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タケノコノキノコノ

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タケノコノキノコノ

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4.更なる襲撃

 キノコ党を撃退し、戦いは終わった――かに見えた。
 しかし、それだけでは終わらなかった。
「くしゅん!」
 最初の異変は、佐々布 牡丹だった。
「あ、あれ? どうしたんでしょう……?」
 体中を抱き締めるように腕を回し、もじもじもじ。
「なんだか、体がくすぐったいです」
「くしゅん!」
 つられた様に、レナリィ・クエーサーももじもじもじ。
「タケノコ……んー、タケノコぉ……」
 身長32センチのレナリィは、自分の背丈と同じくらいのタケノコに抱き着いてすりすりする。
「はくしゅん!」
「くしゅん!」
 タケノコ狩りの面々から、くしゃみの音が聞こえだす。
 そう。
 戦場となったこの場には、パラミタクヤシイダケの粉末やクスグッタイダケの胞子が飛び散ってしまっていたのだ!
 更に更に、新たな問題がやって来る。
「フハハハハハハ! 秘密結社、スギノコ党参上!」
 ドクター・ハデス(どくたー・はです)が怪しい機械と共に現れた。
「この業界を制するのは、キノコ党でもタケノコ党でもない。我らスギノコ党だ!」
 高らかに名乗りを上げる。
「スギノコ……?」
 ざわり……ざわり。
 ハデスの宣言に、その場にいた面々は顔を見合わせる。
「マスター、スギノコって、食べられましたっけ?」
「いやー、キノコやタケノコは食べれるけどなあ」
「ジャンルが違いますよね」
「一応、スギノコとはヤマメという魚の異名だそうですが」
「やっぱりジャンルが違うねえ」
 訝しげにハデスを見る。
「……えぇえい、やかましい! 我らスギノコ党のアイテム、『パラミタスギ花粉』をくらえ!」
 ハデスは黄色い粉をぶちまける!
 実はこれはただの粉。
 しかし運の良いことに? その場にはクヤシイダケやクスグッタイダケの胞子が充満していたため、何の効果でくしゃみが起きているのか分からない。
「は……っくしょん!」
「くしゅん!」
 外見的にはなんとなーく効いたような感じになってしまっている。
「今だ、さあ行け、我が発明品『スギノコマシーン』よ!」
 ハデスは傍らの怪しい機械、スギノコマシーンことハデスの 発明品(はですの・はつめいひん)に命令する。
 本体の周囲に、トゲ状の突起のついた金棒のようなアームを多数装備したスギノコマシーンは、低い起動音と共に動き出す。
「たーげっと確認。コレヨリみっしょんヲオコナイマス」
 スギノコマシーンが定めたターゲットとは……
「え? わ、私ですか?」
「お、お姉ちゃん……」
 ハデスに同行していた高天原 咲耶(たかまがはら・さくや)アルテミス・カリスト(あるてみす・かりすと)だった。
 咲耶の手には、可愛らしいバスケット。
 彼女は、ハデスがキノコとタケノコ“狩り”に行くと聞いたのでお弁当を作って来たのだ。
 そう認識してしまった時点で見通しが甘いと言わざるを得ないのだが……
 しかし彼女の持つお弁当バスケット。
 その中身が何故かうにゅるうにゅると蠢いている所を見ると、彼女もある意味恐ろしい技能を持っているようだ。
 それはそれとして、スギノコマシーンが二人に襲い掛かる。
「あぁああああんっ!」
「いやぁああああっ!」
 スギノコマシーンの突起が、彼女たちの大切な部分を刺激する。
 肩、背中、腰……そして太腿を経由し、足の裏へ。
「あっ、そこは……んっ」
「やっ……は、き、気持いい……」
 最初は抵抗を見せた二人だが、次第に自身の感覚を誤魔化せず素直になって行く。
 そう。
 スギノコマシーンは、マッサージしていたのだ。
 凝った彼女たちの体を。
「まっさーじヲ終了シマシタ。次ノたーげっとニ向カイマス」
「は、ぁん……」
「よ、よかったです……」
 身体中をほぐされくたりと力なく横たわる二人を置いて、スギノコマシーンは再び動き出す。
「きゃあっ!」
「ひゃん!」
 次なる犠牲者は、牡丹とレナリィだった。
 スギノコマシーンのツボ押し突起が、牡丹の体の凝りを発見する。
「ここカ? ここガイイノンカ?」
「あ……はうっ、い、痛気持ちいい……」
 肩を揉まれ悶絶する牡丹。
 レナリィは小さすぎる身体を突起で全身マッサージ。
「うぅううう……こ、こんなのはじめてぇ……」
 ぷるぷる震えながら呟く。
 更にスギノコマシーンは攻撃の手を広げていく。
「えっ、な、何っ!?」
「あぁっ、止めてください……っ」
 コーディリア・ブラウンと芦原 郁乃にもアームは伸びる。
「オ客サン、大分凝ッテマスネー」
「あぁ……す、すみませんすみません……」
「肩ハソレホドデモナイノデ、足イキマスネ」
「くうっ、ど、どうせ胸で肩凝りなんて夢のまた夢よ……!」
 それぞれの反応を見せながら、揉まれていく。
「危ないっ、フレイ!」
「マスター……」
 フレンディスにもその魔の?手を伸ばそうとしたスギノコマシーン。
 しかし間一髪、ベルクがフレンディスを抱きかかえ、避ける。
「ま、マスター、ありがとうございます……」
「いや、フレイが無事で何よりだ」
 お姫様抱っこされたまま、感謝の瞳でベルクを見上げるフレンディス。
 一方ベルクはといえば。
(フレイが無事で良かった……けど、何だこのどこかガッカリした気持ちは?)
 フレンディスは怪しい機械に手出しされることなく、無事。
 ああでも俺は本当は彼女が酷い目にあってあんあん悲鳴を上げる所が見たかったっていうのか!?
 自分も巻きこまれてラッキーハプニング☆ を期待していたっていうのか!?
「マスター? マスター、どうしました……?」
「うぉおおお……フレイ、すまない……」
 気づいてしまった自身の欲望。
 がくりと地面に頭と膝を付け、苦悩の声を漏らすベルクだった。

