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鳴動する、古代の超弩級戦艦

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鳴動する、古代の超弩級戦艦

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2章 「砲火を潜り抜けろ」


 〜古代兵器・側面付近〜


「シフさんが、引き付けてくれている今なら、側面に攻撃を集中させて
 突入する間だけでも砲火を弱められるかもしれない」

 そう意気込むのはSIPAHI【シパーヒー】アシュラムを駆る、
 スカイレイダー清泉 北都(いずみ・ほくと)とスプリガンの守護天使クナイ・アヤシ(くない・あやし)であった。

「そうですね、たとえ修復してしまうとしても破壊し続ければ、砲火を弱めることはできます。
 幸い、修復されても強度は変わらないようですから」
「なら、俺が突入部隊の盾になります。攻撃は北都さん達に任せますね」

 そう発言するのは、CHP007【ブルースロート】パラスアテナ・セカンドを駆る、
 シーアルジスト御凪 真人(みなぎ・まこと)とメイガスの魔導書名も無き 白き詩篇(なもなき・しろきしへん)

「此方、イーリ。御凪さん、清泉さん、支援感謝致しますわ」

 Airship【大型飛空艇】アイランド・イーリを駆る、
 セネシャルの剣の花嫁ユーベル・キャリバーン(ゆーべる・きゃりばーん)は支援の礼を述べた。

 アイランド・イーリの甲板に突入部隊と共に待機しているのは、スカイレイダーリネン・エルフト(りねん・えるふと)
 コマンダーの英霊ヘイリー・ウェイク(へいりー・うぇいく)

「リネン、あたし達は強行接舷後のイーリを防衛するわよ、何が起きるかわからないし、気を抜かないようにね」
「ええ、できれば突入部隊のみんなが戻るまでは持ち堪えたいけど……」

 アイランド・イーリ前方に御凪のパラスアテナ・セカンドが位置し、北都のアシュラムの攻撃を合図に
 強行接舷が行われることとなった。

「可能な限りの武装を潰してきますね」

 アシュラムが古代兵器の側面に高速で接近する。
 接近しながらウィッチクラフトピストルを抜き放ち、側面に配置された対空火器目掛けて連射する。
 着弾し、対空火器は潰れていくが……ものの数秒で修復されてしまった。

「やはり、破壊し続けるしか……」
「いけないッ! 回避行動をッ!」

 実弾から、ビームの速射に変わった機銃の攻撃を辛うじて避ける。

「攻撃速度まで変化するなんて……まったく、デタラメな能力ですね」
「でも、僕達は退けないよ」
「わかっていますとも。攻撃の手を休めないようにして、少しでも砲火を弱めていきましょう」

 地面を滑るように回避行動をとりながら、アシュラムはナパームランチャーを構える。
 照準を側面中央に合わせ、発射。反動で後ろに下がる機体を起こしながら、地面にしっかりと足を付け、
 再度ナパームランチャーを発射する。

 奮闘する北都を見て、ヘイリーが号令をかけた。

「砲火の弱まった今がチャンスよッ! イーリのビームシールドを前面に集中ッ! 目標、古代兵器側面!」
「了解致しましたわっ! イーリ、最大戦速で古代兵器側面への強行接舷を試みますわ!」

 パラスアテナ・セカンドもイーリに合わせ、前進を開始する。
 イーリを探知した砲台がイーリに照準を合わせ、砲弾を発射するが、間に割って入りパラスアテナ・セカンドが
 ビームシールドでその砲弾からイーリを防衛する。

「どんな砲撃が来ようとも、俺の盾は撃ち抜けませんよ!」

 名も無き白き詩篇が、御凪に攻撃ポイントを知らせた。

「よいか、北都も奮戦しているようじゃが……いかんせん火力が弱い。攻撃ポイントを知らせる故、
 そこにヴリトラ砲を撃ち込んで、イーリの突入を支援するのじゃ」

 パラスアテナ・セカンドはイーリの前に位置し、ヴリトラ砲のチャージを開始する。
 砲台は容赦なく、動かないパラスアテナ・セカンドを砲撃する。
 着弾により、多少のダメージは受けたものの、戦闘に支障はない程度だった。

「充填率75%、もう少しの辛抱じゃ!」
「ええ、耐えて見せますよ……この程度の攻撃なんて……!」

 砲撃が右足に命中し、外部装甲の一部が剥がれる。
 徐々にではあるが、確実に装甲は削られていった。

 砲撃の着弾よる振動が大きくなり、機体を大きく揺らすほどになっていた。

「充填率100%! いつでも発射可能じゃ!」
「此方、御凪……これよりヴリトラ砲の発射を行います。着弾の穴が塞がる前に、何とか突入を!」
「此方、アイランド・イーリ、突入のタイミング、了解いたしましたわ!」

