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危険な香りを退け、汚部屋住人を救出しろ!

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危険な香りを退け、汚部屋住人を救出しろ!

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第四章 汚部屋住人改造計画


「ただいま」
「イリアも戻ったよ!」
 ササカとイリアが買い出しから戻って来た。荷物は大量のため台車に載せていた。
「ご苦労じゃ」
 ルファンは買い出しから戻って来た二人を労い、そのまま食堂へ運ぶのを手伝った。

「ふぅ」
 アメリは息を吐き、風にはためく洗濯物を眺めていた。
「アメリ、ご苦労だ。残るは実験器具だけか」
 ダンはアメリを労ってから青夜に声をかけた。
「うん。もうそろそろだと思うんだけどなぁ。あっ!」
 青夜がダンに頷いた時、裕樹から連絡が来た。
「舞花とラウズが持って来るって」
 青夜は二人にも伝えた。
「手伝うよ」
 今度はアメリが青夜の手伝いを始めた。
「僕も手伝いますよ」
 エオリアもこのまま手伝いに加わる。
 洗濯係四人の力を結集し、実験器具の洗浄も終わらせ、元の場所に戻して行った。


「残るは実験室だけ」
 実験室以外塗り潰された地図を満足そうに眺める羽純。
「こーちょくが上手く指揮したからすぐに終わったのだ」
 法正が少し自慢気に羽純に言った。
「確かに思いのほかすぐであったな」
 と羽純。最初、あの凄惨な様子を見て本当に終わるかどうか疑わしかったが、本当に終わるとは驚きである。

 道々、いろんな事があったが無事オルナが到着した。
「オルナさんですよ」
 クナイがオルナを背負ったロアに気付き、みんなに声をかけた。
「到着しましたよ」
 ロアがみんなに報告。
「まあまあ、気持ちよさそうに眠ってるわね」
 気持ちよさそうに眠っているオルナの顔を見てトメが安心していた。
「治療はしている」
 グラキエスがオルナの状態について説明。

 そして

「オルナ!!」

 厨房から戻って来たササカが凄まじい速さで駆けて来た。ダリルに無事を知らせて貰ってはいたが、本人を見るまで心から安心は出来なかったのだ。

「本当にありがとうございます。本当に」
 ササカはグラキエスに礼を言い、集まっているみんなにも頭を下げた。
 一生懸命にササカが頭を下げていた時、間抜けな声が割り込んできた。
「ん? あ、ササカ。って何か人がたくさんいるんだけど。何かあった?」
 目を覚ましたオルナがぼんやりとした顔で集まるみんなを見ていた。寝ぼけと物忘れのせいか間抜けな事を言う。
「……何かってもう」
 呆れたササカは思わずオルナの頭をグーで殴った。
「痛いなぁ」
 殴られたところをさすりながら恨みがましい目を親友に向ける。
「みんなに迷惑かけて」
 ササカは厳しい口調。
「……あの、ありがとう」
 ようやく何があったのか思い出したのかロアの背中から降りてぺこりと頭を下げた。
「本当にというか。匂うんだけど」
 ササカは、呆れのため息をつきながらここにいる誰もが感じている事を口にした。
「あはは」
 オルナはただ笑った。もう笑うしかない。

「お風呂は湯が溜まり次第、連絡が来る。それまでこれらの選別をしてくれ」
 甚五郎はそう言って大量のごみが入ったコンテナまでオルナを連れて来た。
「うわぁ、すごいな。これ全部家にあったんだ。えーと」
 オルナは大きな声を上げて感動。種類別に分けて用意されたコンテナはどれも満杯だった。
「選ぶな。どうせごみになるんだから。全部処分」
「……はい。お願いします」
 ササカは選び始めるオルナに言い聞かせ捨てさせた。本人がいない内に捨てても良かったが、さすがにそれは気が引けたため出来なかったのだ。

「ねぇ、動くぬいぐるみ、欲しいんだけどいいかな?」
 レキがぬいぐるみについてオルナに聞きにやって来た。
「ぬいぐるみ? そんなのあったかな」
 物忘れが激しいオルナは首を傾げるが、レキがあれだと教える事によって思い出した。
「あー、あったんだ。手作りの奴だ。いいよー」
 魔法玩具屋でわざわざ注文して購入した手作り品をあっさりと忘れていたのだ。
「うわぁ、ありがとう」
 レキはオルナの返事に喜び、ぬいぐるみの所に行った。

