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白蛇の神様現る!?

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白蛇の神様現る!?

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第4章 和解


「もう……何なのだよ!」
 頭の中では、混乱と困惑が渦巻き、もはや何をしようとしていたのか、何をすればいいのかすら神様には分からなくなっていた。
 長い間封印されていた事への恨み返しで、暴れるつもりが、逆に追い詰められていることに衝撃を受けていたのだった。

「あ! 神様、こちらにおいででしたか」
 巫女服姿で大岡 永谷(おおおか・とと)が後ろから神様へ声をかける。
 神様は攻撃の構えを取ろうとすると、突然、永谷に手を引っ張られる。
「えっ?」
「こちらですよ、神様」
 連れて行かれた先にはビニールシート、その上には数々の正月料理が並べられていた。
 その横では巫女服姿で鈴を持ち、華麗なステップで舞い踊る宇都宮 祥子(うつのみや・さちこ)の姿があり、神様は気がつけばそちらに目を奪われていた。
 気がつけば、先ほどまで隣にいたはずの永谷もそこに入って、神楽を舞っていた。
 その神楽はしっかりとした動きで、また迷い等を感じさせない綺麗な神楽だった。

「では、私はまだやらないといけないことがありますので」
 神楽を終えると永谷はそういって深くお辞儀をすると、その場を離れていってしまった。
「ささっ、御神酒でもどうぞ」
「あ、ありがとうなのだよ」
 祥子が御神酒を取り出して杯につぐ。
 並々に注がれた御神酒を祥子から受け取ると神様は少しずつ飲んだ。
「ところで神様、あなたの神名をお伺いしたいのですが」
「……白城娘大蛇(ハクジョウコオロチ)なのだよ」
「白城大蛇様ですか、良いお名前ですね。そうだ、義弘」
 そう言うと、祥子は腰から日本刀を取り出して、白城に渡した。
 刀を受け取ると、白城は興味深げに刀を眺めた。
「わー、神様だー!」
「しゃ、しゃべったのだよ!?」
 渡された刀、宇都宮 義弘(うつのみや・よしひろ)がしゃべり出す。
 突然のことに、白城はおもわず刀を空へと放り投げた。
 すると刀は形を変形させていき、一瞬の内で鉄の蛇へと姿を変えた。
「もう、あぶないよー。初めまして神様!」
「……おもしろいのだ。もう一度刀へと変わってくれな……変われなのだよ」
「へ? 分かった……って、わーっ!? あんまり振り回さないでー!!」
 刀に変わった義弘を、白城は楽しそうに振り回し始めた。

「ったく、今度はどこで暴れてるんだ……お?」
「わーっ、下から入り込まないで〜!!」
 さて、その場から離れた永谷は白蛇たちを探していた。
 ほどなくして白蛇の姿を見つけるが、すでに被害者が居るようだった。
 村主 蛇々(すぐり・じゃじゃ)の周りに白蛇が100近くは集まり、群がっていた。
「姉さんが、来いって言ったんじゃないか!」
「そうだーそうだー!」
 白蛇たちが口々に叫ぶ。
「何をやっているんですか……」
 永谷が蛇たちを踏まないように、蛇々のそばに行くと蛇々は逃げるように永谷の後ろへと隠れた。
「ちょっと、蛇の身体を触ってみたいな――じゃなくてっ、スキンシップしようとしてただけで」
「おいおい、あの目は殺意のあった目だぜ」
 一匹の蛇が反論する。周りの蛇たちはそれに併せて頷く。
 つまり、蛇の身体を触ろうとした蛇々の目は殺意にあふれていたということらしい。
「とにかく、白蛇方には一度お出でいただけませんか?」
「……あんた、今までの巫女さんとは違うな」
「……」
 白蛇は警戒しているのか、上から下まで永谷をなだめるように観察する。
 永谷はそれを微動にもせず、ただ答えを待った。
「まあ、巫女さんが居るってなら行ってもいいだろ」
 白蛇と蛇々は、永谷の案内で白城の居る方へと向かったのだった。

「ねえねえ、なんで神様なのに御札の中に居たの? いじわるされてたの?」
 義弘が唐突に聞くと、白城は困ったような、寂しいような表情を示した。
「まあ……蛇というだけで封印されたのだよ……」
「あ、来たみたいだよっ!」
 白城のそばでリンネ・アシュリング(りんね・あしゅりんぐ)が、近づいてくる白蛇たちに声を上げた。
「ちっ、神様か。で、俺たちはなんで此所に連れてこられたんだ?」
「知らないのだよ」
 白城も立ち上がり、白蛇たちをにらむ。
 その間に静かに博季・アシュリング(ひろき・あしゅりんぐ)が入った。
「あなた達には仲直りをしてもらおうとおもいまして」
「はあ? また、俺たちにあいつのパシリになれっていうのかよ!」
 蛇たちが口々に愚痴をこぼし始める。
 それをリンネと博季がまあまあと、なだめる。
「私はパシリなんてつかってないのだよ! そもそも使えるのが子分の仕事なのだよ!」
「……神様の言い分もわかるけど、私は白蛇たちの言葉が正しいように思えるなあ」
 そう言いながら蛇々は白蛇を一匹抱えると、そっとなでた。
「おー、姉ちゃんさすが! 姉ちゃんの方が神様の方がよかったで!」
 再び白蛇たちが「そうだ!」などと盛り上がり始める。

