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『魔王と異世界の勇者達』

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『魔王と異世界の勇者達』

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  ――魔王の封印から100年。

    四天王の復活により再び混沌と化した世界に、光の女神に導かれし異世界の勇者達が降り立つ。


  




一章 妖美なる女帝 ―地の四天王ガイアとの戦い―



「おらおら、しっかり働けっ!」
 蜥蜴の魔物が、ボロボロの服を着た男性に大きな鞭を振り下ろす。

 人里から遠く離れた鉱山。ここでは魔物達に連れ去られた人間達が、まともな休息すら許されずに延々と採掘をさせられていた。
 掘り出された宝石は、全て一体の魔物へと捧げられる。

「まったく、今日は集まりが悪いですわね」
 坑道の一つから、蛇の下半身を滑らせて一人の女性が現れる。
 地を司る四天王、ガイア・セルペンテ。ラミア達の長でもある彼女は配下の魔物に人間を攫って来させ、奴隷としてこの鉱山で働かせていた。

 色とりどりの宝石で体を飾るガイアは、しかし不機嫌そうに尻尾を振り回していた。

「足りない足りない、これでは全然足りません。もうすぐ魔王様が復活なさるというのに。人間達よ、もっとしっかり働きなさい。
 あなた方にはこの私の美しさに貢献するという素晴らしい役目があるのですよ」
 
「ふっ、奴隷とは良い趣味をしているな」
「! 何者です?!」
 ガイアの背後に一人の人間が姿を現す。

「だが虐げられるべきはそこの人間共ではない、貴様だ! この私、リブロ・グランチェスター(りぶろ・ぐらんちぇすたー)がその命貰い受けるっ!!」
 宣言と共にライフルを構えるリブロ。咄嗟に回避行動を取ったガイアの頬を銃弾が掠めた。一筋の血が流れる。

「この私の顔に傷を……っ! お前達、こやつを血祭りに上げなさい!!」
 激昂するガイア。その命令に応じ、近くに居た魔物達がリブロへと襲い掛かる。

「リブロ様の邪魔はさせん!」
 リブロの背後から現れたレノア・レヴィスペンサー(れのあ・れう゛ぃすぺんさー)が、蜥蜴の魔物が振り下ろしたカトラスを長剣で受け止める。
「はあっ!」
 そしてそのまま押し返すと、バランスを崩した魔物に目にも留まらぬ速さで剣を振り下ろす。
 音速の一撃、『ヴァルキリーの閃光』により、相手は一瞬の内に絶命した。
 仲間を倒されたことに動揺する魔物達。

「エーリカっ!」
「逃がさないよ、ブリッツ・シュトゥルム!!」

 怖気づいて逃げ出そうとする魔物を、エーリカ・ブラウンシュヴァイク(えーりか・ぶらうんしゅう゛ぁいく)が十字砲火で焼き尽くす。
 邪魔者のいなくなった道をアルビダ・シルフィング(あるびだ・しるふぃんぐ)が駆け抜けた。そして手に持った斧をガイアへと振り下ろす。
「か弱い人間攫って女王様気取りかい? ごっこ遊びなら一人でやりな!」
「このっ、人間風情があっ!」

 アルビダ達から離れ、ガイアは短く呪文を唱える。すると周囲の土や岩が彼女の目前に集まり、巨大な人の形を取った。
「行きなさい、ゴーレム!!」
 岩塊の人型、ゴーレムはゆっくりと腕を持ち上げると、近くに居たアルビダ目がけ勢いよく振り下ろした。
「おっと」
 アルビダがゴーレムの拳を避ける。避けられた拳は地面に激突し、大きなクレーターを作った。衝撃で坑道が少し揺れている。

「ふっ、土人形如きでこの私を止められるとでも? レノア、エーリカ、アルビダ。速やかに障害を排除せよ!!」
「「「オール・ハイル・リブロっ!」」」

 レノア達がゴーレムへと突撃する。
 その隙に、ガイアはその場を離脱しようとしていた。
 戦闘を行っているゴーレムとリブロ達から離れ、鉱山の奥へと向かうガイア。

「おっと、逃がさねぇぜ」
 ガイアの前に柊 恭也(ひいらぎ・きょうや)が立ち塞がる。
「おまえはここで倒されてくれなきゃ困るんでな。さっさと終わらせるぜ」
「どいつもこいつもこの私を侮辱して……! いいでしょう、まずはあなたから殺して差し上げますわ!!」
 ガイアの太い尾が恭也へと迫る。
 恭也が後ろに飛んでそれを避ける。横薙ぎにされた尾はその勢いのまま壁に叩きつけられ、砕けた岩の破片が宙を舞った。

「うおっ、何て威力だ……これは接近戦は避けたほうが良さそうだな」
 恭也は鎧武者の傀儡を操りガイアへと攻撃させる。
 素手で殴りかかってくる傀儡を、ガイアは煩わしそうに尻尾で薙ぎ払った。
 太い尾が傀儡の胴体を直撃し、吹っ飛ばした。傀儡は暫く地面を転がり、そのまま動かなくなる。

「次はお前です」
 ガイアがじりじりと恭也に迫る。一歩、後ずさりする恭也。その口元が笑みを浮かべた。

「!?」
 倒れていた傀儡が突然起き上がり、ガイアに抱きつく。
「グッバイミンナトコシエニ! ……起爆っと」
 その言葉と共に、傀儡が爆発した。

 近距離での爆発により、恭也も又爆風に巻き込まれ吹き飛ばされる。
 体を起こし、爆心地へと目をやる恭也。

「はぁ……はぁ……」

 ガイアは生きていた。
 しかし傀儡の自爆によるダメージはかなり大きかったようだ。尾はちぎれ、背中からはかなりの出血が見られる。
「人間……許さないぃ……っ!」
 地を這い、恭也へと距離を縮めるガイア。

「そこまでだ」
 ガイアの眉間に銃口が突きつけられる。リブロだった。

「っ……!」
「粛清の時間だ。何か言い残すことはあるか?」
「人間風情がこの私に何……」
「無いようだな。ならば、死ね」

 坑道に一発の銃声が響く。ガイアはその場に崩れ落ち、動かなくなった。

「さあ、残るは雑魚だけだ。全てを焼き払い、粛清し、蹂躙せよ! この地は既に私の所有物である!」
「「「はっ!!」」」

 レノア、エーリカ、アルビダは残る魔物を一掃するべく行動を開始する。

「獅子王殲滅陣大爆破!!」
「ブリッツ・シュトゥルム!」
「ヴァルキリーの閃光!」
 魔物の集団を、アルビダの大斧が薙ぎ払い、エーリカの十字砲火が焼き尽くし、レノアの音速の一撃が残る魔物を斬り捨てる。
 ガイアの敗北、そして次々と屠られる仲間。程なくして、鉱山内部は逃げ惑う魔物達で大混乱に陥った。

「ま、ボスは倒したことだし、俺は先に退散するとするかね」
 そう言って、恭也は鉱山を後にする。





  ――勇者達の活躍により、地の四天王ガイアは倒された。

    奴隷として捕らわれていた人間達は解放され、自分達の村へと戻り、家族や友人との再会を果たす。

    しかし、これはほんの始まりに過ぎない。勇者達の戦いはまだまだ続くのである――