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第一章 小さな日常

 「みなさん、こんにちは」
 元気の良い声が聞こえた。パラミタからの生徒たちを出迎えたのは、黒山高校の生徒会長だった。
 模範的な型通りの説明を行い、生徒会長は校舎の中を一通り案内していく。
(ふーん……地球の高校は何処も同じようなものだね……)
 は見慣れた光景にため息を漏らしつつも、生徒会長の声に耳を傾けた。
「我が校は設立16年と歴史も浅いのですが――」
 

 「以上で黒山高校の校舎の案内を終わります」
 1時間ほど時間を掛けて、校舎を巡り終えると生徒会長は会議室へと案内をした。
「明日からみんなと一緒に授業を受けてもらうことになりますが、楽しんでいってください」

 ある日の午後のこと。
 強くなった日差しを遮る校舎の日陰。
「急な話で悪かったな……」
 杜守 柚(ともり・ゆず)は昼食を終え、馬場校長から話があった交換留学について高円寺 海(こうえんじ・かい)から説明を受けていた。
「でも交換留学なんて……私は……楽しみかな」
 恥ずかしそうに柚は海に返事を返した。
 夏に届かない季節の風は肌に心地良い。柚の髪が揺れる程度に常に流れ続けていた。
「そう言って貰えると助かる……」
 海の表情が小さく笑みを作った。
「……楽しみだね」

 「まあ、何も起きないだろうね」
 帰宅した柚に杜守 三月(ともり・みつき)からそんな声が掛けられた。
「当たり前よ。だってただの交換留学なんだから」