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【ぷりかる】祖国の危機

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【ぷりかる】祖国の危機

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第三章

「まずは、周辺から探っていかないと……どこで思わぬ落とし穴があるか判らないわ」
「そうですわね」
 旅の歌姫と舞姫としてペルム地方へ入った綾原 さゆみ(あやはら・さゆみ)アデリーヌ・シャントルイユ(あでりーぬ・しゃんとるいゆ)は、まずは海沿いの街で行動を開始することにした。
 二人は広場や酒場と言った人の集まりそうな場所を探して街中を移動していた。
「いたって普通、だわ」
「ええ。クーデターなど起こっていないかのようですわ」
 不思議そうなさゆみの呟きに、アデリーヌも同意する。
 人々で賑わう広場を見つけると、さゆみはにっこりとほほ笑んだ。
 元々引っ込み思案であまり人前に出るのは苦手なはずなのに、頑張って舞う準備をしている恋人の耳元にさゆみはそっと囁きかける。
「大丈夫よ。アディ、あなたは舞姫なの。舞うことだけ考えればいいのよ」
 その言葉を聞いたアデリーヌがその通りにして意識を集中させるのを見ると、さゆみは歌い始める。
 舞姫に成り切ったアデリーヌが隣で優雅に舞う。
 二人の周りには、あっという間に人だかりができた。
 歌と舞が終わると、二人は優雅に一礼する。
 街の人々からわっと歓声が上がった。
 食べ物やお金などを渡してくれる人々と笑顔で話しながら、さゆみはさりげなくペルム城や街の様子などを尋ねる。
 二人は街から街を移動しながら情報を集めた。
「先ほどのお二人の歌と踊り、素敵でした」
 二人がレストランで食事をしているところに、拍手をしながらロザリンドが近づいてきた。
「ありがとうございます」
「旅先で素敵なものが見られて嬉しいです。ご一緒させていただいてもよろしいですか?」
「ええ、もちろん」
 旅人を装うロザリンドが席に着く。
「街の人は何も知らないみたいだわ。いくつか街を回ったけれど、怖いぐらいに何の噂もないようね」
「私も、新聞なども確認しましたが、これといった事件は載っていませんでした」
 さゆみと小声で情報を交換すると、ロザリンドはすぐに店を出た。

「特に目立つ何かがある地方じゃないし。普段そんなに人の出入りは多くなさそうだから、突然大所帯で向かったら怪しいと思うよ」
「遠回りだけれど、陸路で向かったほうが良いのかしら?」
「いや、だから頼むから姫さんはヴァイシャリーに残ってくれ」
 マーガレット・アップルリング(まーがれっと・あっぷるりんぐ)の指摘に首を傾げて考え込んだセリーナ・ペクテイリス(せりーな・ぺくていりす)を見て、ナディム・ガーランド(なでぃむ・がーらんど)が慌てて遮る。
「ナディムちゃん……私も皆のお手伝いがしたいの」
「そうは言ってもよ……」
 真剣なセリーナの目に、ナディムが困ったように眉をひそめる。
「……それにしても、どうしてクーデターが起きたんでしょう? もしかして、ソフィアさんをおびき寄せる為とか、クーデターは囮で本当の目的は別にあるんじゃ……」
「おい、リース。このタイミングでさらに不安なこと言うなって」
「す、すみません……ですが、こ、こういった可能性も考えて、周囲の方々にお話を聞くだけなら……」
「そーよね。近くで話聞くだけなら別に安全じゃない? あたしのお家に行くまでの通り道の筈だから、あたしたちがペルム地方近くの町にいても怪しまれないと思うんだよね」
 リース・エンデルフィア(りーす・えんでるふぃあ)の言葉を引き取って、マーガレットがうんうんと頷く。
「ね? ナディムちゃん?」
「あー、もう、分かったよ!!」
 ナディムの声に、3人は顔を見合わせて微笑みあった。
「マーガレット、やっぱり海路は危険だと思いますか?」
「っていうか、他の皆は北カナンから向かってるんでしょ? どうせなら別ルートからのほうが違う情報集まりそうじゃない?」
「そう……ですね」
「結構な長旅になるな。姫さんも二人も無理しないでくれよ」
「はい」
「ええ」
「大丈夫だって」
 4人は、里帰りに見えるよう準備を整えると早速出発し、海路組から数日の後にペルム地方への関所へとたどり着いた。
「ず、ずいぶんあっさり入れましたね」
「実家帰るのにいちいち止められてちゃたまんないわよ」
「そうよねぇ」
「でも、関所に立っている方々、いつもより多かった気がします。確認は簡単でしたが、何人かでじっと荷物を見ていました……」
 リースの言葉に3人も無言で頷く。
 マーガレットの故郷に向かって進みながら、ナディムは時折酒場に立ち寄り情報を集めた。
 数件目の酒場でロザリンドの姿を見かけると、ナディムはさりげなく隣に座った。
 旅人同士を装う会話を交わしながら、情報を交換する。
「特に何もない。気になったのは、あまりにも自然に関所を通れたことと、極々一部で、最近ペルム城への出入りが厳しくなったっていう話が出てるくらいだな」
「似たようなものですね……。私も、不自然さを隠している、という違和感、がありました」
 ロザリンドは、それぞれから集めた情報と、自分が見聞きした様子をまとめると、レキと円に連絡を取った。