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祭とライブと森の守り手

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祭とライブと森の守り手

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祭の風景2

「んー……やっぱり祭りの雰囲気の中で食べるのって最高だね」
 あれもこれもと出店の食べ物に手を出し、次の店につく頃には食べ終わる、そんな暴食をしていたセレンフィリティ・シャーレット(せれんふぃりてぃ・しゃーれっと)はそう満足そうに言う。ちなみに今は暴食も収まりゆったりと綿飴を食べている。
「……どこに入ったんだろうね。あの量の食べ物が」
 自分もセレンに少し分けてもらいながら食べたが、それでもお腹がいっぱいだとセレアナ・ミアキス(せれあな・みあきす)は言う。少しも苦しそうにせずにいるセレンを見てはそうつぶやかざるをえない。
「祭だし、今日はいっぱい働いたしいくらでも入るわよ」
 ちなみにセレンとセレアナは今は休憩中だが祭における正式な依頼で街道の警備に来てたりする。先ほど休憩時間に入ったばかりだがすでに射的や金魚すくいは制覇してるという猛者っぷりを見せてたりする。
「ま……祭だし少しくらいハメ外してもいいか」
 自分としてもこうして恋人とデート気分を味わえるのは悪くないとセレアナは思う。それに今回の野盗達の事件において、野盗達の潜伏場所にあたりがつけられていたのはセレンの功績とも言える。事前調査の時にそれをセレンが中心になってまとめていたのが役に立っていた。
「ん? セレンわたあめ食べたいの?」
 セレアナがセレンをじっと見ていることをそう受け取ったのかセレンがそんなことを言う。
「……じゃあ、一口頂戴」
 ハムと、そのままセレンが食べている反対側を頂く。
 綿飴から顔を話すとすぐ近くで満面の笑顔のセレンが見れた。
「ね、もう少しで瑛菜のライブでしょ? そろそろ行こうか」
「そうね」
 セレンの誘いにセレアナは頷く。二人は並んでライブの会場へと向かった。


「ウォーレンから祭のことをいきなり聞いた時はどうなるかと思ったことじゃが……こうして終わり近づいてくると寂しいものがあるのぉ」
 祭の雰囲気を感じながらそういうのはルファン・グルーガ(るふぁん・ぐるーが)だ。パートナーたちの行きたいという声に保護者として参加したが、祭の終わりに何か感じるものはあるらしい。
「ダーリン、クレープがあるよ。一緒に半分こして食べようよ」
 そうルファンの腕を引いて言うのはイリア・ヘラー(いりあ・へらー)。この祭にルファンとデート気分できているイリアは傍から見ても情熱的だ。その割にルファン本人にはその様子が見られないのがおべこべだが。
「お兄ちゃん! 射的アル。商品全部もらっていくネ」
「いやだから俺はお前の兄貴じゃ……多分だけど…………って、射的か! 腕がなるぜ!」
 そんなテンションの高いやり取りをしているのはシルヴィア・シュトロン(しるう゛ぃあ・しゅとろん)ウォーレン・シュトロン(うぉーれん・しゅとろん)だ。二人とも祭ということで思いっきりテンションが上がっていた。
「全く……二人ってば子供なんだから……」
 と、仕方ないわねというふうに言うのはイリアだ。
「祭りなのじゃ。童心に帰るのも良かろう」
「でも……ダーリンと二人きりになれないのは……」
「? どうしたのじゃ?」
「んーん。イリアは二人と違って大人だからって言ったの」
「そうかの?」
 ルファンとしてはイリアの猛烈アタックは子供の甘えのように感じているため、イリアと二人の差をあまり感じてたりはしない。
「そういえばもうすぐライブがあるらしいネ」
「ライブ……ステージか」
 嬉しそうな顔をしてシルヴィアの言葉にウォーレンは反応する。
「お兄ちゃん行くアル?」
「もし飛び入りが大丈夫そうならなにかやりたいぜ」
 そう言ってウォーレンはルファンとイリアの方を見る。
「それじゃ、イリアとダーリンは二人で――」
「――そういうことならライブに行くかの。祭りの最後には相応しいじゃろうて」
 イリアが言い切る前にルファンはそう言い、4人はライブステージに向かうのだった。

 ウォーレンたちがステージについた時には誰かがステージに登りだしているところだった。今は予定では何も入ってなく完全な飛び入りのようだ。
「瑛菜たちのライブが始まるってのににこんなしょぼくれた空気のままでいいわけないわね。あたしが盛り上げるわよ!」
 そう言ってステージに上がっているのはセレンだった。
「お、面白そうな雰囲気……!」
 お祭り野郎なウォーレンは一人で上がったセレンを追うようにしてステージに上る。
「何をするつもりなんだ?」
 単刀直入にウォーレンはそう聞く。セレンも細かいことは何も言わずに答える。
「とりあえず食べたエネルギー全部消費する勢いで歌うわ」
「それがどれくらいすごいかはよく分からんがじゃあ、俺はギターで伴奏するぜ」
 ステージに備え付けられていた借り物のギターを構え、セレンが歌い出すのを待つ。
 そうしてセレンが歌い始め、ウォーレンがその伴奏をするという、最後のライブを盛り上げるための前座が始まった


「祭ももうすぐ終わりなんですね」
 出店を回りながら感じた寂しさに非不未予異無亡病 近遠(ひふみよいむなや・このとお)は、そう言う。
「ですわね。昨日からこれればもった楽しめましたのに」
 と残念そうにいうのはユーリカ・アスゲージ(ゆーりか・あすげーじ)
「仕方ないであろう。昨日まで仕事が重なったのだ。……まぁ、残念であるのは我も同じなのだよ」
 ユーリカのボヤキにそう反応するのはイグナ・スプリント(いぐな・すぷりんと)
「終わったことは仕方ないのでございます。今を精一杯楽しむべきだとアルティアは思うのでございます」
 そう祭りの雰囲気の中で一人だけ別世界にいるような空気を持ったアルティア・シールアム(あるてぃあ・しーるあむ)はそう言う。
「……そうですね。ボクもそう思いますよ」
 過ぎゆく時間の中で尊い時間の貴重さを近遠は理解している。そして祭はその尊さを多くの人が感じられる、そんな時間だと思っている。
「アルティアちゃんが言うとどこか哲学的ですわね。でも今を楽しむというのはあたしも賛成ですわ」
「ならば我は貴公達が楽しめるよう気を配っておこう。せっかくの祭で怪我をしたなどというのは悲しいであろう」
 そうユーリカやイグナは反応する。
「祭が終わったら村長さんや村の人達に挨拶に行きましょう。それまでは……」
「分かりましたわ」
 近遠の言葉にユーリカが返事をし、イグナとアルティアも頷く。
 そうして出店を回って楽しんでいる4人の耳に、街道の方から街道作りの折に毎日聞いていた音楽が流れてくる。
「これは……瑛菜さんの……」
 近遠の言葉についに祭りが終わるという寂しさのようなものが見える。
「みんなで聞きに行きましょう。ライブが終わるまで祭はまだ終わってないのでございます」
 そう言って珍しく先立ってアルティアが街道のステージへと向かっていく。
 その様子に何か温かいものを感じながら近遠はじめ3人はアルティアを追っていった。