 御凪はモニター上の攻撃ポイントを確認し、照準の位置を確認する。

「ヴリトラ砲……発射ーーッッ!!」

 砲口に黒い光が収束し、轟音と共に放たれる。
 その轟音は龍の咆哮のごとく、黒く伸びる光は漆黒の龍を思わせた。
 漆黒の光は古代兵器側面に命中し、その装甲を容赦なく抉る。
 光の消え去った後には飛空艇がすっぽり入るほどの巨大な穴が開いていた。

 さすがに穴が巨大すぎるのか、修復には時間を有するらしい。

「突入しますわ。総員、対衝撃防御ッ!」

 アイランド・イーリは穴目掛けて突入、完全に中に入った時点で、穴は完全に塞がってしまった。


 〜古代兵器内部・格納庫〜


 突入したポイントはちょうど格納庫のような場所だったらしく、いくつかのイコン搭乗用と思われる橋を
 吹き飛ばしながら進み、アイランド・イーリは停止する。

 ユーリスは落ち着いた口調で、

「強行接舷、完了ですわね。艦のダメージチェックをお願い致しますわ」

 突入の衝撃はほぼなく、艦にほとんどダメージはなかった。

「被害を抑えられたのは、支援して頂いた皆様のおかげですわね。」

 アイランド・イーリの甲板にいた突入部隊が中枢を目指して行動を開始すると、
 まるでそれを防ぐかのように空戦型の魔物がアイランド・イーリの周囲に出現する。
 突入部隊が個々に対応し、倒しながら進んでいるもののその数は多く、
 突入部隊は分断され、散りじりにされてしまった。

 甲板に待機していたリネンはワイルドペガサスに騎乗し、アイランド・イーリの防衛に入る。

「イーリはやらせないッ! はああっ!!」

 リネンが高速で空を駆けると、複数の魔物が両断され、地に落ちていった。
 反転しながら空賊王の魔銃【黄金の銃】を構え、射撃。
 放たれた弾丸は数体の魔物の頭部に命中、その活動を停止させた。

「次ッ!」

 ワイルドペガサスを巧みに操り、空を自由に駆けるリネンの前に空戦型の魔物といえど、
 その力を発揮することなく、ただの肉塊へと変わっていく。

 リネンに2体の魔物が同時に襲い掛かるが、特に動じることも無く、
 カナンの剣を一文字に薙いで魔物に攻撃の暇を与えずに葬った。

「倒しても、倒しても湧いてくる……でも、突入部隊の皆が帰ってくるまで、持ち堪えないと!」

 魔物がリネンに向かって人の頭ほどの火球を放つ。
 リネンはタイミングを計り、火球をカナンの剣で弾き返す。

「この程度の攻撃、私には通用しないわよッ!」

 火球は魔物に命中し、その体を激しく燃え上がらせる。魔物は黒煙を上げながら落下していった。


 イーリをリネンが防衛している間、ヘイリーは突入部隊の支援を行っていた。

「細かい雑魚はあたし達が引き受けるわッ! あんた達は後ろを気にせず、中枢目指して突っ走りなさい!」

 突入部隊を激励すると、飛竜“デファイアント”に騎乗するヘイリーは数人の飛装兵と共に
 空戦型の魔物との戦闘に向かう。

「いくわよ、あんた達ッ! 【『シャーウッドの森』空賊団】が魔物なんかに後れを取らないことを、
 見せつけてやるわよッ!!」

 掛け声に呼応し、飛装兵達は次々と魔物を討ち取っていく。
 ヘイリーはアロー・オブ・ザ・ウェイクを構え、トゥルー・グリットを放った。

 高高度から放たれる矢の雨のようなその攻撃は、容赦なく魔物達に降り注ぐ。
 逃れようと魔物達は高度を上げようとするが、降り注ぐ矢は翼に穴を開け、逃げることを許さない。

「あたしの攻撃から簡単に逃れられると思わないことね」

 ひときわ大きな魔物がヘイリーの前に現れる。その体には矢が多数刺さっており、どうやら攻撃を
 生き延びたようだった。

「へぇ……なかなかタフなのがいるじゃない。でも、タフなだけじゃいい的よッ!」

 高速で空を駆けながらヘイリーは魔物に矢を数度放つ。
 魔物は図体に似合わない速度でロールすると、ヘイリーの放った矢をいとも簡単に躱した。

「ふーん、ただのタフじゃないって事ね……面白いじゃない! あんた達、この辺の雑魚は任せるわ。
 あたしはこいつの相手をするッ!」

 飛装兵に周囲の魔物を任せ、ヘイリーはタフな大型の魔物と交戦に入った。