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【第四話】海と火砲と機動兵器

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【第四話】海と火砲と機動兵器

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 海上で兵器同士が戦っていた頃。
 また別の場所で戦っていた者たちがいる。
 彼等の戦っていた場所もまた、戦場なのだ。
 
 海京沖合での戦闘と同時刻 天沼矛内部
 
「ふふふ……海京ですか。九校連にとってもっとも発達したイコンや超能力の分野を持つ、私にとっても厄介な場所ですからね。丁度良い機会だと思ったのですが」
 残骸の中に立つエッツェル・アザトース(えっつぇる・あざとーす)は自分に銃を向ける大熊 丈二(おおぐま・じょうじ)と高周波ブレードを構えるヒルダ・ノーライフ(ひるだ・のーらいふ)に向けて高笑いする。
「動くな! 速やかに投降しろ! 繰り返す――」
 クルーエル・ウルティメイタム(くるーえる・うるてぃめいたむ)の力も手に入れたエッツェル。
 彼は潜水状態で海京に接近、港湾部より上陸後、作業員に変装して、製造整備ラインや武器弾薬保管庫、発電施設にエネルギープラント等を狙って破壊工作をしかけた。
 死者を操る術を応用して保安人員を混乱させて暴れさせたり、適当な人員を路地などに引き込んで外傷を残さず殺傷、術によって操ることにより爆弾などで自爆させたり、保管してある武器などを暴発させたりさせることで、次々にテロ行為を行っていたのだ。
 だが、そこには天沼矛の警備の為に丈二とヒルダも訪れていた。
 要塞を含め、この手の構造物は外的への防備は堅いが、内部からの破壊に弱いのが相場。
 というよりは存在意義的に仕方ない部分――そう思った丈二。
 エッシェンバッハ派の襲撃が続いている為、どうしても外部へ目が向きつつある状況かと考え、その隙を突いた内部破壊の工作の芽が存在するならを摘んでおきたいとも思っていた所に、丈二はエッツェルによるテロの現場に遭遇したのだ。
 相手は得体の知れない存在。
 だが、丈二は国軍軍人としての使命感と責任感により恐怖を押さえ込み、なんとか冷静な精神状態を保ち続けていた。
 そんな彼を笑うようにエッツェルは声を立てると、急に踵を返した。
「待て! 動くなと言った筈だ!」
 銃を突きつけ叫ぶ丈二。
 一方、エッツェルは高笑いをするだけだ。
「いいんですか? 動かなくても、せっかく、今日の所は見逃してあげようと思ったのですから。このまま私を行かせておけば、あなたはここか生きて出られるというのに」
 それでも丈二は冷静に銃を突きつけ直す。
「もう一度言うぞ。動くな。速やかに投降しろ」
「せっかくですが、私は帰らせてもらいますよ。殺戮も破壊も十分にしましたし、それに、彼等との連絡も取れたことですしね」
 一瞬、訝しげな顔をしたものの、すぐにエッツェルの不審な動きに気付いて発砲する丈二。
「何……? 待てっ!」
 だが、エッツェルは銃で撃たれたというのに、平然と高笑いしながらどこかへと去って行った。
「今は生存者の確認と救助が先か……!」
 まだ釈然としないものはあるものの、すぐに頭を切り替える丈二。
「ええ。まだ生存者はいるはず」
 ヒルダもそれに同調する。
 そして、二人はエッツェルの消えた天沼矛内部で救助活動へと取りかかった。