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葦原城下コイガタリ ~仁科燿助と町娘~

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第6章  友情の際

 シャンバラ教導団にも、房姫からの伝令は届いていた。
 もちろん、この件に耀助がかかわっていることも。

「オネーサンは助ける、漢として当然の事だよな、たいっちー!」
「はい、当然っス!」
「行くぜっ、男のロマンを探しにっ!」
「どこまでもついて行くっス!」

 超乗り気なのは、新谷 衛(しんたに・まもる)緒方 太壱(おがた・たいち)だ。
 待ち受ける危険よりも、出逢いへの期待感ったらハンパない。

「あのチャラ忍者のことだ、賊の首領が女性だと聞いたら成敗しに行くだろう。
 マモルとバカ息子もな!」
「えっとー、樹ちゃん、明らかに楽しんでないかい?」

 チャラ忍者とは、言わずもがな耀助のこと。
 腕組み林田 樹(はやしだ・いつき)が微笑めば、眉尻を掻きながら緒方 章(おがた・あきら)は苦笑した。

「ふふっ、分かるかアキラ?
 如何様な場合でも戦闘訓練の場にする……と言ったら聞こえはいいが、奴等が凹むところを見たいのが本心だ」
「まあ、町娘がフリーだという前提で発破をかければ、彼等は乗るだろうけどね」

 指摘する章も、樹の言うことにはまんざらでもなさそうである。
 結末が楽しみで楽しみで、駆けつけずにはいられなかった。

「マスター、ポチ大変です!
 何でも長屋の娘さんが攫われて燿助さんが単独で救出に行ったようで、私、助っ人に馳せ参じたく……」
「燿助?
 あぁ……あの那由他のパートナーで油断ならねぇアホ忍者か。
 あいつなら放っておいても大丈夫な気もするが……行くしかねぇか」
「ご主人様!
 この優秀なハイテク忍犬の僕にお任せ下さい。
 この優れた犬の嗅覚と聴覚、犬の頭脳とカンで見事に解決に導きましょう!」

 フレンディス・ティラ(ふれんでぃす・てぃら)の耳にも、件の報せが入る。
 すぐにベルク・ウェルナート(べるく・うぇるなーと)忍野 ポチの助(おしの・ぽちのすけ)を集め、校庭の集団へと混ざった。

「あー、樹のねーちゃん達も巻き込んじまって悪ぃな?
 つーかポチ、何でお前までついてくるんだよ!?」
「さあエロ吸血鬼、アホ脳筋共、行きますよ」

 ベルクの突っ込みなど華麗に無視して、大きく腕を挙げるポチの助。
 ちなみに、エロ吸血鬼はベルク、アホ脳筋共とは衛と太壱のこと……自称ハイテク忍者は口が悪い。
 さて、明倫館にて落ち合った一行は、一路賊の住処を目指して歩き始める。
 そこへ。

「あ、フレンディスさん!」
「はい〜、わわっ!?」

 背中越しに名を呼ばれ、勢いよく振り返ったら……こけた。
 咄嗟に、天禰 薫(あまね・かおる)が上半身を起こそうとする。

「だっ、大丈夫ですかっ!?」
「いててて……えへへ、大丈夫です」
「よかった〜」

 薫とフレンディスは、以前からの顔見知り。
 しかし友人と言えるほどの仲ではなかった。
 ゆえに。

(今日って、いい機会なのでは?)
(フレンディスさんのこと、前からちょっと気になっていたんだよね)

 と、心中にてお互いに興味津々だった。
 薫は、意を決する。

「そだ……ねぇ、フレンディスさん達。
 我たちも、連れていってくれないかな?」
「あ、えっと……」
「我たちだけじゃ不安で、よろしくお願いしますなのだ……それと……」
「それと?」
「あの……こんな時に不謹慎かもしれないけれど……フレンディスさん、我と、お友達になってくれないかな?
 前から色んなところで見かけたりしていて、気になっていたのだ。
 仲良くできたら、嬉しいな……だめ?」
「ぁ……ううんっ、駄目じゃないっ!
 私も、お友達になりたいと思っていたんです。
 ぜひよろしくお願いいたします!」

 満面の笑みを浮かべ、フレンディスは薫の両手をとった。
 更に一緒にいた樹達とのあいだにも、友情が生まれたようである。

「孝高、ピカ、行こう……あれ。
 孝明さんは?
 はぐれちゃったのかな、どうしよう!」

 るんるん気分で、きょろきょろと周りを見回す薫。
 その眼には、いるはずの人物が映らなかった。

「まあ、あいつは大丈夫だ。
 放っておけ、天禰」

 薫の心配を覆したのは、熊楠 孝高(くまぐす・よしたか)
 息子だからこそ理解できることもあるわけで、のちのち出会えるであろうことは確信していた。
 それよりも孝高が気になるのは、眼前の彼女のことで。

「そうなの?
 大丈夫だといいな」
「お前が逸れた方が、俺は心配だ。
 もし賊に襲われたりしたら、俺は……」
「孝高は我が逸れたら心配なのだ?
 確かに、おうちに帰れなくなったら怖いもんねぇ」
「って、天禰!
 間違った解釈をするな!」
(……どうしたら、お前は俺の想いに応えてくれるんだ)

 だがこうして気落ちしたのは、これで何度目だろうか。
 格好いい感じに言ったって、薫に真意は伝わらない。

「なあベルク……何をどうしたら、超鈍感の娘って振り返ってくれるんだろうな?
 俺は天禰の事をずっと想っているのに……それに、一応『恋人同士』になって随分経つのにな……」
「熊、そう気を落とすな……」

 苦労人同士の友人であるベルクに相談してしまうくらい、孝高は切羽詰まっていた。
 頷き、肩を叩いてくれる優しさが、心からありがたかった。

「ぴきゅぴぃ」
『薫が知り合いのひとについて行くから、我も一緒に行くのだ』
「ぴきゅ、ぴきっきゅう〜」
『ところでそこのふかふかした柴犬ちゃん、乗ってみてもいいかなぁ』
「ぴーきゅ」
『よいしょ』
「ぴきゅ、ぴーきゅぴ、ぴきゅきゅう」
『何かキャンキャン言っているけれど気にしないのだ、ふかふかを堪能するのだ』

 最後尾は、動物コンビが守りを固めている。
 ポチの助にまたがり寝転がり、天禰 ピカ(あまね・ぴか)は幸せそうに眼を瞑るのだった。

「しかし楽しみだなぁオイっ!
 説明にあった『先生』とやら、さぞええチチしとるんやろうなぁ。
 姉ちゃんの胸は揉むモノ、揉まなきゃ失礼に当たる!」
「止めなさい!」
「うがっ……いってえ!
 いっちーヒデェよー、だったらいっちーの胸を揉ませてくれよおお!」
「誰がいつお前に胸を揉ませると言ったか!
 このバカ鎧が!」
「樹ちゃんの胸はダメです、僕のですから!」
「いや、アキラ、そのツッコミも違うから!」
「おっぱいisジャスティス!」
「おっぱいisジャスティスっス!」
「太壱君、遺伝子情報が繋がっている親として情けなく思いますよ」
「お、親父……ヒデェ……マモパパの真似しただけなのに〜!!」
「育ての親は誰だったんですか?」
「……マモパパ」
「納得です」

 たいして一同の先頭では、4人による漫才が繰り広げられていた。
 衛に樹が突っ込み、章に樹が突っ込み、太壱に章が突っ込み。
 なるほど。
 樹はツッコミ、章はボケツッコミ、衛と太壱はボケ、といったところだろうか。