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今日はガチで雪合戦!

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<part2 白き巨人>


 雪兵の投げる雪玉が雨あられと飛んでくる。
「せいや! せいやせいやーっ!」
 アキラ・セイルーン(あきら・せいるーん)は冷気をまとったバットで次々と雪玉を打ち返した。マンモスの毛皮を羽織って懐にはサラマンダーを仕込んでいるので、防寒対策は万全。そのうえバッティングに精を出しているので体はホカホカだ。
 アキラの周囲に雪兵たちが群がってくる。その後ろには雪隊長がシャドーボクシングしながらついてきている。
「お主らをアキラに近寄らせはせんぞ。フローズンの名を持つこのワシの力、とくと思い知るがよい!」
 ルシェイメア・フローズン(るしぇいめあ・ふろーずん)が※零銃を手近の雪兵に撃った。たちまち雪兵の周りにウニ状の氷が形成され、雪兵はその場で動けなくなる。
「ぬ〜り〜か〜べ〜」
 ぬりかべ お父さん(ぬりかべ・おとうさん)が氷結した雪兵を高々と持ち上げ、ぶん投げた。雪兵は雪隊長に激突し、ついでに何体かの雪兵たちを薙ぎ倒す。
 劣勢と見た雪兵たちが雪巨人に駆け寄って騒ぐ。
「先生!」「奴ら、侮れんでござる!」「先生の力を見せてやってござる!」「先生!」「せんせえ〜っ!」
 先生先生先生!のシュプレヒコール。
 雪巨人がゆっくりとアキラの方を振り返った。カマボコ型の口をニイッとつり上げ、地面の雪から素早く雪玉をこしらえる。
「おぉ〜? 勝負しようってんのかー!」
 アキラはバットをしっかりと構え直した。
 彼と戦っていた雪兵たちは砲撃をやめ、アキラと雪巨人とのあいだに道を空ける。ギャラリーとなり、固唾を呑んで見守っている。いつの間にかピッチング勝負の舞台ができあがっていた。
 某ど根性野球アニメのテーマを歌いながらバットをゆらゆらさせるアキラ。
 雪巨人が巨大な雪玉を放った。
 ぶんっと風切り音。
 アキラはバットを振り抜いた。
 大玉は斜め右に飛んで十数体の雪兵を吹き飛ばす。
 雪巨人が数瞬も待たず、次の雪玉を放つ。
「速っ!?」
 アキラが態勢を整え直す暇もない。アキラとルシェイメアを大玉を襲った。
 あわや生き埋めに、と思いきや、ぬりかべ お父さんが腹ばいになり壁として二人をかばっている。
「ぬ〜り〜か〜べ〜っ!」
 ぬりかべ お父さんは起き上がる勢いで雪を弾き飛ばした。
「すまねぇ、お父さん。こいつぁなにがなんでも勝たなきゃいけないようだな!」
 アキラの眼に炎がゴオオオオと宿る。
 雪巨人が次の大玉を投げた。
 熱血モードのアキラは最大限の力でバットを大玉に叩きつける。爆裂音。
 大玉は真っ直ぐかっ飛び、雪巨人の土手っ腹を襲撃した。胴体の雪玉が破裂し、雪巨人は地面に投げ出される。
「ふふん、やりおるのう」
 ルシェイメアがくすりと笑った。