「オルナ、こんなのを見つけたんだけど。なかなか面白い物を作るね」
 今度はシオンがオルナに声をかけた。色眼鏡を見せながら。
「でしょ。欲しかったらあげるよ」
 同志がいて嬉しいとばかりに笑いながらオルナはあっさりと言った。
「ありがたく」
 また色眼鏡を丁寧に片付けて司の所に行った。

「あ、そうだ。快眠香ってどうなったの」
 オルナは思い出したように大事な事をササカに訊ねた。
「はぁ、何とかしてくれているわ」
 ササカはため息をつきながら答えた。
「ダリルがすぐに快眠香を持って来るから安心して」
 ルカルカが元気に言った。
「うん。はぁ、良かったぁ」
 ほっと胸を撫で下ろすオルナ。

「もし、よろしければ快眠香を分けてくれませんか。ササカ君には承諾を得ていますので」
 ロアが当初の目的を果たしに来た。『根回し』で今回の依頼を受けた時にササカにはきっちりと承諾を受けている、分けて貰う事はササカの分が減るという事なので。
「いいよー」
 ササカが承諾しているのなら断る理由はどこにも無いのであっさりと返事した。
「ありがとうございます」
 礼を言い、この事を二人に伝えるためロアは行った。

「オルナさん、あの植物達を引き取ってもいいでしょうか。エースがとても気に入ってしまって」
 次にエオリアが植物を世話しているエースに替わって聞きに来た。
「いいよー」
 返事は即答。
「ありがとうございます。エース、大丈夫ですよ」
 エオリアはエースの所に行った。

「入浴準備完了だ」
 良いタイミングで法正が言葉を挟んだ。ようやくオデットから連絡が来たのだ。
「はい、乾いてる服」
 手際よくアメリが洗濯した服を差し出した。

「ほら、行くわよ」
「ちょ、痛いって」
 ササカが服を受け取り、オルナの腕を引っ張って浴場まで連行した。
 この後、食堂への移動と残ってごみ処理に別れた。

「……みんな頑張ったみたいだな」
 オルナが浴場に行ってすぐ回収したごみを捨てに来た和命が現れ、法正の全て塗り潰された地図を覗き見た。
「こーちょくが一番なのだ」
 法正は自慢気に言う。
「ごみか?」
 羽純が玉小と和命を見かけてやって来た。
「そうだよ。こんなに。オルナさんはどう?」
 玉小がでっぷりと膨れているごみ袋を見せた。
「今頃、食堂で食事をしているであろう」
 羽純が先ほど起きた事を話した。
「……今は処分と洗濯をしてるんだね」
 玉小が慌ただしい様子を見ながら言った。
 洗濯物の取り込みや分別したごみの処分を慌ただしくしている。
「かなりの量だからな」
 羽純も同じように慌ただしい様子を眺めながら言った。
 この後、和命と玉小もごみ処分に加わった。

「……何とか箱も足りて良かったわね」
 セレンフィリティは薬品がたっぷりと入った保温箱を見ながら安心したように言った。
「そうね。後は、処理を任せるだけ」
 セレアナも言った。足りたとは言えぎりぎりだった。この後、イルミンスールに無事処理を頼む事が出来た。

「我々の探検も無事に終わり、貴重な経験と共に帰還出来た事を喜ぶであります! お疲れであります」
 探検を終えた吹雪は力強く終わりを宣言した。
「……お疲れ様」
 コルセアも吹雪を労った。

「うわぁ、すごく綺麗になってますね。あんなにたくさんごみがあったのに」
「うむ。嘘のように消えているな」
 ホリイとラウズは綺麗になった城内を歩き回っていた。
「綺麗になると気持ちがいいですね」
 ホリイはそう言いながらいろんな部屋を開けてはごみが落ちてない様子に喜んでいる。
「しかし、満遍なくこの広い城の中を汚せるとは見事なものだったな!」
 ラウズはごみまみれになっていた城内を思い出し少し感心する。綺麗になるとこの城の広さがどれぐらいなのかはっきりと分かる。
 二人はそうやって感動を口にしながら城内探検冒険を楽しんでいた。