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3章 セカンド・ステージ

「ダクレスさん居ないわね……」
 レティシア達がダクレスの飛空挺を氷と雪の中に埋めている頃、二番目の人達がヒラニプラ上空を通過しようとしていた。
「あっちもどうやら、ダクレスさんを見つけていないみたいね」
「どうしましょう? ダクレスさんを見つけた方がいいのでしょうか」
 セレン達をちらちらと見ながら、揺花は郁乃に聞いてみた。
「うーん……」
 郁乃は腕組をして考え始めた。
 考えている途中、エリスとゲブーが四人を抜かして進んだのを見ると揺花は郁乃の服の袖を引っ張った。
「何? ちょっと考え中なんだから」
「先頭取られちゃいましたよ」
 あれ。と、もうすでに後ろ姿が点になっているエリスとゲブーを指差した。
 ちらりとセレン達を見ると、ダクレス探しは諦めて、エリスとゲブーに追いつこうと低速にしていたほうきの速度を上げて前に進んでいるようだった。
「取りあえずさ、ちょっと休憩しない? この寒さはきついよ」
 郁乃は白い息を吐きながら、トナカイを地面へと下ろそうと手綱を操作した。
 白い雪が降り積もっている草原らしき場所に着地すると、二人は肩に掛けていた水筒を手に取った。
「紅茶を全部飲まないでくださいね」
「そっちこそ、ココアを全部飲まないでよね」
 ぷふっと先に笑ったのは郁乃だった。それにつられて揺花も笑顔を作る。
 揺花は持っていた毛布で二人をくるみ込んだ。
「暖かい。帰ったらふかふかの羽毛布団で寝たいな……」
 郁乃は、揺花の肩に頭を乗せてしばらく目をつぶった。
それから数十分後、地面にソリの跡を付けながらトナカイは慌てて空へ飛び上がったのだった。

 ヒラニプラを通過したエリスとゲブーは、シャンバラ大荒野へと進んでいた。
 すると、前方から一発のミサイルが二人に飛んで来たのだ。二人はほうきのスピードを落としてミサイルをすり抜ける。
 後方でミサイルが爆発したのを見てエリスは、危ないなぁと思いながら前方を睨みつけた。
 前方には何故かコックピットの窓を全開にしコートは豹柄、スポーティーなサングラスを掛けて、左足に履いている赤いハイヒールを飛空挺のハンドルに引っかけて立っている女性が居た。
「私の攻撃をかわすとはさすが能力者!」
「いや、普通二発撃ってそのセリフだと思うんだけど……一発だけって簡単に避けられる気が」
「後は大量に画面内に撃ってそのセリフとかな。というか、ねぇちゃんグラマラスだねぇ」
 へっへっへ。と三流の雑魚のセリフを言いながら、ゲブーは前方の女性を見る。
 ゲブーの下品と言える笑いに、女性ははんっと鼻で笑った。
「ああ、自己紹介がまだだったね。私がイラエット・シュタインへーガーだよ」
「そんな自己紹介より、胸を揉ませやがれ!」
 ゲブーはそう言いながら、ほうきの柄に足を引っ掛けて立ち上がるとイラエットの大きな胸に向けて大ジャンプを展開したのだ。
「そんなの、予測済みだよ」
 イラエットは、操縦席のパネルも見ずに左足のつま先でミサイルポッドの発射ボタンを押した。
 小さめのミサイルはゲブーのお腹目掛けて白い煙を吐きながら飛びだしたのだが。
「凍てつく炎!」
 いつの間にか呪文を唱えていたエリスがゲブーとイラエットに向けて魔法を展開したのだ。
 氷の塊はゲブーに。炎球はイラエットにそれぞれ飛んで来た。
 大ジャンプ展開中のゲブーには避けるという選択肢があるわけもなく、氷の塊とミサイルが直撃し地面へと落ちて行った。
「ということで、じゃあね!」
 炎球をイラエットが見事なハンドルさばきで避けている最中にエリスは飛空挺に向けて手を振ると、上を通過してアトラスの傷跡へと目指したのであった。
 チッと軽く舌打ちをしながら、イラエットはエリスを追ったりもせずに次の参加者が来るのを待つことにしたのである。