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不思議な雨で入れ替わり!?

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不思議な雨で入れ替わり!?

リアクション

《困れ困れ。さーて、どうしようか。こっちは捕まらないからな》

「わー。ホント、和輝さんになっちゃったんだー」
シア・メリシャルア(しあ・めりしゃるあ)佐野 和輝(さの・かずき)と雨の中を歩き、故意に入れ替わった。目線もいつもと違って眺めが良い、と上機嫌だ。
「ねっ、普段和輝さんはこういうことしてくれないでしょ?」
 ぐいっと和輝(シア)は傍にいたアニス・パラス(あにす・ぱらす)を引き寄せた。ぎゃっとアニスは驚いて身を引くが、じいーっと目を凝らしてくる。
「和輝……って、和輝じゃない!入れ替わっちゃったの!?」
 自分の雨対策はしっかりとしていたアニスだが、パートナーの和輝にも油断させちゃダメだったと後悔したような表情になった。
「そうだよ。結構良い体してるじゃない和輝さん」
「で、本人はどこに行ったの?」
「そのへんにいると思うよ。動くものの調査だ何だって言ってたからわかんないし。よし、ナンパするぞー!」
 わかんないって何っ! とアニスはぽかぽかと軽く叩いてくる。

「そこのお嬢さん、雨で濡れちゃったみたいだしどこかお店で温かいものでも……」
 和輝(シア)はアニスの言葉など聞きもせず目についたアルトリア・セイバー(あるとりあ・せいばー)ホレーショ・ネルソン(ほれーしょ・ねるそん))に話しかける。
「そんな言葉使いしないもんっシア、ダメだよ! 第一この子にも失礼だよ!」
「ああ、失礼。俺……っ、いや私は用があるもので。また会った時に。では」

 アルトリア(ホレーショ)はナンパからスマートに言い逃れた。女でも大丈夫な言葉使いを無理やりし、中身がバレてやしないかとひやひやした。
 偶然入れわかってしまったが、性別も逆になってしまったので当然同性に話しかけられる。それにしても、アルトリアは可愛い方だと認識していたが、声をかけられやすいぐらいだとは。
「ふふ、女子受けも良いだろう。女の子は可愛いもの好きとも言うし」

 どこかに女の子は落ちていないものか(落ちているというのも変だ)とアルトリア(ホレーショ)は思う。濡れた衣服のまま歩いていると、幸運なことに女の子に話しかけられた。
「濡れてるけど、傘とかタオルいる? この辺突然降るから」
龍杜 那由他(たつもり・なゆた)だ。耀助とは別行動で、このあたりのサポートに当たっている。
「これは助かる。お優しい女性に会えて私は恵まれているな」
「そ、そうね。このあたりコンビニとかないもの」
「そうだ、お礼をさせて欲しい。もらいっぱなしでは悪いからな……」
 アルトリア(ホレーショ)は片方の膝を折ると、那由他の手を取って軽く手に口付けした。一度女の子にこれをやってみたかった。
「大丈夫よそんなに気にしなくても。それに、照れるし……」
 少し頬を染めた那由他なんとも可愛い。
男女ならためらいが残るものの、女同士でできるというのはこうも気分がいいものだと実感した。



「ん? 変な感じするな……。あれ、シア?」
 和輝は入れ替わりに関する調査で、聞き込みを行なっていた。
 違和感を感じ、シア(和輝)が自分の体を確認すると、女になっていることに気付いた。ずいぶんと小柄で細いけれど、可愛らしい。
 たまに和輝自身、女装はするけれど、本物の女の子の体になったことは無いため、腕や顔を触ったりとまじまじと観察した。ちょっとこれを普段の相手にしてしまったら、問題だ。
「凄い。これなら誰にも気づかれないな。聞き込みにも役立つ」
 プールなどに行っても大丈夫だ。それはと言うと、シアは変な目に合ってないだろうかと少し心配になる。
「アニスも付いてるし、そんな心配はないか」
 シアの演技というのも普段できない。調査と共に楽しむことにした。ちゃんと元に戻るんだろうな? という疑問があるが、今は置いておこう。



**


「どうしましょう……。雨に降られた上、いつの間にかごつごつした手になったりドッペルゲンガーのような物を見たり散々です」
 ホレーショ(アルトリア)はとぼとぼと道を歩く。御呼ばれの食事会に行くはずが、こんな姿では行くに行けない。
 傍にいたはずのホレーショは、雨が止んだとたん突然目の前に消えた。その代わり、自分の姿が目の前に出現して、目の前が真っ暗になった。
「い、いけない! 頭がどうかしてるんですよ……」
 しっかりしろ自分、と自らの頬をつねる。本来すっと丸みを帯びているはずの輪郭は、なんだかかくかくしていて現実だとは思えない。

「どうした? この世の終わりって顔すんなって」
仁科 耀助がばしっと背中を叩いてきた。ホレーショ(アルトリア)に取っては追い打ちである。
「入れ替わりに気をつけろよ。百戦錬磨の軍人でも、これはびびるからな」
 入れ替わりという言葉に、もしやと事情を説明した。がっしり体型の男ではなく女のはずなのだ、と。耀助に凄い顔になっているぞ、と手鏡を渡されてずっこけそうになった。
「うわああっ、な、なんですかこの顔はっ!? ホレーショ殿!?」
「ぶっ、そんなに驚かなくても……っ! 一日経てば元に戻るから安心しなって」
「これのどこが安心できますか! けど、お陰様で訳はわかりました」
 解決策は時間しかない。ほうっておいてもかまわないが、ホレーショ本人じゃないと他にわかってしまう前に一度自分の体と対面してみるのもいいかもしれない。

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