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秋の 大 運 動 会 !!

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秋の 大 運 動 会 !!

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第一話  秋の大運動会、開催!



 



『集まったみたいだな、てめえら!』


 マイクを持ったMCが、空京スタジアムに集まった人々を前に演説をしていた。


『秋と言えばなんだ!? 芸術の秋か? 読書の秋か? 温泉に紅葉、いろいろあるなあ! でも今日は違う……今日はな、スポーツの秋だっ!』


「いえー!」


 一部客席から声が上がる。どうやらサクラのようだ。
「無理やり盛り上げてるって感じだなあ」
 ハイコド・ジーバルス(はいこど・じーばるす)は演説をしている主催者代表を見て言う。
「まあ、前座としてはいいんじゃないかな」
 近くにいた九条 ジェライザ・ローズ(くじょう・じぇらいざろーず)はそう口にした。
「ロゼさんは今回も、ケガ人が出た時のために控えているんだっけか?」
 ハイコドが振り返る。ロゼは赤い十字の入ったユニフォームを着ていた。
「まあね。今回も裏方だよ。ハイコドも手伝いかい?」
「バイトがてら、手伝いもちょっとな。一応、白組で、何種目かエントリーしてる」
 ロゼが答えると、ハイコドはそのように答える。
「そうかい。無理はしないで。もし、怪我をした場合は、」
 ロゼは懐から注射器とメスと点滴を取り出した。
「徹底的に治療するからね」
「使わないでしょ、そんなもの」
 少し引いているハイコドに変わって、冬月 学人(ふゆつき・がくと)がロゼの後ろから声をかける。
「いや、ほら、血みどろの乱闘戦になったときのことも考えて」
「ならないよ……普通にただの運動会だから」
 学人は息を吐いた。今は落ち着いているのだが、そのうちどうなることやら。ローズはたまに暴走するからなあ、と、心の中で考える。
「問題を起こさないようにしてくれよ」
「努力するよ」
 ハイコドの指摘に、学人は肩をすくめてそう口にした。


『そして、今回はゲストとして、ろくりんピックでも活躍をした名解説、財団法人パラミタオリンピック委員会理事の、キャンディス・ブルーバーグ(きゃんでぃす・ぶるーばーぐ)さんが来てくれたぜ!』
『みんな、よろしくネ〜』
 見た目的には着ぐるみかなにかにしか見えないキャンディスがMCの横で手を振る。


「あれ、大丈夫なのかな?」
「……ああー、なんか無理やり実況席に座り込んで自分が解説をすべきだと言って聞かないから採用することにしたんだって」
 ロゼとハイコドが少し小声で話す。
「ろくりんピックのときも解説してたみたいだから、大丈夫なんじゃない?」
 学人が付け足した。
「ま、それならいいか」
 ハイコドが言う。言うが、ルックス的にも不安をぬぐい去れなかったことは秘密にしておいた。


『よし、それじゃあお前ら、こっちが紅組、こっちが白組だ! それぞれ、所定の位置で待機するように! それでは、』


『 開 幕 だ ! 』


 MCがとても上手とは言えない締めで言った。まばらな拍手のあと選手たちがそれぞれ散っていき、そして、運動会が始まった。




 選手登録表

 紅組

 
 ・

 ・

 ・白波 理沙(しらなみ・りさ)

 ・チェルシー・ニール(ちぇるしー・にーる)

 ・セレンフィリティ・シャーレット(せれんふぃりてぃ・しゃーれっと)

 ・セレアナ・ミアキス(せれあな・みあきす)

 ・桜葉 忍(さくらば・しのぶ)

 ・織田 信長(おだ・のぶなが)

 ・桜葉 春香(さくらば・はるか)

 ・遠野 歌菜(とおの・かな)

 ・月崎 羽純(つきざき・はすみ)

 ・酒杜 陽一(さかもり・よういち)

 ・葛城 吹雪(かつらぎ・ふぶき)

 ・

 ・



 白組

 ・

 ・

 ・綾原 さゆみ(あやはら・さゆみ)

 ・アデリーヌ・シャントルイユ(あでりーぬ・しゃんとるいゆ)

 ・風馬 弾(ふうま・だん)

