきす)の血を飲むことで精神を保っていた。
「たしかあっちに、キングゾンビってやつが向かって行ったのよね?」
 セレアナはキングゾンビが逃げていくのを見ていた。
 そのため追いかけてきた二人だったが、だがセレアナは【朝露の顆気】を構えてはいるものの前を見ていなかった。
「……もしかして、私がゾンビになったことを?」
 セレンフィリティが聞くと、セレアナは頷きもせず前へ無言で進んでいった。
「これが終わったら、ショッピングモールからタダでご褒美をもらわなきゃね!」
 セレンフィリティはセレアナを励ますように明るくふるまった。
「セレアナ!」
 その直後で、セレンフィリティは叫んだ。
 セレアナが向かっていたスタッフ出入り口が音を立てて激しく倒れてきたと思えば、ローゾンビが10、20、30……ざっと40は並んで現れた。
 今のセレアナのSPでは無理だと想い、セレンフィリティは慌ててセレアナを後ろに引っ張った。

                    §  

「こっちぽいぜ」
 ヤジロ アイリ(やじろ・あいり)は、【女王の加護】を使いキングゾンビを探しだそうとしていた。
 その感覚は、スタッフ出入り口のほうへと導いていた。それと同時にヤジロは喉に渇きを感じていた。
「セス、血をくれ」
「はい、わかりました」
 セス・テヴァン(せす・てう゛ぁん)は丁寧に腕をアイリの前に差し出すと、アイリは思いっきり噛みついた。
「ぷはーっ、ウマーイ! もっと飲んで良いか?」
 アイリは物欲しそうに上目遣いでセスに聞くが、セスもまた何か訴えるような目でアイリを見返した。
「そんなおいしそうに飲んでるところを見てると、私もアイリさんの血が飲みたくなってきました。バケツ一杯ほど」
「えー、へへー。でも今腐ってるしー……バケツ一杯って殺す気か!?」
「というのは冗談ですが……ふふふ、これが終わったらくださいね♪」
 セスは薄く笑みを浮かべながら、お願いした。

「セレアナ、逃げてぇええええっ!」

「何だ!?」
 突然、聞こえてきた大きな女性の悲鳴に、アイリとセスは振り向いた。

                    §

 セレンフィリティはセレアナを守ろうとしていただけではなく、喉の乾きを我慢していた。
 もはや暴走の限界でもあり、武器を振り回すこともセレンフィリティにはもはや無理となっていた。
 そして、セレンフィリティはセレアナの目の前でローゾンビに連れ去られてしまった。
 最後に、セレアナに「もういい……逃げて」という言葉を残して。

「……っ……うわぁあああああっ!」
 セレアナは涙を流しながら、朝露の顆気を振り回し残りのローゾンビ達へと向かっていった。
「なっ……落ちつけっ!」
 アイリとサスが駆けつけ慌ててセレアナを止めた。
 泣きながら武器を振り回すセレアナは、今まで冷静さを見せていたセレアナからは想像できないくらいに、怒りに狂っていた。
 アイリ、サスはゾンビを相手にしながら、なんとかセレアナを落ち着かせ、事情を聞いた。
「ということは、セレンフィリティさんはこの先にとらわれてるって事ですね」
「行くしかないんだぜ」
 アイリとサスは、セレンフィリティ救出およびキングゾンビ探索へとさらに進んでいった……。