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【ぷりかる】出会いこそが願い?

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【ぷりかる】出会いこそが願い?

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第三章 願うは少女の無事な姿

 石専門店『ストッツ』、前。

「……閉店」
 リース・エンデルフィア(りーす・えんでるふぃあ)はじっと閉店プレートを見ていた。久しぶりに来てみれば店は定休日でもないのに閉まっている。
「リースちゃん、他のお店に行ってみる?」
 残念そうにしているリースを見かねてセリーナ・ペクテイリス(せりーな・ぺくていりす)がのんびりと訊ねた。
「他に石専門店、知ってるか?」
 ナディム・ガーランド(なでぃむ・がーらんど)マーガレット・アップルリング(まーがれっと・あっぷるりんぐ)に訊ねた。
「んー、そうねー、この店の近くにもう一つ、石を売ってる店があったはず」
 イルミンスール魔法学校の寮に住んでるためその付近の店であればよく買い物に行くマーガレットは、他の石屋は無いかと頭の中にある街の地図を確認し、見つけた。
「じゃ、そこに行こうぜ」
「は、はい。マーガレット、場所は覚えていますか?」
 ナディムの言葉にリースは別の店に行く事に決めた。
「……はっきりとは覚えてないよ。頻繁に行っていた訳じゃないから」
 マーガレットは肩をすくめながら少し申し訳なさそうに言った。
「……誰かに聞いてみるよ!」
 マーガレットは近くを歩く人に声をかけた。

「あぁ、その店なら少し前に店主が死んで営業していないよ。確か、スットツの店主が片付けを手伝ってるって話だ。片付けの手伝いかは知らないが、慌ただしげにさっきから店に出入りしている奴を見た。人を捜してる奴も見かけたな」
 マーガレットに声をかけられた男性は、何もかも知っていた。
「ありがとう!」
 マーガレットは陽気に礼を言って男性を見送った。

「店に人はいるみたいだねぇ」
 事情を知ったセリーナは改めて視線をホシカの店に戻した。
「慌ただしげにって何かあったのかもね。人を捜してる奴とか言ってたし、聞いてみた方がいいかもね」
「……そ、そうですね」
 マーガレットの言葉にリースは恐る恐るドアを叩いた。
「あ、はい」
 店の主であるホシカがすぐに現れた。
「あ、あの人を捜していると聞いたんですが」
 リースは何とか話を切り出した。
「……えぇ、私の姪のキーアと店に連れて来たグィネヴィアちゃんがいなくなったの。それに……」
 ホシカは切羽詰まった事情を話した。
「……そうですか」
 閉店について納得しつつリースはどうするかを考え、三人の方に顔を向けた。三人は分かっているという表情でうなずいた。
「あ、あのキーアさんを捜すのをお手伝いしたいのですが」
「ありがとう」
 リース達はキーア捜索に協力する事にした。
「キーアちゃんの持ち物があったら出してくれねぇか」
 ナディムが早速捜索に必要な物を求めた。
「レラちゃんが匂いを辿って見つけるわ」
 セリーナが側にいる賢狼・レラの頭を撫でながら言った。
 そこでホシカはキーアが冒険の度に背負って行くリュックを出した。
 リュックの匂いを嗅いだレラはゆっくりと店を出て歩き始めた。
 四人はレラに続いて店の外に出た。

「……亡くなった職人に行方不明者。きっと、亡くなった職人の幽霊が出て来て二人をさらって行っちゃったんだよ! よし、聞き込みするよ」
 マーガレットはホシカの話から犯人を推理していた。その推理を参考にマーガレットは動き始めた。職人の所在についての聞き込みだ。
「わ、私はキーアさんの事をお花さんとかに聞いてみます」
 リースは、キーアの居場所以外の情報、キーアがどのような状態でいるのか、どうして店を飛び出したのかを知るために動き始めた。
 『人の心、草の心』を使いレラが通り過ぎた場所に生きている樹木に聞き込みを開始。ただし、心の中で。声を出すと変な人に勘違いされる恐れがあるから。

