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決戦! 秘密結社オリュンポスVSヒーロー戦隊

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決戦! 秘密結社オリュンポスVSヒーロー戦隊
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リアクション

「巨大化ではない、本当の絶望をお届けすしますよー! バッチがなくともイコンはあるのさ〜♪」
「なんでもいいが落ちるなよ?」
「そんなヘマはしないよ〜! さあ、どんどんやっちゃってー!」
「了解じゃき」
 放たれるは『二連磁軌砲』、威力は絶大にして、その射程は並ではない。ヒーローと言えども、この距離では手も足も出ない。
「この威力、イコンか!?」
「バカみたいな威力に、遠距離からの攻撃、間違いないな」
「遠くからなんて卑怯だよー!」
 更にその攻撃はヒーローたちだけではなく、瑞樹たちも巻き込むかと思われるほど無差別の攻撃だった。
「あぁー! 私たちのステージが!」
「まったく、なんてことを!」
 輝とシエルが叫ぶ。
 全てを巻き込んで攻撃をしているのはベスティア・ヴィルトコーゲル(べすてぃあ・びるとこーげる)レオパルド・クマ(れおぱるど・くま)の二人だ。
「何か暴れているようですがー、見なかったことにしましょう! さあ、更なる攻撃を!」
「あんまりやりすぎると、怪人側も巻き込むぞ?」
「犠牲は全ての事柄に付きまとう物、仕方のないことです」
「恐ろしや、じゃのう」
「さあ、全長433.30m、全幅963.77m、全高102.39m!
 決戦兵器・重巡航管制艦 ヘカトンケイルの前にひれ伏すがいい!」
 絶対的な破壊力の攻撃を、反撃できない距離からぶっ放すベスティア。その絶望的状況に、さすがのヒーローたちも手も足も出ない。
「どうすることもできないまま、震えてひれ伏すのですー!」
「まったく、パンツ見せまくりでたちの悪いことを……ん、この反応は」
「どうしましたか?」
「……残念、一方的な攻撃もここまでのようじゃき」
「……成る程、ヒーローにも光があれば陰がいるということでありますか」
「そういうことだ。これだけの重量機。あまり動かないから、こいつらでも何とか追いつけたよ」
 【名状しがたき獣】を使いヘカトンケイルの甲板に辿りついたのは、長原 淳二(ながはら・じゅんじ)だ。
「表で戦う物がいれば、裏で戦う物がいる。それはお前らであり、俺である」
「それで、どうするんですか? このヘカトンケイルを生身で壊す気ですか?」
「このままでは、無理だな。だから使わせてもらうさ……シャドークロス!」
 淳ニが変身をする。それを見ても、一歩も退かないベスティア。
「俺は影……光を支える影だ……」
「言うなれば、『影の英雄』。ヒーロー名はそちらで?」
「悪くは、ないな!」
 甲板を駆ける淳ニ。影を纏ったかのようなシルエットを翻して、ベスティアへ向かう。
「戦うのは苦手ですが、たまには頑張らせてもらいましょうかー!」
 『強化装甲』、『超感覚』、『歴戦の防御術』を駆使して身体能力極限まで上げ、淳ニに立ち向かうベスティア。
 攻撃主体の淳ニとは真逆に、防御主体のベスティア。
 負けはしない物の押し切れない淳ニ、勝ちはできないものの押し切らせないベスティア。だがベスティアにはそれで十分だった。
「ちょいと揺れるじゃき、きぃつけや!」
 レオパルドが三発目の攻撃を開始。そう、ベスティアはヘカトンケイルさえ落とさなければ他のヒーローに攻撃を続けられる。負けなければ、勝てるのだ。
「わたくしが勝たなくても、ヘカトンケイルが勝ってくれる。それで十分です♪」
「そうだな、だからこちらも少しだけ、ズルをさせてもらった」
「……なんですって?」

ビィー!ビィー!ビィー!ビィー!

