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開催、第一代目パートナーバカ決定大会

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開催、第一代目パートナーバカ決定大会
開催、第一代目パートナーバカ決定大会 開催、第一代目パートナーバカ決定大会

リアクション

「くくくっ、フハハハハ! ぬるい、ぬるいぞ! 見ていればまるでなっていないではないか!
 そんなことでは『最強パートナー決定戦』での優勝などでんだろうな!」
「ちょっと、兄さんっ! こんな大会に出るだなんていきなりすぎます!
 ……確かに私と兄さんは最高のパートナーというのは、その、わかりますけど」
『微妙に趣旨を間違えている、実家は墨田区の本名、高天原 御雷! 悪の天才科学者(自称)、ドクター・ハデス(どくたー・はです)選手と、
 その妹でなんだか今日は嬉しそうな顔をしている高天原 咲耶(たかまがはら・さくや)選手の登場っ!』
「ハデスさん、あなたが相手であろうと、この『パートナー自慢討議大会』では負けられません。なぜならば、私のポチが一番いい子ですから!」
「ふふー、僕こそはご主人様のかけがえのないパートナーにして全ての犬の頂点に立つ! 予定の犬! 超優秀なハイテク忍犬・ポチの助なのですよ!」
「……パートナーを自慢するのであって、ペット自慢じゃないんだが」
『こちらも趣旨を間違えておりますが、ぽやぽやドジッ娘忍者フレンディス・ティラ(ふれんでぃす・てぃら)選手、
 その発言の全ては自称の豆柴忍野 ポチの助(おしの・ぽちのすけ)選手、今日もツッコミご苦労様ですベルク・ウェルナート(べるく・うぇるなーと)選手の入場です』
「俺の紹介だけ同情が見えたが、まあいい。フレイが勘違いでこの大会にエントリーしちまったが、お前が苛められればいいぜ、ハデス」
「い、いじめはよくないぞ? だが、今日は最強パートナーを決める大会。やるとなれば、存分に相手しようではないか! サクヤが!」
「わ、私ですか!? ベルクさんと戦うだなんて無理ですよ!」
「大丈夫。最強のパートナーは、天才科学者であるこの俺が開発した改造人間サクヤに決まっているのだから!」
「だから改造人間じゃありません! ……私たちが最高のパートナーというのはわかっているのですけど。
 こういう大会でそれを見せるのは、恥ずかしいというか」
 ハデスの問いかけに指をもじもじさせつつ赤面が止まらない咲耶。
 それを見たフレンディスが待った! と言わんばかりにポチの助のアピールを開始。
「確かにサクヤさんも素晴らしいパートナーでしょう。ですが、ポチはもっとすごいのです!
 ポチはただのワンちゃんではありまん。恐らく忍犬初の豆柴で、なんと人間にも変身が可能!」
「それが今のこの姿なのさ! ……ところでエロ吸血鬼、ご主人様のパートナーはこの僕なのですから、隅っこで大人しくしているといいですよ」
 フレンディスには聞こえないようにベルクに向かって悪態をつくポチの助。
「そりゃそうだろう、きっとお前がベストだよ。見事なまでのベストペット扱いだろうな。
 まあそんなことより、ハデース! ショータイムの時間だぜ!」
 日々のツッコミからたまりっ放しのストレスを発散させるため、ハデス全力で向かうベルク。
「よ、よいだろう。最強のパートナーの最強たる所以、見せつけなくてはな! そして、サクヤを作った俺もまた並ではないと、教えよう!」
 『行動予測』、『メンタルアサルト』を併用し臨戦態勢にはいるハデス。
 ベルクはそれにも構わずハデスへと詰め寄りその顔面へ向けて右ストレート。
 ちなみにベルクは前衛の援護役に徹する闇系魔法が得意な生粋の術師、である。そう、生粋の、術師である。
「はっ! その程度の攻撃に当たるわけがウボアー!」
「当たってんじゃねーか! お前回避系のスキルまで使って何してんだ! というか俺にツッコませんるんじゃねぇ!!」
「に、兄さんにはこれ以上手を出させませんっ!」
 咲耶がベルクの前に立ちはだかる。ハデス最強の防御コマンドの登場に、さすがのベルクも頭を掻くしかできない。
 そこへ、予想だにしない展開が雪崩れ込む。