 ・エイカ・ハーヴェル(えいか・はーゔぇる)

 ・白石 忍(しろいし・しのぶ)

 ・リョージュ・ムテン(りょーじゅ・むてん)

 ・黒崎 竜斗(くろさき・りゅうと)

 ・黒崎 ユリナ(くろさき・ゆりな)

 ・リゼルヴィア・アーネスト(りぜるゔぃあ・あーねすと)

 ・ハイコド・ジーバルス(はいこど・じーばるす)

 ・

 ・


 黒組
 
 ・ドクター・ハデス(どくたー・はです)
 
 ・ヘスティア・ウルカヌス(へすてぃあ・うるかぬす)





「……ん? 黒組?」
 セレンフィリティ・シャーレット(せれんふぃりてぃ・しゃーれっと)は名簿を眺めて首を傾げる。
「これは……」
 セレアナ・ミアキス(せれあな・みあきす)も名簿を見ていた。嫌な予感に、先ほどまでMCが立っていた場所を見る。
 そこに案の定、知った顔が立っていた。


『フハハハハ!』


 マイクから聞きなれた高笑いが聞こえてきて、セレンたち二人は頭を抱えた。
「ハデスさん……また」
 彼の知人である綾原 さゆみ(あやはら・さゆみ)も息を吐く。
「いつもお元気そうでなによりですわ」
 アデリーヌ・シャントルイユ(あでりーぬ・しゃんとるいゆ)ものんきにそう口にした。


『フハハハ、我が名は天才科学者、ドクター・ハデス!』


「あの人……今度はなにをするつもりだよ」
 酒杜 陽一(さかもり・よういち)も険しい顔をして口にする。

『フハハハ! 運動会の会場は、我らオリュンポスが乗っ取った! この運動場を、我らの世界征服の第一歩としてくれるわ!』


「乗っ取った!?」
「ふえぇぇぇ?」
 黒崎 竜斗(くろさき・りゅうと)黒崎 ユリナ(くろさき・ゆりな)も声を上げる。


『おっと、逃げることは許されないぞ! さあ、戦闘員たちよ、選手たちを拉致するのだ!』


 ハデスが叫ぶ。ある者たちは身構え、ある者たちは怯えてしゃがみ込んだ。
 ……が、彼の後ろに控えていた戦闘員たちは、一人たりとも動かなかった。


『……って、あれ? どうしたのだ戦闘員、選手たちを……』


 ハデスが振り返る。戦闘員はいつもの通り黒づくめだが、いつもとなにか違う。
 彼らは、黒いジャージを着用していた。


「ヘスティア様の命令ナノダー! 今日は応援するナノダー!」
「ナノダー!」


 ポムクル戦闘員と呼ばれる、体長10cm程度の可愛らしい人形のような小人が口にする。その見た目に、可愛いという声が至るところから漏れた。


『いったいこれはどういうことだ! ヘスティア!』


「はい、ご主人様……じゃなかったハデス博士。運動会の制覇のため、全種目にハデス博士の名前でエントリーしておきました。えっへん」
 戦闘員とともに並んでいたヘスティア・ウルカヌス(へすてぃあ・うるかぬす)が胸を張って言った。


『は……?』


「ハデスー、これー」
 セレンが大型の掲示板を指差す。そこには組分けの表と、種目別参加者一覧が書かれている。
 ハデスの名前は、全種目にエントリーされていた。


『……って、なんで、この俺が試合に出ることになっているのだっ!』


「はい! 全種目制覇というご命令を実行したまでであります!」


『なん……だと……』


 ハデスの体が揺らいだ。

「ハデスさん、最初の種目は短距離走だから、あっちがスタート地点ね」
 ハイコドが現れてそう口にする。ハデスは口をパクパクと動かす。
「それでは、ヘスティアは応援していますので、頑張ってくださいね、ハデス博士っ」
 ヘスティアは笑顔でそう口にして、戦闘員たちを引き連れて観客席へ。すでに観客席にも別の戦闘員たちがいて、席の確保をしていた。


『なんじゃそりゃーっ!!』


 ハデスがマイク越しに叫んだ。キーン、という不快な音が会場中に響いた。