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A NewYear Comes!

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A NewYear Comes!

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「さて、お参りもすんだし、次はどこ行こうか?」

 丁寧に二拝二拍手一拝し参拝を終えた匿名 某(とくな・なにがし)が一緒に来た結崎 綾耶(ゆうざき・あや)たちに声をかける。

「おみくじやろうぜ! おみくじ!」
「って、さっき『さらば諭吉!』とか言いながらお札入れてたわよね? どんだけでかい願い事したのよ……」

 フェイ・カーライズ(ふぇい・かーらいど)が呆れ顔でとなりで騒ぐ大谷地 康之(おおやち・やすゆき)を見つめる。

「年に一回なんだから奮発だってするさ! それよりおまえこそ何真剣な顔でお願いしてたんだよ?」
「うふふ。それはね〜『世界中の髪を結んだ結いっ子たちに幸あれ』って……ん?」


「香菜〜、さっきなくなりそうっていってた御守り、持ってきたよ〜」

 とてとてと美羽は後輩の夏來 香菜(なつき・かな)に御守りの入った箱を届ける。

「ありがとうございます。美羽先輩」

 何回かの練習のかいあって、少しずつ笑顔で対応できるようになってきた香菜。
 今朝一緒になったときは、緊張していたのか今よりももう少し固い笑顔だったのだが、「こういうときは笑顔が大事なんだよ」と言って、美羽は時間を見つけては香菜に笑顔の練習をさせたのだった。
 最初は「上手くできません」なんていっていたのだが、何だかんだで出来るようになっている。香菜は笑うとかわいいのに、なかなか素直に笑ってくれないからもって笑ってほしいという美羽の願いはどうやら届いたようで、美羽もよりいっそう笑顔で接客に励んでいた。

「あ、ほんとだ。いたいた。おーいオレ様がわざわざ来てやったぞ」

 コハクに引きつられてキロスたち、ちょうど同じようなタイミングで反対側からはルカルカと杜守たちも現れて香菜と美羽のいる授与所の前はすっかり賑わっていた。

「よう海。あけましておめでとう」
「某たちも来てたのか。あけましておめでとう」

 高円寺と匿名たちは楽しそうに話している。他にも何人か知り合いどうしがいたらしく、正月の挨拶がそこかしこで交わされていた。

「な、何しに来たんですかっ」

 キロスに巫女姿を見られるのが恥ずかしいのか、照れ隠しのように少し怒って香菜は声を上げる。

「へ〜」

 じろじろと香菜の衣装を眺めては「やっぱ巫女なら胸がねぇとな!」と言い放ったキロスを今にも殴ろうとする香菜をなだめて、美羽は笑った。

「香菜の巫女姿、とっても可愛いよ」
「二人とも、すごく似合ってるよ」

 コハクもすかさず声をかければ、香菜もしぶしぶだが納得した様子すとんと座った。

「うしっ! じゃあ早速おみくじやろうぜ!」

 わくわくとしているキロスのもとに物凄い勢いで走り寄ってくる人影。

「あけましておめでとうっ!」
「ごはあっ!」

 綺麗に決まったドロップキック。ずべしゃあっと地面に転がるキロスを見ながら、華麗に着地したフェイはいい笑顔を浮かべながら改めて周りに挨拶する。

「おいっ! なにすんだお前はっ!」

 鼻をぶつけたらしくちょっぴり赤くなっているのを押さえながらキロスは立ち上がる。

「あら、いたの?」

 清々しいほどにすぱっとキロスを切り捨てるフェイにショックを抱えつつ突っ込むキロス。そんなやりとりを見ているうちに次第に人が集まってきたようだ。

「おやおやおや〜。その美しい足から繰り出される華麗なドロップキック……受けられることが至上の喜びだとなぜ考えられないんだキロスくん!」

 女子の香りに誘われて、というわけの分からない理由で仁科もいつの間にか混ざっていた。本能的にこいつはキロスと同じ匂いがすると判断したフェイは、気付かないうちに割りと冷めた目で仁科を見つめてしまっていた。

