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パートナーの飯が不味いんだがもう限界かもしれない

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パートナーの飯が不味いんだがもう限界かもしれない

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■激マズ料理の取り扱い方■


 セレアナ・ミアキス(せれあな・みあきす)の携帯が着信を告げた。
 ラナからだと電話を取ると、必死な彼女の声が聞えた。
「セレンの腕を見込んでお願いしたいのです」
 話を聞くと、美緒がパーティにと料理を張り切っているとの事。
 美緒のメシマズ料理を、その上を行くセレンの殺人兵器級料理でごまかしたい、という事らしい。
 つまりは、美緒が自分の料理下手さを知って傷つかないよう、という配慮なのだろう。
 セレアナは快く承諾し、電話を切った。
「セレンの殺人兵器料理が、まさかここで役に立つとは……」
 そんな日が来るとは、と感慨にふける。
 しかし。ストレートにそう話しても、自分の料理の腕を信じているセレンフィリティ・シャーレット(せれんふぃりてぃ・しゃーれっと)がうんと言うとは思えない。
「セレン、パーティがあって美緒が料理をつくるそうだけど」
 どう話を持ちかけてものかとセレアナが携帯を置いて、セレンフィリティを見た所。
「ふふふ……やっとあたしの料理の腕を世界に披露する時が来たわね!」
 ワザワザ話持ちかけるまでもなく、ノリノリだった。
「止めても無駄よ! 美緒の超絶激マズ料理から皆の舌と胃袋を守るべく、教導団公認とまで言われた私の料理を披露して上げるわ!」
「確かに、ラナからSOSの電話を受けたけどね……」
 セレンフィリティの思い違いを直すのも難しい上に、折角ノリノリになっているのを止めるのも勿体無い。
「そうね、セレンの料理楽しみにしてるわ」
 にっこりと笑みを浮かべた恋人に、セレンフィリティはきょとん、と目を瞬かせた。
(いつもならなぜか「セレンの料理は私だけのものよ!」とか言って、人様にその腕を披露するのを禁ずるセレアナが……)
 思わず口を噤む。
 うっかり口にして、せっかくのOKが駄目になっては勿体無い。
「天才料理人たるセレン様の腕を存分に振るう時が来たわね!」
 楽し気に準備し始めるセレンフィリティの背中を複雑そうな表情で見るセレアナ。
 これでもう、止めようとしてもセレンフィリティは止まらないだろう。
 パーティ会場で美緒に向かうはずの悪評がセレンフィリティに引っ被せてしまう方が、世の為人の為、と、セレアナは自分も手伝おうと立ち上がる。
(ごめんね、セレン……でも、こうでもしないと自分の腕がどんなものか判らないでしょう?)
 心の中で謝るセレアナ。セレンフィリティの料理の腕を思い浮かべる。
 事実『教導団公認お料理兵器』『精神的ブラクラ』『ナラカ人殺し』とまで評される程の犯罪的料理下手なのである。
 なのに、何故か、本人は自分は天才料理人と信じ込んでいる。
 ――――今回も気付かないんだろうな、と、溜息をついた。