 雪女の空降 冷花(そらふり・れいか)は氷術で作った大玉をボウリングのように転がした。
 大玉は勢いよく転がり、縦一列に並んだ雪兵を薙ぎ倒していく。
「ストライクじゃ!」
 冷花は雪面に軽く跳ねて喜んだ。
「しっかり守っててくれよー。今できるからなっ」
 その隣ではマリリン・フリート(まりりん・ふりーと)が仕掛けを作っている。氷術で大きな氷柱を二本立て、そのあいだにゴムロープを渡し、楕円形にくり抜いた皮を接着する。
 巨大パチンコの完成だ。
「よーし、やるぞ!」
「了解なのじゃ!」
 マリリンと冷花はパチンコに雪の大玉を装填すると、二人協力して皮を引っ張り、手を放した。
 大玉が雪兵の一団を襲う。広範囲の敵がいっぺんに吹き飛ばされる。
 二人はどんどん巨大パチンコで砲撃を加えた。雪巨人が二人の脅威に気付き、大玉を投げてくる。
「危ないっ」
「ふにゃっ!?」
 マリリンが冷花を突き飛ばして回避した。大玉がパチンコに直撃、破壊。雪巨人はさらに大玉を投げてくる。雪兵もそれに習えと集中砲火を加えてくる。
「しょうがねえ、逃げるぞ!」
 マリリンは冷花をお姫様抱っこで抱え上げた。仰天する冷花。
「っと、わっ!? 誰か、誰かーっ!」
「あ、暴れるんじゃねえよ! 落としちゃうだろ!」
「す、すまぬ。恩に着るのじゃ……」
 冷花は顔を赤らめて大人しくなった。
 マリリンは冷花をお姫様抱っこしたまま雪巨人の射程外まで退避する。
「あの大っきいのが厄介だよねー」
 近くにいたレキ・フォートアウフ(れき・ふぉーとあうふ)が声をかけてきた。
「ああ、そうだな。なんとかしないと」
 マリリンはうなずく。
「これは協力して戦うしかないアルよ」
 チムチム・リー(ちむちむ・りー)が提案した。
「それはいいけど、どうやんだ?」
 マリリンの質問に、レキが答える。
「ボクとチムチムが雪巨人にこっそり近づいて攻める。キミたちはさっきみたいに遠くから砲撃してくれないかな? みんなで同時にやれば、きっと勝てるはずだよ!」
「うむ、良いの」
「それで行くか!」
 冷花とマリリンはレキの作戦に賛成した。
 二人はもう一度その場に巨大パチンコをこしらえる。
 レキは雪玉をたくさん作って自分のペンギンアヴァターラ・ロケットに積んでいく。
「こーろころころこーろころ。んっ、これくらいでいいかなっ?」
「作戦開始でアル!」
 チムチムは光学迷彩で姿を消し、雪巨人に向かって駆け出す。
「んしょっ!」
 レキも同じく光学迷彩を使うと、ペンギンアヴァターラ・ロケットに跳び乗って、チムチムとは反対方向から雪巨人に接近する。
「ここはボクたちの場所! 誰にも奪わせないんだからね! えーいえいえいっ!」
 レキはロケットを雪巨人へと走らせながら雪玉を――雪巨人の関節を狙って投げまくった。
 チムチムも反対側から雪巨人の関節に氷術を叩き込む。
 雪巨人は攻撃を受けているのは分かるものの、敵の姿が見えず反撃できない。
「主よ、今こそアレを使うのじゃ!」
「おし!」
 マリリンは冷花に氷術をかけた。ピキピキピキーンと氷が張り、雪女の氷漬けができあがる。クリスタルのように澄み通った巨大氷に封じられた冷花は、蒼白な肌もあって氷の彫刻のごとく美しい。
 マリリンは冷花を巨大パチンコの皮に装填して、ゴムを引っ張った。頭上にマリリンを掲げているせいで、着物の裾の中がはっきりて見えてしまう。
「……あ、履いてない」
「!?」
 氷漬け冷花が巨大パチンコから射出された。
 ――おのれーっ、覚えておれ!
 恨みのこもった冷花が雪巨人に飛来する。左右からはレキとチムチムが雪巨人の関節に射撃を続けている。関節の耐久力は既に限界だ。そこへ冷花入り氷玉が爆来した。
 衝撃で吹き飛ばされる雪巨人。大きな体に亀裂が走る。氷塊が割れ、冷花が外に出る。
「氷術ぱーんち! 氷術ぱんち! 氷術ぱんち!」
 羞恥で逆上した冷花の殴打が雪巨人に連続で叩き込まれた。ついに雪巨人の体は堪えかねて砕け落ちる。
「わーい! やったぁ!」
「倒したでアル!」
 レキとチムチムは手を取り合ってはしゃいだ。
 これで雪巨人は二体が陥落。
 残るは二頭の雪竜と、大ボスの雪将軍である。