「俺達はレラを追いかけるぜ。居場所が分かり次第連絡する」
「すぐに見つけるからねぇ」
 ナディムとセリーナはレラを追いかけ始めた。

 追いかけてすぐ問題に直面する事に。
「あらあら、これじゃ、レラちゃんを見失っちゃうわね〜」
 通行人によってレラの姿が見えにくくなってしまったのだ。
「これはまずいな」
 ナディムは行き交う人の間からちらりと見えるレラの姿に言葉を洩らした。
 レラが無事キーアに辿り着いたとしても自分達がいなければどうにもならない。
 そこでナディムは追いかける手段を変える事にした。
「姫さん、空からレラを追うぞ」
「さすが、ナディムちゃんねぇ」
 セリーナはナディムの提案にのんびりと感心していた。
 二人はナディムがイルミンスールの魔法学校から借りてきたワイルドペガサスに乗って空からの追跡を始めた。

 通り。

 店を出たさゆみとアデリーヌは、聞き込みをしながら急いでいた。
「活発で友達思いの優しい子だから、もしかしたらグィネヴィアさんがいなくなったのと関係があるかもしれない」
 さゆみは動物変身薬騒ぎでキーアを救出した時の事を思い出していた。キーアは、探検と言って猫になって木の穴に入り出られなくなっても友達を心配させないように元気を振る舞っていた女の子なのだ。
「そうですわね。それにしても随分店から離れていますわ」
 アデリーヌもうなずいていた。目撃情報を元に子供が入り込みそうな場所など周囲を細かく捜索いているのに未だ見つからず、店から離れて行くばかり。

「……怪我をしたり誰かに連れ去られたりとか」
 嫌な想像がさゆみの頭に浮かぶ。知っている子だけにたまらない。早く見つけなければ。
「……さゆみ」
 アデリーヌがさゆみに呼びかけた。
「どうしたの? あれは」
 さゆみの視線の先には通りで生きている背の高い木と見つめ合っているリースがいた。
 横では、
「願いを叶える石に人生かけてた職人さん、知らない? 男性で名前は……」
 マーガレットが故人となった職人の行方について聞き込みをしていた。
「何か知ってるかも」
「さゆみ、行きましょう」
 さゆみとアデリーヌは、マーガレットの言葉から自分と同じ問題に関わっている事を知り、接触を決めた。

 マーガレットに近付き、
「あの、もしかしてホシカさん達に協力してる?」
 さゆみは訊ねた。
「あ、そうよ。あたしは亡くなった職人の幽霊に二人共さらわれたって思ってるの。で、リースはキーアの状態を聞いているの。居場所は……」
 マーガレットは明るく言い、他のメンバーの状況を説明し、最後に天を指さした。
「……上」
「……凄いですわね」
 さゆみとアデリーヌが上空に見たのは、ワイルドペガサスに乗ってキーアの匂いを辿っている賢狼・レアを追っているセリーナとナディムの姿。
「あ、あのキーアさんは怪我をしていない様子だそうです。えっと、あなた達も」
 木からの情報収集を終えたリースは、マーガレットに伝えるなり、さゆみ達がいる事に気付き、恐る恐る訊ねた。
「そうよ。私達もキーアちゃんを捜してるところ。怪我をしていないのは本当?」
 さゆみは自分達の目的を伝え、リースの情報を確認した。
「あ、えと、本当です。ここを通った時には元気そうでした。ただとても焦ってる様子だったらしいですけど」
 リースは、どもりながら伝えるべき事を伝えた。
 そして、リースは天を仰ぎ、
「……あ、あれ、二人は?」
 困った声を上げた。先ほどまでいた二人がいなくなっていた。
「いないね。もう先に行ったんだね。もしかしたら見つけてるかも」
 マーガレットも同じように上を見上げてから視線を戻した。

 その時、タイミング良くリースに知らせが入った。
「……あ、はい。えっと、何か分かりましたか。はい、分かりました」
 相手はナディムだった。内容は当然キーアの事だった。
「……あ、あの、キーアさんが見つかったみたいです。他の捜索者の方が保護してくれてるみたいです」
 話し終わったリースはナディムと話した内容をみんなにも伝えた。
「良かった。私達も一緒に行ってもいいかな」
 さゆみはほっと胸を撫で下ろすもすぐに気を引き締めた。まだ本人に会っていないので。
「……はい」
 リースはこくりとうなずいた。
 さゆみ達は、リース達について行った。