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賑やかな夜の花見キャンプin妖怪の山

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賑やかな夜の花見キャンプin妖怪の山
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リアクション

 花見会場、狐火童登場前。

「夜に見る桜って初めて。予想より綺麗かも。用意は大丈夫、アンネ、リリン」
 クリームヒルト・オッフェンバッハ(くりーむひると・おっふぇんばっは)が夜光桜を見上げながら感嘆の声を上げた。
「ご心配ありません。お菓子と飲み物はリリン様と共に全て抜かりなくご用意してあります」
「春とはいえ少し冷え込みます故、飲み物は温かい物を用意しておりますので」
 料理担当のアンネリース・オッフェンバッハ(あんねりーす・おっふぇんばっは)リリンキッシュ・ヴィルチュア(りりんきっしゅ・びるちゅあ)
「クリム様、アンネ様、お誘いに感謝致しますわ。ふふ、素敵な夜になりそうですわね……ね、摩耶様、リリン様」
 クリームヒルトから誘いを受け参上した董卓 仲穎(とうたく・ちゅうえい)は夜光桜と集まったみんなに声をかけた。
「そうだね。お菓子を食べながらこの不思議な桜を愛でよっか」
  神月 摩耶(こうづき・まや)は仲穎にうなずいた。
「……この辺りで始めましょうか」
 いつの間にかリリンキッシュがレジャーシートを敷き、準備を完了していた。
 そして、五人が食べたり飲んだりを始めてすぐに狐火童の情報が入った。
「……狐火童かぁ、話を聞いたからには放っておく訳にはいかないね」
 歪んではいるが騎士の家系であるクリームヒルトは狐火童を放置する事は出来なかった。
「……可愛らしい妖怪が出るんですのね」
仲穎は様々な意味で楽しみのようであった。
 とにもかくにも狐火童を迎える心構えはしっかりとしていた。

 狐火童出現後。
「ほら。もう泣くのは止めて……私達と一緒に遊びましょう♪」
 クリームヒルトは自分達の所に現れた狐火童の頭を撫でながら優しく遊びに誘う。
「あそこにも泣いてる子がいるよ。迎えに行って来るね♪」
 摩耶はわざわざ離れた場所にいる狐火童のお迎えに上がっていた。
「あらあら、可愛い童様達ですわね。一番見た目が可愛らしい方をお持ち帰り……ではなく連れて参りますわね」
 仲穎はちらちらと狐火童の様子を観察。個体差は無いが、胸にぐっと来る子達を選んで連れ帰って来た。

「早速、トランプで遊ぼう!」
 クリームヒルトは予め持って来たトランプを取り出した。
「トランプですのね。ゲームのルールは私もあまりよく分かりません故、教えてもらいながらとなりますが、頭脳戦でしたらば生前イロイロやってた私ですもの、自信はありましてよ♪」
 トランプを見た仲穎が真っ先に反応し中国の武将たる生前の自信をみなぎらせていた。
「この子達もいるし、簡単なルールのゲームにするから童さんとペアを組んでやろう!」 摩耶が提案する前に皆それぞれ一人ずつに座らせていたりした。摩耶と仲穎は膝に座らせ、クリームヒルトは隣に座らせている。アンネリースは皆の世話をする必要があるためトランプには不参加。そのため狐火童が一人だけあぶれてぽつんと突っ立っていた。
「……あの……よろしければ、わたくしとゲームをしませんか」
 摩耶の隣に控えていたリリンキッシュが見かねて恐る恐る誘った。
「……」
 狐火童はトテトテとリリンキッシュの所にやって来て隣に座った。
「……あの……触れても、問題ありませんでしょう、か?」
 リリンキッシュはぎこちなく問いかけた。
「……」
 狐火童は声を出しての返事はせず、こくりとうなずいた。
「……では、失礼します」
 リリンキッシュは恐る恐る狐火童の腕に抱きついた。
 これで何とかペアは完成し、ゲームが始まった。
 まずは同じ数字を合わすだけの神経衰弱やばば抜きをする事に決め、ゲーム毎に簡単に摩耶とクリームヒルトが交代でルール説明をしてから始められた。

