天御柱学院へ

蒼空学園

校長室

イルミンスール魔法学校へ

壊獣へ至る系譜:炎を呼び寄せるディーバ

リアクション公開中!

壊獣へ至る系譜:炎を呼び寄せるディーバ

リアクション


■ エピローグ ■



 村から離れた森の中、破名はそこで力尽きた。
 ルシェードを放り投げて自分は木に背中を預けるとその場に座り込む。
「もっと丁寧に扱ってくれなぁいぃ?」
「うるさい」
「はぁ?」
「うるさいって言ったんだ。 ――くそ、ガンガンする」
 フードを取った破名は耳から流れる血を乱暴に拭った。ルシェードを見る眼差しは厳しい。
「いいか、ルシェード・サファイス。俺は娘を楔を打つ前の状態に戻してくれと頼んだんだ。なのに何故ただの普通で変哲もないハーフフェアリーの娘に作り変えたんだ! おかげであの娘は使えなくなった。どうしてくれる!」
「ええー、はなちゃんの目から見ても普通な女の子にできたのぉ? やっぱりぃ、あたしって天才じゃなあい?」
 生き物を生き物に作り変える呪いを得意とした彼女は自分の成果が立派過ぎて褒められたくなった。破名の希望通りの被験者として戻したわけでもなく、呪いを解けばカウントダウン付きの暴走状態に戻るだけ。最早今後手出しできない状態にされた破名にはルシェードの目の輝きが本当に腹立たしい。
「話を聞いてるのかルシェードッ!」
「そんな大声出さなくてもいいじゃなぃ」
 自分の研究以外全く興味を持たず、頼まれたからこそ試みたがストレスしか感じなかったことを思い出し、責められているばかりの自分にルシェードは不満顔だ。
「これが怒鳴らずにいられるか。俺が脳を潰すつもりで自爆のエネルギーを別回路に回していたのは何の為だと思っている! しかも奴らにあんな煽り方をして!」
 責め立てる破名にルシェードは半眼になった。
「ああやって煽らなきゃサラマンダーを殲滅してくれなかったかもしれないじゃないぃ」
 指摘に、自爆を誘うエネルギーを全て少女を歌わせることに消費して、おまけとして召喚されたサラマンダーまで対処できなかった破名は口を閉じた。
 あれは本当にぎりぎりの綱渡り状態だった。サラマンダーは少女以外全てを敵視する。それは破名も例外ではなかった。視界に入れば攻撃対象にされる。少女を歌わせることで精一杯だった破名は、一時的にサラマンダーを動かせても退治まではできなかった。召喚を解除する余裕も無く、自分がサラマンダーの標的にされる前に誰かに倒してもらわなければならない状況だったのだ。
 協力を感謝する。その言葉に嘘偽りは無い。
「そもそもぉ、はなちゃん。自分しか強制終了のコードは打ち込めないはずじゃなかったのぉ? シャットダウンされたって、なんで関係もない外部の終了を受け入れてるのかなぁ」
「それは……」
 最初から失敗していたのだ。破名以外の強制終了を受け入れるトラブルを予想するべきだった。完全に破名の落ち度である。
「正規の手続き踏んでなければエラーも起こすわよねぇ?」
 少女が意識を失ったことで吐き出された大量のエラー。それが引き起こした自爆騒ぎ。大事にしたくなかった破名にとってはルシェードの言葉は耳に痛い。
「ルシェード」
「なぁにぃ?」
「おまえの家まで「飛ぶ」ぞ」
「そんな頭で大丈夫なのぉ?」
「一ヶ月は動けないだろうな。だから自分の世話は自分でやれよ」
 満足に歩けないルシェードに言い放って、破名は彼女の手を取った。



「――以上の事を踏まえ、これは仮定となるが、件の人物はハーフフェアリーの少女に手を加えたものの、契約者が到着した後何らかの事情で自爆を誘発させる事態に陥り、それを防ぐために少女を元に戻し事件の解決を図ったものと見られる。尚、巻き込まれたと思われる少女は一部記憶の欠落の症状を見せたが無事保護され親元に返されている……ですか」
 報告書に視線を落としたレティーシア・クロカス(れてぃーしあ・くろかす)は、また一枚ページを捲る。
「目的は依然不明というのも、不気味なことですわね」
 それに、と続ける。
「一点。気になることがあります」
「一点?」
 聞き返した従者に彼女は頷いた。
「破名という男が悪魔だと断言した人間が居るようですの。報告内容は皆と同じでとても詳細にわかりやすく書かれているのですが、これだけが、名前とともに明言されていて……気になりませんか?」
 全ての組にお願いし出してもらった報告書の中で、悪魔と種族が明示された、そのひとつだけが妙に気にかかる。
「まぁ、わたくしの杞憂かもしれませんけれど……。破名とルシェード・サファイス、ですか。今後動くのでしょうか」
 問題は多く残されている。

担当マスターより

▼担当マスター

保坂紫子

▼マスターコメント

 皆様初めまして、またおひさしぶりです。保坂紫子です。
 今回のシナリオはいかがでしたでしょうか。皆様の素敵なアクションに、少しでもお返しできていれば幸いです。
 皆様お疲れ様でした。話の後半は完全に私保坂の予想外の展開になっていて、今でも手に緊張の汗を握っております。
 あと、サラマンダーがゲシュタルト崩壊しました。もう少しスマートに書きたいものです。

 また、推敲を重ねておりますが、誤字脱字等がございましたらどうかご容赦願います。サマランダーとか書かれているかもしれませんご容赦願います。
 では、ご縁がございましたらまた会いましょう。