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賑やかな夜の花見キャンプin妖怪の山

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賑やかな夜の花見キャンプin妖怪の山
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リアクション

 花見が始まり陽一達が狐火童と遊んでいる頃。
「ねえ、よかったら一緒にお弁当食べない? お弁当食べながらお花見だよ」
 美羽は狐火童を見つけるなり声をかけてお弁当を食べたりしてお花見ごっこという名の遊びを始めていた。
「リコ達、大丈夫かなぁ」
 美羽は駆け回っているだろう理子達の事を心配していた。
「美羽ちゃん、きっと大丈夫よ。それより……」
 瀬蓮はそう言い、そっと美羽に相談を持ちかけた。魔姫とエリスフィアの事を。
「せっかくのお花見だからみんなで楽しみたいよね。だったらね……」
 瀬蓮から相談を受けた美羽は少し考えていたがすぐに閃き、こそっと作戦を教えた。
「うん、美羽ちゃん、やってみるよ」
 瀬蓮は早速、美羽に授けられた作戦を実行。美羽はそっと見守っている。
「ねぇ、エリスちゃん。瀬蓮の作った卵焼きやおにぎり食べてくれない? お料理が上手なエリスちゃんから何かアドバイスとか貰えたらいいなと思うの」
 まず瀬蓮は自分が作った卵焼きやおにぎりなどのおかずを小皿に載せてからエリスフィアに声をかけた。
「……アドバイスですか?」
 使い切った小皿やコップを片付けていたエリスフィアが動きを止めた。
「……瀬蓮?」
 予想外の瀬蓮の言葉に少しだけ驚き聞き返す魔姫。しかし、作戦実行中の瀬蓮は何も答えない。
「エリスちゃん、どうぞ」
 瀬蓮はおかずが載った小皿をさり気なく魔姫の隣に置いた。
「いただきますね」
 エリスフィアは頼まれたアドバイスをするべく魔姫の隣に座っておかずを食べ始める。
「魔姫ちゃん、紅茶を入れてあげて」
 瀬蓮がおかずを味見しているエリスフィアを確認しながら魔姫に言った。
「……えぇ。エリス、瀬蓮の料理は合格? ほら、紅茶よ。味見をお願い」
 魔姫は瀬蓮に促されながらエリスフィアのために紅茶を淹れて渡した。
「ありがとうございます。合格ですよ。形は少々崩れていますが、とても美味しいです。紅茶も美味しかったですよ」
 エリスフィアはおかずと紅茶を平らげて感想を口にする。友人としてではなくメイドとして。
「何か甘い物を用意しますね。そちらの方々の分も用意しますね」
 味見を終えるとすぐにエリスフィアはみんなのために動き始めた。狐火童の分も用意するらしい。先ほどもメイドとしての役目だったかのように。
「ありがとう!」
 美羽は元気良くエリスフィアに礼を言った。
「……」
 魔姫は黙って動き回るエリスフィアを眺めていた、少しだけお友達気分を味わえて嬉しかった。本当に友人となるのは時間が掛かるだろうが。
 そこで
「……瀬蓮、もしかして」
 魔姫はもしやと気付いた。瀬蓮が味見を持ちかけたのはこのためではないかと。
「……魔姫ちゃん、みんなとエリスちゃんの作ったお菓子を食べよう」
 瀬蓮は笑みで魔姫に答えてからエリスフィア特製のお菓子を受け取っていた。
「……えぇ」
 魔姫はそれだけ言ってエリスフィアからお菓子を受け取った。自分を気遣う友人がいて嬉しいと思いながら。
「……今日は本当に楽しいね」
 美羽は自分が瀬蓮に授けた作戦が上手くいった事に満足そうだった。

 狐火童の情報が伝えられた後。
「……狐火童ね、ここで起きた騒ぎのせいで泣いているかぁ」
 理子の表情は曇っていた。
「理子さん、彼らの力になりたいんだろう?」
 陽一は理子の気持ちを見透かしたように訊ねた。
「えぇ。でも今日誘ってくれたのは陽一だし、みんなにも悪いわ」
 理子は素直に答えるも歯切れが悪かった。花見を楽しむためにここに来たのに自分のわがままで陽一達三人に迷惑を掛けるような事はしたくなかったのだ。
 しかし、その気持ちは理子の思い込みに過ぎなかった。

