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変態紳士の野望

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変態紳士の野望

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三章 溶ける理性と服

 秘密基地では様々な出来事が発生していたが、その間にもラマンウィルスはヴァイシャリーを蝕んでいく。
 そんな状態に陥っていることも知らず、地下商店街から戻った広瀬 ファイリア(ひろせ・ふぁいりあ)ウィルヘルミーナ・アイヴァンホー(うぃるへるみーな・あいばんほー)は周囲に誰もいないことに不信感を抱いた。
「なんで誰もいないです? それに……あの霧は……?」
 ファイリアは不思議そうにピンク色の霧を見つめていると、突然風向きが変わり霧がファイリアとウィルの身体を撫でると、じわり……と服が溶けて胸がはだけてしまう。
「はわわ!? ふ、服がとけちゃったです! どうしたらいいのですー!?」
 ファイリアは混乱しながら胸を隠してしゃがみ込むが、やがて服は徐々に溶けていき、脇腹まで露出すると、しゃがみ込んだせいで膝に潰された胸が横から見えてしまった。
 外気に肌が晒されてファイリアが顔を真っ赤にしていると、ウィルはファイリアの身体を隠すように抱きついてきた。
「大丈夫です! ファイリアさんは私が守りますから……うう、でも、誰かが来たら私の体をじろじろ見られる羽目になりそうで……は、恥ずかしすぎます!?せめて、どこか隠れないと」
 ウィルが隠れられそうな場所を探そうと周囲を見渡すと、その視線は一点に奪われた。
 だが、その視線を奪ったのは場所ではなく、人。
 全裸の男たちの集団だった。
「な、なんですかあの人たちは!? あ、あんな堂々と街を歩いて……これじゃ私達、いいようにされかねないじゃないですか!?」
 ウィルがファイリアを抱きしめると、男たちは二人の存在に気づいてニヤリと笑みを浮かべた。
「へへ、あんなところで縮こまってる子がいるぜ」
「可愛そうに服が溶けたんだ。俺たちで保護して、裸は恥ずかしいことじゃないんだと教えこむか」
 男たちは下卑た笑い声を上げながらファイリアたちに近づいていく。
 と、
「そこまでにしとけ」
 そう声をかけたのは火炎放射器を構えた大洞 剛太郎(おおほら・ごうたろう)だった。
 剛太郎は容赦なく火炎放射器で変態たちを焼き払う。
「うおおおおお!?」
「全裸の男を火にかけるとは……俺たち以上の変態か!?」
「やかましい! その口がきけなくなるまで燃やしてやろうか!」
「て、撤退だ! 一度秘密基地まで逃げるぞ!」
 変態たちは炎から逃れるように逃げ出した。
「やれやれ、コーディリアがゴネたおかげで遅れたが、思わぬ人命救助に出くわしたな」
 剛太郎に言われ、コーディリア・ブラウン(こーでぃりあ・ぶらうん)は唇を尖らせる。
「だって……服が溶けたら恥ずかしいじゃないですか。それに人助けもできたし、ここの除染もある程度した方がいいと思いますけど?」
「確かにな……と。それより、あんたたち、大丈夫か?」
「た、助かりましたです〜!ありがとうござい……はわーっ!? み、見ないでくださいですーっ!? 恥ずかしいですー!」
 ファイリアは顔を真っ赤にして必死に身体を隠すと、剛太郎も黙って背を向けた。
 その様子を見て、鮎川 望美(あゆかわ・のぞみ)はため息をつく。
「服だけを溶かすウイルス……聞いたときは半信半疑だったけど。もう疑えないわね。それにしてもバカなものを作ったわね……ほら、また来たわ」
 望美が指さした方角からゆっくりと霧が近づいてきた。
 それを見て剛太郎は二人に指示を飛ばす。
「周囲の霧を炎で除染しながら被害者二人を近くの服屋に避難させる。その後で秘密基地に向かうぞ!」
 剛太郎が火炎放射器を霧に向けると、
「いやああああああああああ!」
 少女の悲鳴が聞こえた。
 だが、その悲鳴には歓喜のような何かが混じっているように剛太郎は思った。
 火炎放射器を下ろして、声のした方を見ると常葉樹 紫蘭(ときわぎ・しらん)が恍惚とした表情を浮かべて、ネージュ・フロゥ(ねーじゅ・ふろう)樹乃守 桃音(きのもり・ももん)ディアーヌ・ラベリアーナ(でぃあーぬ・らべりあーな)の三人を見つめていた。
 服は全員溶けてしまったようだが、ネージュはボディペイントを施し、桃音とディアーヌは大きな絆創膏で大事な部分だけえを隠していた。
 三者三様で恥じらいの表情を浮かべているのを見て、紫蘭の興奮も最高潮に達そうとしていた。
「お洋服が溶けてすっぽんぽんになるウイルス、なんてマーベラスなのっ! グレイトなのっ!? ああッ!! 幼児ちゃんのぱおーんと花妖精ちゃんのぽぽぽぽーん、ちっちゃぷにっぷにで可愛いですわ!! もうわたくしクリティカルヒット!鼻血が火山でボルケーノ状態ですわ! まさに理想郷が目の前で展開して……ハァ、ハァッ…指でぷにぷにとしたいですわ!」
 狂気の沙汰。
 それ以外の表現が見つからないような大演説を発し、目を血走らせている紫蘭の姿を見て桃音はネージュの後ろに隠れた。
「し、しらんお姉ちゃん怖いよ!」
 桃音は恥ずかしそうに震えると、その姿を見てさらに紫蘭の息づかいが荒くなっていく。
 ネージュはなんとか落ち着かせようと紫蘭に声をかけた。
「お、落ち着こう紫蘭ちゃん。目が怖くなってるよ? 深呼吸して……少し落ち着こう……ね?」
「はあ……はあ……はあ……」
「それは深呼吸じゃないよ!? 鼻血も出てるよ!」
 全く落ち着く様子のない紫蘭を見てディアーヌはネージュに声をかけた。
「ねじゅお姉ちゃん……今はしらんお姉ちゃんから離れたほうがいいよ……。冷静になるまでボクたちの姿を見せない方が……」
「そっか、そうだね……。紫蘭ちゃん、紫蘭ちゃんが落ち着くまであたしたちは隠れてるから、落ち着いたらまた再開しよ?」
「いやですわ! わたくしは今すぐお三方をぷにぷにしてなでなでしたいんですの! ……ああ、言葉にしたら歯止めがもうきかなくなりそうですわ……三人とも今すぐわたくしと一緒にぷにぷにしあいましょう!」
 紫蘭はそう言うと三人に向かって全力ダッシュを仕掛けた。
 三人はそれを見るやすぐに身を翻して全力で逃げ出す。
「わー! 紫蘭ちゃん、ちょっと落ち着いてー!」
「断固お断りしますわ! さあ、三人とも今すぐわたくしと絡み合いましょう!」
「し、しらんお姉ちゃんが壊れた……」
「桃音、振り返っちゃダメだよ! 今は逃げないと!」
 三人は必死の形相で逃げ、紫蘭は至福の表情でそれを追いかける。
 そんな様子を見た剛太郎はため息をつく。
「あれは……助けた方がいいのか?」
「いいでしょうね。追いかけてる子はともかく、追われてる子は泣きそうだもの」
「は、はやく助けてあげましょう!」
「仕方ねえな……。あの四人も保護してから作業を開始するぞ」
 剛太郎はやれやれとため息をつきながら追いかけっこをしている四人に接近していった。