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巨大虚獣撃退作戦!

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巨大虚獣撃退作戦!

リアクション

「邪魔するね!」
 と、そこに飛び込んできたのはセレンフィリティ・シャーレット(せれんふぃりてぃ・しゃーれっと)操る量産型の虚狩人だ。ゴッドスピードで機動力を上げて、エイミングの力を借りたサンダーショットガンの一撃を虚獣に叩き込む。シルフィスティを狙っていた虚獣は頭蓋を打ち抜かれ、その場にのけぞる。
 丁度その時、リカインが大地に刺さったケーブルを繋ぎ直した。システムが復旧し、シルフィスティの機体は自由を取り戻す。
 はっ、と気合い一発、手にした武器を振るうと、虚獣の身体は上下に切断された。
「助かったわ」
「油断は禁物、次行くよ!」
 シルフィスティの無事を確認したセレンフィリティは、パートナーのセレアナ・ミアキス(せれあな・みあきす)に合図を送り素早く合流する。
 セレンフィリティとセレアナの二人は、お互いの死角をカバーできるよう、ツーマンセルを組んで小型の虚獣に向き合う。
「小型、とは言ってもやっぱり大きいわね」
「あっちの邪魔にならないよう、キッチリやっつけないと!」
 あっち、とセレンフィリティが目で示した先では、巨大な虚獣二体相手に戦闘を繰り広げているプロトタイプ虚狩人やイコンたちの姿がある。
 巨大なタイプの虚獣と並べれば、今セレンフィリティ達が切り結んでいる相手は確かに「小型」だが、しかしそれでもイコンほどの大きさがある。巨大虚獣と戦っている間に割って入られては面倒だろう。
 二人はディメンションサイトで辺りの空間を把握して、ケーブルが引っかからないように気を配り、さらに女王の加護を受けて守りを固める。
「セレアナ、援護して!」
 一体の虚獣に素早く近づくと、メンタルアサルトを仕掛けて攪乱する。素早さが高められていることと相まって、虚獣は二人の動きを捕らえきれないようだ。
 さらにセレンフィリティが行動予測によって虚獣の動きを読む。先回りして攻撃を仕掛ければ、相手は行動範囲を狭められる。
 そこへセレアナが放ったサンダーブラストが命中した。肉の焦げる臭いがして、虚獣が一体、地面に倒れ伏す。

「小型虚獣、二体撃破を確認したよ!」
 その様子を上空で捉えていたのは、佐野 和輝(さの・かずき)アニス・パラス(あにす・ぱらす)の乗るイコンブラックバードだ。飛行形態を取り、戦闘には参加せず情報収集に専念して居る。
「やっぱり、みんなヒモつきだから思うように戦えてないみたい。撃破ペースが遅いなぁ」
 アニスが情報を分析して和輝へ伝えると、和輝は通信回線を開く。
「こちら管制。小型虚獣二体撃破。残りは八体が確認されている。今のところ『穴』からの新たな出現の気配は無い。」
 予め根回しをしてある各人へ、上空から収集できる情報を迅速に伝える。
『こちら【アンシャール】、パイロット遠野です。前線へ出て囮になります』
 和輝からの通信を受けて返答してきたのはイコンアンシャールを駆る遠野 歌菜(とおの・かな)だ。
「了解した。東方面に小型虚獣が多い。東方面へ向かってくれ」
『了解しました』
 和輝からの指示を受けた歌菜は、同乗するパートナー月崎 羽純(つきざき・はすみ)とアイコンタクトを交わして、アンシャールを発進させる。武器にケーブルがくっついているため、派手な立ち回りはできない。
「歌菜、右方向に注意しろ」
「うんっ!」
 羽純が殺気看破と行動予測で安全なルートを確保しながら、二人は敵のど真ん中へと突っ込んで行く。派手に立ち回れない分、出来るだけ動かず、目立って囮になろうという作戦だ。
 襲いかかってくる虚獣達の攻撃、高速機動を使い最小限の動きで躱す。
 そうして充分虚獣達を引きつけたところで、イコンに搭載した対虚獣用の特殊兵装をアンシャールに構えさせる。連射は効かない。充分に狙いを定めて、一撃を放つ。
 どん、と重厚な反動がイコンの機体全体を襲った。
 充分な威力を持つ一撃は、周囲に居た小型の虚獣一体を直撃する。完全には沈黙しないものの、しかし大きなダメージを与えられた虚獣はその場に倒れる。
 すると、その一撃を脅威と感じたか、他の虚獣達が一斉にアンシャールに襲いかかる。だが、イコンに搭載した対虚獣兵器は連射が出来ない。
「上だ、歌菜!」
 羽純が殺気を捉えて指示を出す。素早く歌菜はアンシャールを飛び上がらせた。間一髪、足下を虚獣の巨大な尾が薙いでいく。
 と、尾を振り回した虚獣が、急にバランスを崩して倒れた。その向こうには、紫月 唯斗(しづき・ゆいと)エクス・シュペルティア(えくす・しゅぺるてぃあ)が乗るプロトタイプ虚狩人の姿。
「背中ががら空きだ」
 倒れた虚獣の急所を確実に狙い拳を叩き込むと、小型虚獣は完全に沈黙した。でろりと表皮が溶けていく。
 虚獣一体を屠った唯斗達は、すかさず次の一体へと向かう。
 その間に体勢を立て直した歌菜達もまた、別の一体へと狙いを定める。
「どうだエクス、機体の具合は」
「うむ、そろそろ良いぞ、唯斗。全力で行け」
 今まで唯斗の動きに合わせて機体を調整していたエクスだが、目処が立ったらしい。唯斗からの問いかけに、ゴーサインで応える。
「よし……」
 それを受けた唯斗は、獲物を狩る目でぺろりと唇を舐める。そして、目の前の虚獣にしかと狙いを定めた。連発は出来ない大技だ。ひゅっと鋭く息を吐き出して集中を高める。
「叩きのめせ!」
 脳内に巨大な拳をイメージして、命令を発する。
 命令は物理的な力と化して虚獣を襲う。インペリアルイディクトのスキルだ。唯斗のイメージはアウタナの力を得て、虚獣に襲いかかる。
 無数の拳様の力の塊に襲われ、さしもの巨体もその場に足を止める。唯斗はさらに虚獣との距離を詰める。
 そして、暗殺武術の奥義たる正中一閃突きの要領で、弱点を狙いすまし、今度は虚狩人本体の拳を叩き込んだ。表皮の継ぎ目の柔いところを抉るようにして、直接内臓にダメージを与える。
 うごおおお、と地響きのような断末魔の悲鳴を上げて、虚獣は大地に倒れた。