「私は別によいぞ。その狐火童とやらと戯れるのも一興だ」
 セレスティアーナは偉そうな態度だが、賛成を示していた。
「……泣いている子を放っておくのは悪い事だよ」
 優しいジークリンデは当然泣いている子供を放っておくような冷血ではない。
「で、俺も賛成。あとは理子さんだけ」
 陽一もまた迷いなく賛成を示した。
「……ありがとう。でも夜明けまで付き合わないといけないのよね」
 理子は賛成してくれた三人に感謝を述べるも徹夜となってしまう事に多少の不安を感じた。遊ぶだけとはいえ相手は妖怪。案外難易度が高い。
「そこは俺が何とかするから理子さんは楽しむ事だけを考えてたらいい」
 と陽一。余計な事を考えて理子が楽しめなかったらいけないから。その余計な事は自分が担当すればいいと。

「そうだぞ。来るべき時に向けて備えよ」
「……お腹空いたら動けないからね」
 セレスティアーナとジークリンデは食べたり飲んだりして来るべき時に備えていた。

 とうとう狐火童が出現。
「相手は子供だから。こういうのはどうかな」
 遊び相手を見つける前に陽一は『ちぎのたくらみ』で自分を5歳ぐらいの姿に変え、『タイムコントロール』で理子達三人を10年分若返らせて8歳から10歳程度の姿にした。

「……子供?」
 理子は驚き小さくなった両手を見つめていた。
「小さくなったぞ」
 セレスティアーナは両手を開いたり閉じたりして自分の体を確かめていた。
「これで正々堂々と勝負が出来る」
 ジークリンデは子供という同じ条件で狐火童と勝負する事が出来ると満足げ。
 セレスティアーナは大変な事情によりまだ数年程しか生きておらず、ジークリンデは女王時代は孤独であり、今は過去の記憶を失っており、理子もまた幼少時寂しい思いをしていた。だから陽一は三人が子供の時に出来なかった事をさせてあげたかったのだ。

「……あはは」
 理子は何がおかしいのか急に笑い出した。
「理子さん?」
「子供時代に戻ったみたいでおかしくて、そう言えば前に思い出が無いなら作ればいいって言ってたわよね。子供みたいにワクワクしてる。今日は本当に最高のお花見よ。ありがとう」
 心配する陽一に理子はふと真面目な顔で以前秘密基地を巡る出来事の時に陽一に言われた事を思い出していた。
 真面目な顔はすぐに崩れ、
「行こう、陽一。二人がもう遊び相手を見つけたみたい」
 理子は数人の狐火童の勧誘に成功しているセレスティアーナとジークリンデを見つけた。いつの間にやら二人は動いていたようだ。
「あぁ」
 陽一も急いで理子に続いた。

 陽一達四人は狐火童と木の棒で楽しいチャンバラごっこを始めていた。
「我は正義の侍なるぞ!」
 数人の狐火童を引き連れる正義の侍理子と陽一が連れて来た特戦隊がいる。
 それに対峙するのは
「返り討ちにしてくれる。行け!」
 悪の魔道士のセレスティアーナと数人の狐火童と陽一が連れて来たヘルハウンドの群れ。
「……消えるとは……どこに行ったのかな」
 ジークリンデは消える狐火童相手に一対一の勝負をしていた。

「……みんな楽しんでるなぁ」
 陽一はペンギンアヴァターラ・ヘルムのペンタとのんびりとチャンバラごっこを眺めていた。
 その時、背後から
「って、痛!」
 いきなり木の棒で叩かれ、慌てて背後を振り返った。
 いたのは先ほどチャンバラごっこに夢中になっていた理子だった。
「陽一、眺めてないで参加参加。ほら!」
 そう言って理子は陽一の腕を引っ張り戦場へと引き込んだ。
「……ちょっ」
 巻き込まれながらも陽一は嬉しく思っていた。理子達が笑い、楽しんでいる姿を見て。
 相手が妖怪のためと徹夜であるため疲れを感じる事はあったが、陽一が持って来た愛の結晶で何とかやり過ごす事が出来て無事に夜明けを迎える事が出来た。

 狐火童が会場を賑わせていた時。
「どうした? 強そうな者でもいたのか?」
 グロリアーナ・ライザ・ブーリン・テューダー(ぐろりあーならいざ・ぶーりんてゅーだー)は花見を楽しむ妖怪の方にちらちらと視線を向けているソフィア・アントニヌス(そふぃあ・あんとにぬす)に言葉をかけた。本日はソフィアを誘って花見にやって来たのだ。
「あぁ、すまぬ。さすが妖怪の山だと思ってな」
 ソフィアは視線をグロリアーナに戻した。強き者と戦いたい病のソフィアにとってここはなかなかの修行場に映っていたらしい。
「確かにな。どうだ、あの辺にでも座らないか?」
 グロリアーナはうなずきながら、近くに咲いている夜光桜の下にあるベンチの方にあごをしゃくった。双子が気を利かせて設置したベンチである。
「それはよいな」
 ソフィアはグロリアーナに続いた。