「ま〜ちやがれぃ〜なのでぃす! ウチの樹様の方が可愛いに決まってやがりますっ!」
「そーそー、ってことでお邪魔させて頂くよ」
「待て、ちょっと待て! 貴様等、この訳の分からん大会を観戦しに来ただけではないのかっ?!」
『こ、ここでまさかの乱入者です! これはよいのでしょうか、運営の判断は……! まさかのオーケー!』
『それでは乱入選手のご紹介です。真っ先に乱入してきたお嬢様がジーナ・フロイライン(じいな・ふろいらいん)選手、
 後に続いてきたの和服の方が緒方 章(おがた・あきら)選手、大慌て最後に駆け寄ったのが林田 樹(はやしだ・いつき)選手です』
「ど、どうして私たちの名前までっ」
『乱入者がでてきても、すぐに対応できるように各学園から名簿をいただいております』
 さらっと言ってのける卜部の手元には六法全書5冊分ほどもある分厚い紙の山があった。
 その中から該当する選手を一瞬で索敵することに、会場から『サクテキジョシ! ウラベ!』などという声が上がるようになった。
 それに気を取られていた樹だったが、すぐに我に戻ることとなる。当然自分のパートナーたちの声によって。
「樹様の可愛らしさは天下一品なのでございます! スタイルの良さからほとんどの衣装はお似合いになりやがりますし、
 御髪も綺麗ですから、和服を着ると日本人形のようでございますです!」
「な! 日本人形……そそそ、そんなことはないと言ったらないぞっ、ジーナっ!」
 林田 樹のステータス、状態異常:赤面
「その樹ちゃんの黒髪が夜床で乱れる姿も良いんだけどね。あ、これ旦那だけの特権だから」
「アキラーっ! 言うに事欠いて何を口走っておるのだ貴様はぁっ!」
 林田 樹のステータス、状態異常:赤面、準石化
「そもそも貴様等! 強い相手に複数で挑むのは分かる、が! 装備品が手加減していないように見えるのは気のせいか?!」

「……気のせいでございます」「……気のせいだから」

「一言で片付けるな! このバカ共が〜っ!!」
「照れてる樹様も麗しゅうでございます。それじゃバカ餅、ワタシがミサイルポッドで弾幕を張りやがります」
 同時に【六連ミサイルポッド】をベルクたちの方へと射出。派手な爆発音とともにリングに爆撃と爆風が吹き荒む。
「マスター! 大丈夫ですか!」
「ああ、まぁこれくらいなら日常茶飯事だし。平気だ」
「よかった……マスターも私にとって、大事なパートナー」
「!?」
「あっいえ、パートナーというよりはマスターでしょうか? ……どうして顔を背けているのですか?」
「……気にするな。不意の一言にやられることくらい、俺にもある」
『音声さん!? 今のちゃんととりました!? ……オッケーです!』
 音声さんのナイスな仕事振りに感激するライナ。リングでは更なる攻防が繰り広げられようとしていた。
 煙の中からフレンディスを狙う人影が現れる。
「煙に乗じてイチャイチャとは、やるようになったじゃない」
「……分かっててフレイに『疾風突き』とは、喧嘩売ってるのか?」
 爆発の煙にまぎれて章が『疾風突き』で煙すら斬り晴らして攻撃してきたのだ。
 その攻撃がフレンディスを狙っていることを見て、何より早く動くベルク。
「いやいや、ベルクちゃんなら受け止めてくれると思ってね」
「言われずともだ」
 煙が晴れる。と同時に章を止めるために走ってくる樹。
「………葦原の忍び娘の所の、黒いの。悪かったな。お互い、アホなパートナーを持つと、苦労が、絶えない、な……」
「いつも通りのノロけっぷりだったように見えるがな」
「そんなことはない! というかノロけてなどいない! アキラのバカがやっただけだ!」
「まあなんでもいいが、な」
 そのノロけぶりにいくばかの羨望を抱くベルク。場は落ち着いたかのように見えた。だがしかし。
「甘い、甘い、甘い。我が主こそが、至高にして、最高の存在!」
「……こっちはこっちで通常運転だな。さすが、あいつんとこの魔鎧だ」