 被害は、スギノコマシーンによる攻撃だけに留まらなかった。
「た、タケノコだけは守らなきゃ…… あっ」
 キノコ党が攻撃してきた時から、一人、大事なタケノコを取られまいとカゴを背に守り続けていたのは遠野 歌菜。
 そんな彼女に、異変が起きていた。
「あ、や、やだ…… くすぐったい……」
 体中をもぞもぞさせる。
 彼女の全身は、クスグッタイダケの胞子に浸蝕されてしまっていたのだ。
「歌菜、どうした?」
 月崎 羽純が心配そうに近寄る。
 そしてはっと立ちすくむ。
 顔を赤らめ衣服を緩め、苦しそうに汗をかいている歌菜の姿を目の当たりにして。
「あ、は、羽純くん駄目ぇ……み、見ないで……」
「あ、う、歌菜……」
「う、ううん…… 見て……」
 歌菜の口調が変わった。
 彼女は、パラミタクヤシイタケの影響まで受けてしまったのだ。
「くすぐったいの、たすけて……」
 歌菜は、羽純を甘えるように見上げる。
「助けてって……」
 羽純は困惑しながら、歌菜に手を伸ばす。


「く……あ、は……っ」
 クスグッタイダケの脅威は広がっていく。
 主に(絵面的な問題で)女の子にしか攻撃していないスギノコマシーンと違い、胞子は男女関係なく襲い掛かってくる。
 それは、神楽坂 翡翠も例外ではなかった。
「あ……な、く……っ」
 一人、悶絶する翡翠。


「エース、こっちにおいで」
「……一体どうしたんだ?」
 メシエ・ヒーヴェリアルはエース・ラグランツの手を引き、騒動からほんの少し離れた場所まで移動させる。
「ここは風上だからね。怪しいキノコの胞子も届かないよ」
「あ……」
 そこで、エースはやっと気づいた。
 どうやらメシエが自分を守ってくれたことに。
「あ、メシエ、ありがとう……」
「礼には及ばないよ」
 感謝の気持ちを伝えようとするエースを笑顔で遮る。
「君に変な物混ぜられて、味が濁るといけないからね」
「味……?」
「そう。たまには、君の生血を飲みたくなってね」
「メシエ……」
 エースの首筋に、メシエの唇が近づく。


「はぅ……ん」
「サニーさん、しっかり!」
 スギノコマシーンからは逃れられたものの、ばっちり胞子の影響を受けたサニー・スカイ。
 柚や弟たちは安全な所に避難させたものの、僅かに出遅れてしまったサニーを杜守 三月が隣りで支える。
「ひとまず、ここから離れよう。そうしたら変なキノコの影響もなくなるだろうから……っ」
 少し離れた丘を指差す三月。
 その、指差した腕が下される。
 サニーが、三月の腕を掴んだのだ。
「サニーさん?」
「……嫌、なの……」
「どうしたの?」
「今までと、同じじゃ嫌……」
「何、が……」
 言いかけて三月ははっとする。
 サニーの顔は赤く染まっていた。
 真っ直ぐ三月の顔を見たまま。
「せっかく…… だもん……」
「サニーさん……」
 三月は、気づいた。
 少し前に、三月が彼女に言った言葉『今までと同じでいいから』。
 どうやらあれを、彼女は気にしていたらしい。
 パラミタクヤシイタケの影響で垣間見られた彼女の本音なのだろうか。