「じゃあさっそくおみくじ対決と行きましょうか! 一番凄いの引いた人が優勝ね!」

 キロスや高円寺たちにコードを紹介していたルカルカだったが、おみくじとはどういうことが書いてあるのかと言い出したコードと、キロスの早速引いてみようぜという言葉で思いつきこんな提案をしたのだった。

「いや、おみくじはそういうものでは……」

 淵の言葉も周りには届かず、コードにおみくじとはそういうものではないんだと説明するので手一杯だ。
 結局何だかんだでおみくじを引いていなかった人たちは楽しそうだからと提案にのっかり、乗り気でない高円寺もルカルカがなんとか説得してみんなで引くことになったのだ。

「それでは開封〜!」

「何が出るかなっ、何が出るかなっ」

 かさかさと楽しそうに開封した大谷地のおみくじは『凶』。追い討ちのようにフェイに鼻で笑われてしょんぼりとうなだれてしまうのだった。

「綾耶はどうだった?」
「私は末吉でした」

 匿名とともにおみくじを引き、いざ木に結ぼうとしたが高さが届かない。年明けそうそう運がよくないと少し気にする結崎だったが、匿名に「俺も末吉。お揃いだな」といわれて、匿名の分と一緒に木に結んでくれた。滑り出しが悪いかもと思ったが、匿名と一緒ならば何も気にすることはないと思うと自然と笑顔が零れるのだった。

「吉か……」

 フェイのおみくじには良すぎもせず、悪すぎもしない内容が書かれてあったが、ふと隣を見ると、まさかの中吉の文字が。

「あ〜〜〜!!! なにすんだよ!」

 まだ内容に気付いていなかったキロスのおみくじを強奪し、「挑発野郎は爆発しろ!」と叫んで逃げていった。キロスの手元には、先ほどフェイが拾った凶のおみくじにそっとすりかえられて戻されていたことにキロスは気付かなかった。

「あはは。元気だしなよキロス。僕は……中吉。柚はどうだった?」
「あ、えーと。わわっ、大吉です!」

 よかったな、と高円寺に声をかけられ微笑まれれば、嬉しそうにほんの少し戸惑いながら柚は三月とおみくじを交互に見る。

「くそ〜、おい柚、今年はお前の大吉パワーで絶対リア充になろうな!」

 おみくじの結果で負けたことが悔しいらしく、せめてパワーをもらおうというキロスに柚も「頑張りましょう!」と答えた。
 そんなやりとりを見ているのがなんだかとても楽しく、コハクはつい笑ってしまう。

「先輩はどうでした?」
「ん〜、中吉」

 そんなコハクのおみくじを後ろからひょっこりと美羽も覗いて声をかける。

「いいことありそう?」
「よくわかんないけど、キロスくんたちも見てて面白いし、今はとっても楽しいよ」

 騒がしいが確かに楽しい人たちを見ながら、美羽とコハクは楽しそうに笑うのだった。

「あーあ、リア充は爆発すればいいのに……」

 キロスがぼそりと呟くと、リア充とはなんだとコードが尋ねる。

「リア充ってのはな、なんていうかこう、爆発させたくなるようなもんなんだよ」
「ふむ。発見次第爆破すればいいのか?」
「こらこらやめぬか!」

 適当な発言でコードに余計な情報を吹き込むキロスからコードを引き離すが、結局どちらなのかと疑問ばかりが残ってしまったようで、また説明するのが大変だなと淵は一人深く溜息をつくのだった。

 結局、大吉を出した柚が一人勝ち。とはいっても、勝ったからといって特になにかあるわけではなかったのだが、あえておみくじ勝負にしたことで、普段あまり話さないような人とも話す機会ができていた。仲のいい人同士でも親睦を深めることができて、結果的に大成功といえるイベントになった。
 ルカルカは毎年恒例にしてもよさそうだなぁと考えながら、先を歩く淵とコードを見つめながらともに家に帰るのだった。