 少し前。
「そろそろ待ち合わせ場所に行かないとな」
 本大会の開催も知らず、自分のパートナーであるゴルガイス・アラバンディット(ごるがいす・あらばんでぃっと)と待ち合わせていた、
 グラキエス・エンドロア(ぐらきえす・えんどろあ)アウレウス・アルゲンテウス(あうれうす・あるげんてうす)
 しかし、グラキエスが目にし、口にした言葉によって、アウレウスの暴走が始まってしまう。
「ん、あそこで何か……『第一代目パートナーバカ決定大会』? ……パートナーの自慢をする大会か」
「パートナー、つまり、主」
「……アウレウス?」
「……主よ。先に待ち合わせ場所にまで行って頂きたい。俺は、行かねばならなくなりました。……うおおおおおおおおおおおおっ!」
 そう叫びながら会場の方へと走り出すアウレウス。いきなりのことに驚くグラキエスだったが、
 放って置くこともできずアウレウスを追うことにしたのだった。

 そして現在。リングの上ではアウレウスが絶賛暴走中だった。
「我が主は、錯乱し襲いかかった俺をお救いになり、更に魔鎧として仕えることを許して下さった! その慈悲深き心!
 しかし、戦闘においては容赦のない鋭い刃たちや、一瞬にして周囲を氷に閉ざす魔法を駆使する。
 その戦場に立つお姿を思うだけで、俺の心は奮い立つ!」
「な、なんだあのでかいのはっ」
「あれはグラキエスのところの魔鎧だよ。いわゆる主バカ」
「主バカ、それなら私も負けません! ですがうちのポチはもっと負けません!」
(なんだか、飼い犬扱いされてる気がする)
 いきなり現れたアウレウスに樹は驚き、フレンディス一行は三者三様の言葉を並べる。が、アウレウスの叫びはまだまだ止まらない。
「だが崇高なだけでなく、無垢なお方なのだ!
 俺が作る料理にお美しい瞳を輝かせ、形良い唇で味わわれたあとのあの笑顔! ああ、この至福を言葉にしきれぬ自分が歯痒い!」
「瞳の美しさなら、うちの樹ちゃんだって負けてないよ?」
「う、うちの兄さんだってご飯を食べたあとの笑顔なら負けていませんっ!」
 章と咲耶が負けじとそれぞれのパートナーのアピールをする。
 いつまで経っても場が落ち着かないが、会場は更にヒートアップ中だ。
 そこへようやくアウレウスに追いつき、その叫びを全て聞いていたグラキエスが、
 感謝の言葉を、無垢なる姿でアウレウスへと向ける。
「……アウレウス。俺もあなたが居てくれて嬉しい。どんな敵と戦う時でも、あなたが側に居れば怖くない。
 あなたは、俺の大好きな、唯一人の魔鎧だ」
『これは今大会で一番のクールデレ、いいえ! 素直さと言うべきだ!
 あまりのド直球のド真ん中ドストレートな言葉に、会場にいる人たちが逆に照れてるよ!』
 グラキエスの心からの言葉を聞いたアウレウスの目には、涙が灯っていた。
「あ、主が……主が俺の言葉に喜んで下さった! しかも、大好きだと、唯一の魔鎧だと……! 俺は、俺はっ……!」
「だからこれからもよろしく、アウレウス」
「……あ、主いいいいいいっっ!!」
 アウレウスの目からは滝のような涙が流れていた。それを遠くから見ていたゴルガイスが呆れ、ため息をついていた。
「まったく、何をしているかと思えば……盛大な道草を食っていたとはな」
 だがゴルガイスは呆れていただけではない。自分の主であるグラキエスは記憶を失ってからというもの、
 「自分はここに居ていいのか」と言う不安を抱えていた。
 そのグラキエスが、アウレウスの呆れるほどの言葉を聞き、嬉しそうにしていたのだ。
「全てが褒められたわけではないが、これはこれで良かったのかもしれんな」
 一人で答えを出したゴルガイス。あとは場を白けさせないため、あの号泣しているアウレウスをさっさと連れ出すだけだった。
 しかしそのアウレウスとグラキエスのやりとりを見て白けるどころか、更にパートナー愛のギアが入った人物たちがいたのが運の尽き。

