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リアクション
【差し替え画像 三】
安物っぽい派手なセットに、カメラが切り替わった。
その中央に立つのは、宇都宮 祥子(うつのみや・さちこ)、アイシャ・シュヴァーラ(あいしゃ・しゅう゛ぁーら)、そしてセレスティアーナ・アジュア(せれすてぃあーな・あじゅあ)の三人。
周囲の安っぽさが余計に際立つ、豪華な顔ぶれである。
「さぁ始まりました、シャンバラ・テレフォンショッピング♪」
女王と代王を左右に従えて立つ祥子が、物凄く胡散臭げな口調でにこやかに話しかける。相手は、お茶の間の奥様方であろうか。
「皆さん……お料理の下ごしらえで食材をカットする時に、うっかり手を傷つけたり、切り落とそうとして俎板ごと真っぷたつ! そんな経験ありませんか?」
あったら怖いだろう。
というツッコミはさて置き。
「そんなアナタに、ピッタリの商品をご紹介いたします!」
いいながら、祥子が取り出したその商品は――。
「なんと、この道4000年というポータラカ人の匠、ビゼン・マゴロークさんによる設計の、光条万能包丁です!」
アイシャはおとなしく微笑んでいるが、セレスティアーナは祥子が手にしている商品を、脇から興味津々な目つきで覗き込んでいる。
この商品の売りとしては、光条兵器の『使用者が斬ると定めた存在だけを斬る』という性質を利用した、斬新な万能包丁、というところである。
祥子は早速、光条万能包丁の光刃を発現させ、あらかじめ用意されてあった俎板と、そこに乗せられている鯛やら南瓜やらをダンダンダンと豪快に、そして勢い良く叩き切り始めた。
「コレを使えば、例え自分の手の上から刃を落とそうが、思いきり切り落とそうが、自分の手も俎板も、全く傷が付きません!」
祥子の説明に、セレスティアーナがほほぅと横から顔を差し出してくる。
「こいつは良い! 私の料理の腕も、格段にアップしそうだな!」
「生憎ながら、本製品は怪我をしないという点だけが売りですので、上手く切れるかどうかは別問題です」
折角、胡散臭い共演者よろしく祥子の手並みに感激の声を上げてやったセレスティアーナだが、当の祥子から冷たい切り返しを食らって、危うくずっこけそうになっていた。
「尚、この光条万能包丁は普段は持ち手部分だけですので、持ち歩いても銃刀法違反にはなりません。護身用にも最適ですね♪」
「その通り! 収納も楽々ですから、キッチンが手狭になってきている奥様には、特におススメです!」
アイシャの解説には、気分良く応じる祥子。
セレスティアーナは負けてはいられないと、傍らで次の声かけタイミングを虎視眈々と狙っている。
「これだけの性能を誇る光条万能包丁がなななんと! たったの19800ゴルダでのご提供です!」
高いのか安いのか、よく分からない。
分からないが、ここが勝負どころだとセレスティアーナがすかさず合いの手を入れてきた。
「こんなに安けりゃ、思う存分使いまくって、すぐに元が取れるってものだな!」
「……基本は光条兵器と同じ原理ですので、SP切れにはご注意ください」
またもや、祥子の容赦ないツッコミ。
セレスティアーナはその場で、フリーズしてしまった。
不遇な代王の虚しい心など知ってか知らずか、祥子とアイシャによる紹介はまだまだ続く。
「これだけでも十分リーズナブルなお買い得商品ですが、今回は更に、光条果物ナイフと光条回転式皮むき器をお付けします! これで林檎の皮も、栗の渋皮もイチコロですね!}
「祥子さん、もうひと声、いきませんか?」
セレスティアーナは全然駄目なのに、アイシャとの息はぴったり。
一体どういう訳だ、祥子さん。
「えぇい、仕方ない! それなら今回だけの超お得セットとして、光条万能包丁、光条果物ナイフ、そして光条回転式皮むき器をそれぞれもうひとつずつ、お付けしましょう!」
「まぁ、素晴らしい! これはもう、買わない手はありませんね!」
「受け付けは、今からです! 今、この瞬間から始まっております! お茶の間の奥様方、是非、この機会をお見逃しなく!」
* * *
中継車内。
彩羽は、カメラを再び特別仕様列車内に戻しつつ、たった今まで流されていた祥子のテレフォンショッピングを、モニター上で眺めていた。
その表情は、物凄く微妙である。
「……番組が終わっていきなり、揉めてるわね」
ADの『お疲れ様でしたー』という声がかかると同時に、モニター画面の中で、セレスティアーナが祥子とアイシャに猛然と食ってかかっているのである。
「まぁ、あれだけ公衆の面前でディスられたら、そりゃ喧嘩にもなるよね」
素十素の冷静な分析に、彩羽はやれやれと小さく肩を竦めるばかりである。
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