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【第二話】激闘! ツァンダ上空

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【第二話】激闘! ツァンダ上空

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第一章

 救援要請と同時刻 ツァンダ上空

「これ以上、被害を出さないためにもテロリストを止めますよ!」
 迫り来るフリューゲル部隊を前に、御凪 真人(みなぎ・まこと)アストレアのコクピットで雄叫びを上げた。
 サブパイロットシートに座る真人は操縦桿を握りながら油断なく周囲を見渡す。
「さて、前回の情報は有る程度仕入れていますが、性能差はかなり厳しいですね。これは蒼学だけで対処するのは無理。ならば他校の救援が来るまでの時間稼ぎをしましょう――」
 分析する声は冷静ながらも、真人の心に燃え立つ闘志は他の仲間たちに決して劣るものではない。
「――ただし、気の抜けた戦い方をするとあっという間に落されますね。俺たちだけでも相手を落す。攻める気持ちは持たなくては」
 冷静な中に激しい闘志を燃やす真人の言葉に相槌を打つように、メインパイロットシートでセルファ・オルドリン(せるふぁ・おるどりん)が激しい気迫とともに口を開く。
「機動力は負けても推力は負けないわよ。真人、制御系は任せたわ」
「了解。任せてください」 
 セルファの言葉に真人が了承すると、セルファはメインパイロットシートで操縦桿を握り直し、ペダルに乗せた足を微調整する。
「近接戦を挑んでいれば相手も簡単にはライフルは使えないわよね。ビームサーベルを主体に格闘戦で行くわ――真人、機体制御よろしく!」
 その言葉を合図として、セルファは操縦桿を急角度に倒すと同時にペダルを踏み込んだ。
 一連の動作によって一瞬のうちに機首を上げ、新式ビームサーベルを抜き放ち、推進機構にエネルギーを送り込まれたアストレアはまるで爆風に吹っ飛ばされたかのように急上昇し、頭上に接近してきた緑色カラーのフリューゲル一機と距離を詰める。
 距離が詰まるや否やアストレアは新式ビームサーベル特有の幅広い光刃を振り上げる。
 だが敵もさるもの、素早い動作で大出力のビームサーベルを抜き放つと、アストレアからの剣撃を真正面から受け止める。
 ぶつかり合う光刃と光刃。どちらも高出力のビーム刃を形成しているゆえか、鍔迫り合いによって生じるエネルギーの余波も一段と凄まじい。
 幾合か打ち終えてもなお、どちらにもまだ傷一つ無い。これは壮絶な戦いとなるだろう――そう思われた矢先、アストレアの装甲が焼け焦げ、じょじょに溶け始める。
 高出力の光刃同士で演じられていた鍔迫り合いの拮抗は、フリューゲル優位に傾こうとしていた。
 決して、アストレアの機体スペックが低かったわけではない。
 ただ、フリューゲルの機体スペック――兵器のエネルギー出力から機体本体のパワーに至るまで、総合的なスペックが現代技術を遥かに凌駕する規格外のハイスペックだっただけだ。
 いかに無理からぬこととはいえ、正面切ってのせめぎ合いで劣勢を強いられるという事実にセルファは歯噛みする。
 愛機たるアストレアはベースも現用機の中では最新鋭のジェファルコンタイプ。しかも、カスタムまでされたワンオフ機だ。
 それほどのハイスペック機が純粋な機体の性能勝負で押されているという事実は俄かに信じがたいものだった。
 何にせよ、一秒ごとにフリューゲルの優勢は強まり、それに比例してアストレアの劣勢も明らかになっていく。
 正真正銘、どう見ようと、どう考えようと揺るがない窮地。
 だが、メインパイロットであるセルファはもとより、サブパイロットの真人の瞳にも諦めの色は何一つない。
 愛機の名に違わず、二人には諦めるという選択肢など、決して存在しないのだ。