「アラート!?」
「こちらレオパルド、動力部に異常あり! だめだ、一人じゃ抑え切れん!」
「……一体何をしたのですか?」
「気づかれないように攻撃しただけだ、お前への攻撃はあくまでフェイク。本命はこの『ミストブレード』による動力への攻撃」
 『ミストブレード』、相手に気づかれずに対象を一閃する必殺技。それを何度も何度も同じ動力部へ斬りつけることでヘカトンケイルの航行能力を奪ったのだ。
「お見事、だけど甘いですよ。レオパルドはこう言いました。『一人じゃ抑え切れん』と。つまりそれは二人なら抑え切れるということ。残念ですが、遊びはここまでです」
「そうだな、俺も墜落には巻き込まれたくない」
「墜落なんてしないですよ、このヘカトンケイルは! おさらばですっ!」
 淳ニに背を向けて、操縦席へと戻ろうとするベスティア。淳ニはその隙を見逃さなかった。
「喰らえ、『ダークチェーン』!」
「なっ!?」
「待っていた、お前が後ろを振り向き走り出すその隙を……」
「くぅ、この鎖はっ」
「一人じゃ無理だ、その鎖は特別製だからな」
 淳二の二段構えの策にベスティアは為すすべなし。だったのだが。
「だあっ! もう、遅いんじゃ! さっさとこんかい! このドアホウ!」
「!?」
「レオパルド!?」
 甲板に現われたのはレオパルドだ。淳ニにしてみれば、もう一人の操縦士がここに来ることなど予想だにしない。
「遊んでないでさっさと操縦に戻るじゃけん!」
 そう言って『ダークチェーン』の鎖を『ピッキング』で即座に外す。
「あ、あなたがいなくなったら誰が操縦してるの!?」
「二人じゃなきゃ無理なんじゃけぇ、助けに来た方がまだ可能性があるじゃろうが! さっさと戻るぞ!」
「……あはははっ! さすがのわたくしも、こればっかりは予想できませんでした」
「行かせるものか!」
「もう、遅いです!」
 淳ニの攻撃は届かず、二人は操縦席へと向かっていってしまう。追おうにも、ハッチが閉められている。
「くっ、最後の最後で詰めが甘かったか……!」
 何度も攻撃すれば恐らくハッチを破壊することはできるが、それでは二人を止めることはできない。
 歯がゆい思いをしながらも、【名状しがたき獣】で脱出する淳ニ。
 一方、操縦席では二人が慌しく色々レバーやスイッチを操作していた。
「こっちはOK! そっちは?」
「完璧じゃないがいけるじゃろう、もう猶予がないじゃけぇこのままいく!」
「了解っ! ヘカトンケイル、強行型!」
「応じゃけぇ!」
 墜落寸前、その直前にヘカトンケイルは姿を変えた。
 強行型、機動性を落とす代わりに安定性を手に入れることができる形態である。無茶な状態からの変形に、悲鳴をあげ、強行着陸になったが、どうにこうにか墜落だけは免れた。
「どうにか、なったようですね……」
「ああ……だが戦況はまずいまま、か」
 しばらく操縦不能だったヘカトンケイルは、前の方へと進行しつつ墜落。何とか着陸した場所、そこは先ほどまで攻撃をしていた某や飛鳥がいる場所だった。
「さっきはよくもやってくれましたねー!」
「これはお返しですよー!」
 先ほど攻撃を受けそうになった、瑞樹と真鈴がミサイルポッドで攻撃。無差別攻撃が仇となったのだ。
「なるほど、巨大化ですか。けれど、その程度ではヘカトンケイルには適いませんわ」
 迫り来るミサイル群を『二連機砲』で撃墜していく。その爆弾の煙にまぎれて、某と康之、淳ニが甲板に上っていた。
「さっきはよくもやってくれたな」
「これだけでかいと斬り甲斐があるぜ!」
「たまには、光と影が共にあることもあるか」
 そして【ヘカトンケイル】を眼前に瑞樹、後方に真鈴、ヘスティアが。
「今だけは加勢しますよー!」
「イコンとも戦ってみたかったしね!」
「ご主人様……ハデス博士の城に当たったら大変でしたよ!」
 更にボロボロになったステージには飛鳥と輝とシエルがマイクを持って。
「私たち三人っ!」
「最高、最強のっ!」
「歌を聴いてもらうよっ!」
 ヒーローと怪人に囲まれるベスティアとレオパルド。
「……あらら、やっちゃいましたかね?」
「そうじゃのう、白旗上げとくか?」
 上げる前にヘカトンケイルが総攻撃を受ける。数多の攻撃の連続に、さすがのヘカトンケイルも操縦不能となるのだった。

「むむ! あちらで腹をすかせて怪我をしている者の気配がある! 急がねば!」
 そう言って忍者のように大地をかけるのは、あわび、もとい紫月 唯斗(しづき・ゆいと)の姿だ。現在はハデスに改造されて、あわび忍者として駆け回っている。
 その行動理念は腹をすかせた怪人たちに自分の顔を振舞っている、というものだ。
 自慢の足の速さを生かして、腹の鳴る方へと向かう。
 その先にいたのは巨大化した少女たちと歌を歌い続けた少女たちと、疲れ果てたヒーローたちだった。
「本来は味方だけなのだが、腹をすかせているのなら仕方ない!」
 そう言いながらまずは歌を歌い切った少女たちの元へ向かい、話しかける。
「ほら、私の顔を食べなさい!」
「わっ! きゅ、急になんですか?」
「大丈夫だ! 私の顔は一級品のあわびだからな!」
 そう言いながら差し出された顔、もといあわびを食べる三人。食べた直後、顔が明るくなる。
「ホントだ! これおいしぃ!」
「醤油が欲しくなるかもー」
「そういうと思って準備をしておいた!」
 どこから取り出したのか醤油と小皿を取り出して三人に手渡す唯斗。
 顔を三分の一ほど手渡した唯斗はヒーローたちの元へ。
「本来ならヒーローたちにはあげないが、見たところ腹をすかしているようだからな。特別に差し上げよう!」
「わ、悪いな」
「うっひょー! あわびだあわび!」
「……何故、あわびなんだ?」
「気にするな! 何なら、わさびもあるぞ?」
 これまたどこから取り出したのか生わさびを取り出して三人に手渡す。
 むしゃむしゃ食べる三人を差し置いて、巨大化している三人の元へ。だが既に顔の三分の二はない状態だ。
「これじゃ足りませんよー!」
「そうだろうと思って、養殖しといた!」
 養殖、もとい分身を使い数を増やす唯斗。これで三人にも十分なあわびが行き渡った。
「これなら、ここはもう安心だろう! むっ! 次はあちらか! ではさらばだ! 腹が減ったら、私の名を叫んでくれ」
 そして、怪人あわび忍者はみんなのお腹を満たして走り去っていたのだ。
 やっている行動はまさに怪しいぞ! それでもみんなに満腹と平和を撒き散らせ、僕らのあわび忍者!
 しかしこのあわびには体力回復の効能も含まれており、あわびを食べて元気になったヒーロー4人と怪人5人はまたも元気に戦い始めるのだった。
「……私たちにはないんですねぇ」
「……こいつの装甲は厚いじゃき、腹の音も聞こえんのじゃけん」
 ヘカトンケイルの中でお腹をすかせながら、目の前で再度始まった戦いを眺める二人だった。