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ツァンダを歩く

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ツァンダを歩く

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 ノベルと悲哀はアウトレットモールで出会った折から、そのまま一緒に食事を楽しんでいた。悲哀の手には便箋が握りしめられており、時折それに対して艶々しい瞳を向けている。
「そんなによーちんと便箋を選んだのがうれしかったの?」
「私なんかの……買い物に付き合ってくれたことがとてもうれしいです」
 悲哀は便箋を指先でなぞりながら儚げに見つめている。アイランはその指先を眺めながら言った。
「悲哀ちゃんはもうちょっと自分に自信を持った方がいいよ。いつも我慢しているもん」
 アイランの装飾されていない言葉を悲哀はじっと聞いていた。それに答えることはしなかった。ずっと便箋を指先でなぞっている。嬉しそうな表情へと変わっていくのを見て、アイランは自分の料理に手を伸ばしていた。
「あーあ。悲哀ちゃんを見ていたら、照れ屋さんの流水を思い出しちゃったよ。あれ? あれってルシアたちかな?」
「そうみたい。ここで取材の締めをするのかな?」
 ノベルたちが見ている先で、ルシアはカメラに向かってにこやかな笑みを向けている。その疲れを感じさせず、ツァンダを楽しんできたことが手に取るようにわかった。
「えー。本来なら耀助が来るはずなのですが……あ!? 来ましたね」
 ルシアが手を振る先で、耀助が走ってきている。息も絶え絶えだったが、不思議と表情は軽やかだった。
「耀助君。遅いですね」
「申し訳ない。レディを待たせてしまって。しかしこれで取材が終わったね。ところでどうだい? この後一緒に夕食に……」
 行こうと、口にしようとした耀助の顔が戦慄する。ルシアの背後で唯斗が風術の準備をしていたからだ。嬉々とした目で唯斗は竜巻の中心に立っている。自分の命が翻弄されそうになる光景を見せつけられて、耀助は言葉を失っていた。
「どうしたのですか?」
「いいや。なんでもない。それでは最後にツァンダの街はどうでした?」
「もうにぎやかと言って過言ではないわ。いろんな人がいるからそのにぎわいをいつまでも楽しめるの。私なんてオムライスを二回も食べてしまったわ」
「へぇ偶然だね。俺もオムライスをごちそうになったよ」
「そう? 味はどうだった?」
「勿論おいしかったさ」
「私も美味しかったわ」
 二人会話をしていたが、カメラに向きなおる。
「それではテレビの前の皆さん。ツァンダの魅力を頑張って伝えてみました。皆さんもツァンダに足を踏み入れてはどうですか?」
「来る人の数だけ、来る回数だけ楽しめると思うぜ。それではリポーターを務めた仁科 耀助と」
「ルシア・ミュー・アルテミスでした」





 二人がお辞儀をする。
 その姿を卜部 泪はメガホン片手に真剣な表情で見つめていた。
「はい!! カット!!」
 その声と同時に床を思い切り、踏みつける。
「もう完璧ですね。これを地球に放送すれば視聴率がガッポガッポですよ。早速編集作業に映りましょう!!」
 メガホンで肩を叩きながら、泪の号令にスタッフたちは雄たけびともいえるような返事を行った。
 後日にこの番組は地球に放送され様々な反響を生み出す結果となった。ツァンダの女性は大胆だなど、ツァンダの女性は狂暴だなど、地球の料理をツァンダに広めてみたいなど、蒼空学園の購買部に行ってみたいなど多様である。
 ツァンダへ行ってみたい。そう焦がれる人間を生み出したこと。そしてこの番組が大成功を収めたことが間違いないのは言うまでもない。

担当マスターより

▼担当マスター

歩樹 杙

▼マスターコメント

 こんにちは、歩樹 杙と申します。
 皆様の多彩なアクションを読ませてもらい、楽しみながらリアクションを執筆することができました。
 街ブラ番組が大成功を収めたのも、皆様が懸命にツァンダの魅力を伝えようと考えてくれたからだと思っております。
 それではまたお会いできる時を楽しみにしております。