「ん〜っ、このままだと堂々めぐりだね〜」
「そうですねえ……羽根突きなんかで勝負させて勝った方の言うことを聞かせるというのはどうですか?」
「あ、それ名案だよっ!」
 リンネと博季が良いことを思いついたと、白蛇たちをあつめ説明する。
 予想外に白蛇たちは乗り気だった。
「よっし! じゃあ、勝ったらこの神社は俺らのものになるんだな!」
「ま、まけないのだよ!」
「あ、神様ちょっと話が……」
 蛇々はこっそりと、白城を呼び出すとなにやら耳打ちをする。
 白城は深刻そうな表情を一瞬浮かべる。
 すると蛇々は力強く神様の背中を叩いた。

 程なくして、羽根突きは開催された。
 目の前に広がるは白蛇たちの数に、博季達は圧倒されていた。
「……やっぱりこうしてみると多いですね」
 100匹は居る蛇たちを前に、白城を含めたった10人で迎えようとしていた。
 そんな状態であってもリンネは明るく笑った。
「まあ、負けるかもだけどたのしもうよっ!」

 が、この羽根突き思った以上に大変な物となった。
「あわわっ!? と、届かないよ!」
 何度もリンネが取り損ないそうになる羽根だったが。
「まかせてください!」
 人間とは思えない、空を舞う動き(歴戦の飛翔術)で羽根を次々と博季が白蛇たちへ返していく。
 それをみて、白城も何か熱いようなものがこみ上げてきていた。
「わ、わたしもがんばるのだよっ!」

 数時間に渡り行われた羽根突き。
 ここで、白蛇たちも博季達も、そして白城も疲れ果てていた。
「おい、いつまでつづくんだこれー!」
「これ……いつまでやればいいのだよ?」
「えっ、いつまでなんだっけ?」
「よく考えたら、羽根突きってそもそも2人でやるものでこんな大人数でやる物ではなかったですね」
 博季が地面に座り込みながら言う。
 つまり、勝負の決着は付かず羽根突きは終わろうとしていた。
「……」
 永谷はこっそりと、疲れている今の内に白蛇たちを封印しようと、御札を準備し始める。
 が、祥子に手を止められてしまう。
「封印するなら今の内だぜ?」
「まだ、少し様子をみてみよう。何かあっても今の白蛇たちには何も出来ないだろう」
 永谷達はひっそりと、疲れ果てている白蛇たちを眺めた。

 先に動き出したのは白城だった。
「楽しかったのだよ……お前達」
「ん? なんだ突然」
 白城は白蛇たちの方へと歩み出ると、手をさしのべた。
 だが、白蛇を直視はできず顔はそっぽを向けていた。
「その……わるかったのだよ。お前達はずっと一緒に付いてきてくれていた友達だったのに」
「……」
 白蛇は差し出された白城の手の平をずっと眺め、ものふけていた。
「仲直りってことか」
「……あそこの蛇々さんに言われたのだよ。このままでは誰からも信頼も得られないまま死んでいくぞ〜って」
 白城はいじけるように言って見せた。
「ふっ……ワハハハハッ! そりゃーおもしれー」
「た、大将?」
 ほかの白蛇たちが、驚いたように笑い始めた白蛇を大将と呼んだ。
「まっ、楽しかったしな。今日のことは水に流してやってもいいぜ! で、神社はどうするんだ。封印された恨み、やはり返すのか?」
 白蛇の放った言葉に周りの空気が突然のように重くなる。
 永谷達は神楽道具と御札を強く握りしめた。
「……それこそ、もうどうでもよくなったのだよ。リンネさんと博季さん達のおかげで」
 不安そうに見つめるリンネと、その横で腰に手を当てて眺めている博季を見ながら言う。
 白蛇はさらに笑った。
「はっ、それでこそあんただ。でもこのまんまだと封印されてしまうぜ?」

「させないよっ! だって、友達だもん!」
「えっ」
 両手を腰に当てて、リンネが叫んだ。
 その言葉に、白城も白蛇も驚き、リンネ達を見た。そこにはずらりと何人もの人が並んでいた。
「で、巫女さんとしてはどうなのですか?」
 ちらりと博季が永谷へと視線をやると、永谷は持っていた御札を火に燃やした。
「……まあ、封印しなくても神社の守り神として存在してくれるなら、問題ありません」
「だ、そうですよ? あとは……」
 さらに、神主達へ視線をやると神主達は隠れてしまった。
「まあ、大丈夫そうですね」
「神主さん達とも、信頼しあえるように頑張るのだよ……」
「うんうんっ! ふぁいとだよ〜」
「その……また、私たちと遊んでくれる?」
 白城が頬を少し赤くし、照れながらリンネに聞く。
 リンネは一瞬目を丸くすると強く頷いた。
「もちろんだよっ! 時間があったら博季とまた来るよ!」
「ありがとうなのだよ!」
 リンネと白城はしばし強く握手を交わしたのだった。

 その後、白城娘大蛇と白蛇たちの神社は、御利益とご縁のある神社として有名になっていった。

担当マスターより

▼担当マスター

朱坂理樹

▼マスターコメント

 お疲れ様でした! 当シナリオへのご参加ありがとうございました!
 無事に神社は潰れることもなく、神様を封印することもなく終了することができました。
 (もしも神様が封印されれば、神社はもしかしたら……なことになってたかもしれません)
 アクションの中でも「神様を封印するべきだ!」「仲良くしたい」など、なかなか綺麗に分かれておりました。
 各々の考えも含まれており、楽しくアクションを拝見させていただきました!
 また、次回皆様とお会い出来ますことを心から楽しみにしております。