「春とはいえ、夜は冷え込む。温かい飲み物でもどうだ?」
 ベンチに座るなりグロリアーナは持って来た水筒を開け、カップに紅茶を注いでソフィアに差し出した。
「……頂こう。ふむ、良い香りだ」
 ソフィアはカップ受け取り、紅茶の香りを楽しんだ後、一口飲んだ。
「これまで色々とあったな」
「皆のおかげで我が国は救われた。いくら感謝してもし切れない。私一人ではどうにも出来なかっただろう」
 グロリアーナとソフィアはこれまでの出来事を振り返っていた。国のために協力者を得ようとパラミタに来て過ごした日々、ペルム地方での最後の戦いと両親との再会など。
「……ソフィアよ、あの時、国元にて騒乱が起き、父や母を想い逸る其方を見て在りし日の妾を見た様な気持ちになったものだ」
 両親を助けようと必死な姿のソフィアの事を思い出したグロリアーナは苦笑いを浮かべながら身の上を話し始めた。
「……そうか」
 ソフィアはただうなずき、耳を傾ける。
「尤も、妾の父君と母君は仲が良好とは言えなんだ。それでも妾は抜き差しならぬ仲にまでなった父君と母君の狭間で尚、二人を敬い続けた……父君が母君を処刑した後も、な。その点、ソフィア、其方は幸福だ。父君も母君も仲睦まじき間柄で、妾が思わず目映いと感じてしまう程に、な。故に、アントニヌス帝、オリカ妃、共に其方と再会出来た事は、妾にとっても喜ばしい事だった」
 苦笑いのグロリアーナは話しを終えると友人の幸せを嬉しく思う笑みを浮かべていた。
「……ありがとう」
 ソフィアは笑みを浮かべながら答えた。紅茶は少しばかりぬるくなっていた。
「しかし、すまんな。このような楽しい時に沈むような話しをしてしまい」
 グロリアーナはふと花見の場にそぐわぬ話をしてしまった事に気付き、詫びた。
「いいや、気にするな。私には話しを聞く事しか出来ない。それが口惜しい。あなたが困っていた時に何も出来なかった事が」
 ソフィアは静かに頭を左右に振り、申し訳なそうに言った。なぜなら多くの友によって自分達は救われたのに自分はグロリアーナが大変だった時に何も出来なかったからだ。
「その気持ちで十分だ。それにもう昔の事だ」
 グロリアーナは本気で自分を思いやってくれているソフィアの言葉に嬉しくなった。
「……しかし」
 ソフィアの表情は少々納得出来ずにいた。
「ソフィアよ、これからも妾の善き友であって欲しい。勿論、妾もそのつもりだ」
 グロリアーナは笑みを消し、真剣な面持ちで力強く言った。
「……当然の事だ」
 答えるソフィアの表情も真剣だった。何か起きたら必ず助けると。
「しかし、夜光桜とは何とも美しいな。こうして花を愛でるのも風雅で偶には良いであろう?」
 グロリアーナは表情を柔らかくし、夜光桜の方に視線を向けた。
「……そうだな」
 ソフィアもつられて夜光桜を眺める。
「ところであれから国元の父君、母君は壮健かの?」
「あぁ、元気だ」
 突然両親の事を訊ねるグロリアーナに不思議に思いながらもソフィアは答えた。
「そうか。ふと、思うたのでな其方の国元へ、桜を植えてみては、と。美しき花なれば、エリュシオンにも多々あろう。しかし桜という物はそれらとは美しさや趣を異にするものだ。咲いて数日もすれば一斉に散り行くが故の儚きせつなの美がこの花にはある。桜が起源となった国ではそれを雪に喩え、桜吹雪と言う。ペルムに桜吹雪を舞い上げてみるのも、また一興ではないか」
 グロリアーナが桜吹雪の事を口にした後、凄まじい轟音と共に夜光桜がしなり、桜吹雪の如く大量の光る花びらが二人の頭上に降り注いだ。
「……桜吹雪、か。父上と母上にも見せてあげたいものだ……しかし、先ほどの轟音は何だ?」
 両親の事を思い出しながらソフィアは徐々に輝きを弱めながら地面に積もる花びらを眺めていた。ただ、先ほどの轟音が気になる。
「……絶妙な演出だと思いきや主宰者の一人が何かやらかしたようだな」
 グロリアーナは轟音の原因である双子の一人が他の参加者に痛い目に遭わされているのを発見し、神妙な表情を浮かべていた。
 しばらくベンチで休んでから二人はまた夜光桜の下お喋りをしながら散策を始め、和菓子やクレープを買ったりして楽しんだ。