「いやぁ素晴らしい主従愛。だけど、夫婦愛には敵わないんじゃないかな? 戦場では凛々しくて有能な指揮官の樹ちゃん。
 でも僕の前では素直に甘えたり、恥じらったりする可愛い樹ちゃんもいて、それはもう最高のパートナーなんだよ」
「……確かに樹様はバカ餅と事実婚状態なのは存じておりますです。
 でもでも、ワタシとの付き合いの方が長く、その歳月は10年を超えますわ!
 だから誰と結婚していようともこの愛は揺るがず、ワタシの永遠のお姉さまなのでございやがります!」
「アーキーラーっ! 面映ゆいからそれ以上言うなっ! 頼む、言わんでくれっ! それにジーナっ! 事実婚って……そんなこと公衆の面前で言うなバカ者っ!」
 林田 樹のステータス、状態異常:赤面、準石化、沸騰、氷結
 林田 樹のリミットブレイク。

『黙らんか 私は既に 堪えきれぬ』

 完全に先ほどとは違う声色で、けれど全身ゆでたこのようになりながら銃を構える樹。
「もう嫌だ、私は斯様なところにおるのはもう嫌だぞ! こうなったら、私の姿が見えぬようにしてやるわ〜っ!」
 『弾幕援護』を使い、【灼骨のカーマイン】を乱れ撃ち、その弾雨と硝煙に紛れて徐々に樹の姿は見えなくなっていく。
 それは、樹の恥ずかしさの限界が臨界点を超えたときに取る最後の手段だった。それでも。
「樹様は―――」
「樹ちゃん―――」
 樹のパートナーである二人はそれを知り、それでも樹への愛を語りまくるのであった。
「私とポチも負けていられません! ポチは私の知らない知識を沢山持つ賢い子なのです!
 勿論お散歩、寝食お風呂中も大変お行儀よく、私、飼育で一度も困ったことがありません!」
(ご主人様、飼育と言うのはさすがに酷いです…!)
「いやいやいやいや待て待て待て待て。……ワン公?
 お前いつまでフレイと一緒に風呂入ってんだよ! 今日という今日は容赦しねーぞ!」
「な、なんでこうなるんですかー!」
 未だにポチの助が寝食お風呂をフレンディスと共にしていることを聞いたベルク。
 無論ベルクのいじめターゲットがハデスからポチの助に移行したのは言うまでもなかった。
「……フ、フハハハ! 少しばかり寝てしまっていたが、それも最後を飾るため。サクヤよ! 今こそ真の力を解放するのだ!」
「し、真の力って……ってそれは私の携帯っ!」
「フハハハ! 説明しよう! 俺が開発した変身用携帯電話型デバイスにコマンドを入力することにより、
 サクヤは戦闘形態に変身することができるのだ! 変身に要する時間は、たったの30秒!」
 と言いつつコマンド入力(398)を行うハデス。しかし、ハデスは魔法少女用の【魔法の携帯電話】をいじり、機能を変えただけ(壊した)に過ぎなかった。
「さあ行くのだ、サクヤよ!」
「勝手に変身させないでください!」
 咲耶の叫びも空しく、咲耶の身体が光に包まれ【変身!】のプロセスに入る。元から着ていた制服は光の粒子となり、【魔法少女コスチューム】が装着
「……って、なんで私の足元に出てきてるんですか!?」
 何故か自動的に着替えることなく足元にふってきた衣装に困惑しながら、とんでもないことを思い出す咲耶。

―――変身に要する時間は、たったの30秒!―――

「……兄さんの」
「ど、どうして? そんな血相を変えて」
「兄さんの、バカ、アホ、えっちー!」
「があああああああああああああああっ!?」
 『【レックスレイジ】強化人間用』による全力のツッコミが、ハデスを粉砕。
 しつつも、放送事故を避けるために涙目になりながら、風よりも早く着替えをこなす咲耶だった。
 ちなみに放送事故は起きていない。何故か。この大会は全年齢向け(CERO-A)だからだ。

―――『ゴマイウェイ! ハデス!』『ヒガイシャ! サクヤ!』
―――『マイペース! フレンディス!』『クロウニン! ベルク!』『シンショクオフロ! ポチノスケ!』
―――『ジュウランブ! イツキ!』『ボウソウオジョウ! ジーナ!』『カゲキダンナ! アキラ!』
―――『チュウセイアイ! アウレウス!』『スナオココロ! グラキエス!』

 暴風のような歓声を前に押されるゴルガイスだったが、場が白けなかっただけでもよしとするかと思い直し二人のパートナーを迎えに行くのだった。