 姦しいゲーム中。
「みんなで遊ぶと楽しいね!!」
 狐火童と密着している摩耶は盛り上げようと笑顔で狐火童に話しかけるが、返事など返っては来ない。それでも摩耶は気にせず、助言をしたりや騒いだりした。

「なかなか面白い遊びですわね」
 すっかりどのゲームのルールも頭に入れた仲穎も楽しんでいた。胸にはしっかりと狐火童が抱き抱えられている。普通ならば何やら声を出すところだろうが、とてつもなく大人しかった。

「……楽しいですか?」
 摩耶の隣に控えるリリンキッシュは狐火童が楽しんでいるかどうか窺っていた。
「……」
 狐火童はじっと顔をリリンキッシュに向けていた。まるでリリンキッシュが楽しんでいるのか訊ねているかのように。
「……これでも楽しんでいるつもりなんですが……よろしかったらわたくしが作ったお菓子でもどうぞお食べ下さい」
 リリンキッシュは答えるも狐火童の顔はこっちを向いたまま、困ったリリンキッシュは花見に合わせて作った和菓子を勧め始めた。

 そこに
「人間の食べ物、大丈夫かな?」
 摩耶がひょっこりリリンキッシュ達の会話に割って入り、食べるのか食べないのか興味津々で観察。
「……」
 狐火童はそっとリリンキッシュから和菓子を受け取り、狐面の口の所へ。途端に和菓子は消えて無くなった。どうやらお面は外さないようだ。
「御口に合うか如何かは解りませんが……温かい緑茶もどうぞお飲み下さい」
 アンネリースが緑茶の入ったポットを持ってやって来た。
 狐火童は緑茶も見事に飲み干した。
 それをきっかけに少し一休みをする事にした。

 休憩中。
「どうぞ皆様、お食べになって下さいませ」
 アンネリースが緑茶を用意していく。
「……和菓子もどうぞ」
 リリンキッシュは狐火童を引き連れてお菓子の用意をした。
 緑茶と和菓子でのまったりとした休憩となった。

「ん〜、こうして可愛い子と遊びながら夜桜見物ってのも良いものよね♪」
 クリームヒルトは膝に座る狐火童の手を握り、夜光桜を見上げた。
「……」
 狐火童は自分の手を握るクリームヒルトの手を軽く握り返した。
 それに気付いたクリームヒルトはその可愛さに思わず
「……んふふ、可愛い……お菓子みたいに食べちゃいたいわ」
 口元に笑みを浮かべつつ少々危ない事を洩らしていた。
「……朝になったらお別れというのが残念。もっと遊びたいのに。ね?」
 摩耶は少し残念そうな顔をしたかと思ったら狐火童を後ろからぎゅっと抱き締めた。
「…………たい」
 狐火童は抱き締める摩耶の腕を握り、小さな声が狐面の奥から洩れてきた。聞き取りにくかったが、“遊びたい”と言っている事は明確だった。
「話したよ!」
 びっくりの摩耶。ゲーム中、たくさん話しかけても答えは戻って来なかったのでまさか返事が返ってくるとは思ってもいなかったのだ。
「……小さな声で寂しそうだったわね」
 クリームヒルトは寂しそうな声に胸が痛くなり、狐火童を後ろから抱き締めた。
「……」
 狐火童はじっとクリームヒルトの顔を見ていた。
「出来れば一人ぐらいお持ち帰り出来ても良いのに、寂しさを感じないほどとても可愛がってあげますのに」
 仲穎は緑茶を一口飲んでから艶やかな笑みで不穏な事をぽろり。
 この休憩が終わるとまた賑やかな遊びに戻った。何とか無事に夜明けを迎えると共に狐火童との別れも迎えた。最後に遊ぶ機会があればまた遊ぼうと約束して。