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学生たちの休日12

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キマクのクリスマス



「はははははは、ういやつなんだな」
 キマクの小洒落た酒場で、ブルタ・バルチャ(ぶるた・ばるちゃ)はクリスマスを満喫していました、気分だけは……。
「いやーん♪」
「ははは、おもしろーい。つんつん」
 ブルタ・バルチャの両隣にいる女の子たちが、嬌声をあげながらしなだれかかってきます。モデル風の美人な女の人と、ちょっと小悪魔風の可愛らしい女の子です。
 それにしても、なんで、ブルタ・バルチャがクリスマスにもてているのでしょうか。
「ふふふ、これがリア充の気分なんだな。……たいしたことないかな?」
 正直、ブルタ・バルチャの感覚では、リア充というのはさっぱり分かりません。分かる必要もないとは思うのですが、まあ、体験してみれば何か分かるかもしれません。ということで、お金の力を借りてみました。この二人は、レンタル彼女なのです。
 で、恋人がいちばーんと、リア充共は叫んだりしますが、それって自分より上と言うことになるわけです。自分より上の存在があるのかと、それが納得いかないと言うよりは、想像すらできないブルタ・バルチャなのでした。
 とりあえず、お金で呼び寄せた女の子たちと、後腐れのない遊びをしてみます。
 まあ、お酒を飲んでも飲まされているというか、お金を払っているのにこちらからサービスするというのもおかしなものです。話をしても当たり障りがありませんし、無難が最高というわけでは決してないでしょう。なんだか、ちょっとむなしいかもしれません。
「ねえ、次はどこへ行くのー」
「あー、どこか行きたーい」
 お酒に飽きたのか、女の子たちがブルタ・バルチャにねだります。
 さてさて、キマクで遊びに行くとすれば、最近トレンドなデートスポットである、ドラゴン牧場でしょうか。近くには競竜場もありますし、博打に興じるというのはキマク流の大人の遊びです。まあ、キマク以外では、ダメな大人の遊びかもしれませんが。
 あるいは、商店街でのショッピングでしょうか。いろいろと怪しい物――珍しい物が売っています。きっと、若い女の子にはお似合いな物が……あるのでしょうか?
 後は、アトラスの傷跡の宇宙港の近く、最近できたという遊園地の展望台に上って、星空をながめるということぐらいですが……。あそこなら、恐竜騎士団も関わっていますから、自分の庭のようなものです。
 まあ、クリスマスですから、お星様がらみでもいいでしょう。
 ということで、ブルタ・バルチャは女の子たちを連れてアトラスの傷跡に行くことにしました。
「これに乗っていくんだな」
 そう言って、ブルタ・バルチャがキュッヘンシャーベを店の前に回しました。平べったい黒光りしたウォーストライダーです。一人乗り用なので、イコンホースで追加座席を作って引っぱるようにしています。まあ、見た目はあまりいいものではありませんが、走りはしっかりしています。
「きゃー、すてきー」
 さすがは女の子たちもプロです、気持ち悪いウォーストライダーでも、ちゃんと喜んだふりをしてくれます。
 カサカサカサっと荒野を移動していくと、できたばかりの遊園地が見えてきました。
 目玉はフィールドカタパルトを利用したジェットコースターですが、その他にもいろいろとアトラクションがあります。鋭意追加中です。
 一応いくつかのアトラクションを女の子たちと一緒に乗った後、ブルタ・バルチャは展望台へとむかいました。
 エレベータで一気に上りきると、そこは満天の星空に一番近い場所です。まあ、アトラスの傷跡の頂上の方が実際には近いわけですが。
「あ、流れ星なんだな。お願い事するんだな」
 流れ星を見つけて、ブルタ・バルチャが言いました。
 ――どうか、年末開催のパラミタ競竜で大穴が当たりますように。どうか、パラミタジャンボ宝くじで一等賞に当たりますように。
 結局、あまり意味のなかった今日一日の出費が埋め合わせできるようにと、一心に祈るブルタ・バルチャでした。


ツァンダのクリスマス



「今日は楽しいクリスマス♪」
 軽く鼻歌を歌いながら、杜守 柚(ともり・ゆず)が、自宅の居間のクリスマスツリーに飾りつけをしています。
 パートナーも、今日はクリスマスデートでいません。自宅には、杜守柚一人きり……いえ、ちゃんとお客様が来る予定です。
 一人で飾りつけするのは結構大変ですが、楽しくもあります。
「気づいてくれるかなあ」
 さりげなくオオカミのぬいぐるみをツリーの枝に結びつけながら、杜守柚が顔をほころばせました。以前、高円寺 海(こうえんじ・かい)と一緒にゲームセンターに行ったときに、クレーンゲームで取ってもらった物です。なんとなく高円寺海に顔が似ていると、常々杜守柚が思っているぬいぐるみなのでした。はたして、高円寺海は、このぬいぐるみに気づいてくれるでしょうか。
 ちょっとした悪戯のような、さりげないメッセージのような、そんな気持ちで、杜守柚はぬいぐるみをツリーに結び終えました。
 壁にも電飾をキラキラと飾りつけて、お部屋の準備は完了です。
 後は、料理ですね。
 ターキーというわけにはいきませんが、鶏のもも肉を二本、いつでも暖められるようにしておいて準備オッケーです。
 ケーキは凝ってみようかなとも思いましたが、オーソドックスな生クリームにイチゴのホールケーキにしました。さすがに二人ですから、食べきれるささやかなサイズです。でも、ケーキの上の蝋燭と、マジパンのサンタさん人形は忘れません。
 飲み物はシャンパンと言いたいところですが、まだ未成年なので、クリスマス用のノンアルコールシャンパンです。
 とっておきは、やっぱりプレゼント。
 ちゃんとリサーチしておいたかいがあります。中身は、バスケット用のシューズです。高円寺海にピッタリではありませんか。
「そろそろかなあ……」
 姿見に自分の全身を映して、杜守柚がファッションの最終チェックをします。ちょっと大人っぽいドレスに、頭にはおっきな赤いリボンをつけています。杜守柚としては完璧のはずなのですが、何か見落としがないかちょっぴり不安でもあります。
「そろそろかなあ……」
 何度目でしょうか、杜守柚がまたつぶやきました。
 ぴんぽーん♪
 チャイムが鳴りました。
「はーい!」
 急いで、杜守柚が玄関にむかって走っていきました。勢いよくドアを開けます。
「こんにちは、今日は呼んでもらって、ありがとう」
 ドアのむこうには、高円寺海の笑顔がありました。