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ノクターン音楽学校2


「防音か……これ以上対策をするとなると、街からグラスウールでも買ってくるのが手っ取り早いわね」
 似たようなものが隣の街でも売られていたはずだとコルセア・レキシントン(こるせあ・れきしんとん)は言う。
「壁の間に詰めとけば防音だけでなく断熱にも使えるしね」
 壁の間にしきつめるといいんじゃないかとコルセアは言う。
「なら自分が買ってくるであります」
 トラックの鍵を取り出してそう言うのは葛城 吹雪(かつらぎ・ふぶき)
「それならこのあたりの材料も足りないみたいだから一緒に頼めるかしら」
 リストをまとめてコルセアは吹雪に渡す。
「木材を加工・工夫してある程度はカバーできるんだけど、そのあたりの資材は木材で再現しようとすると無理が出たり時間がかかるのよね」
 できる限り木材の建物という雰囲気を壊さないようそういった理念で進められる校舎作りだが、音楽学校として成立させるためにどうしても木材以外の材料が必要になっていた。
「了解であります」
 リストを受け取り了承する吹雪。
「しかし、こうなってくるとオーケストラが出来るような会場が欲しいであります」
 どうせやるならそれくらいとことんやりたいと吹雪は言う。
「……それくらい突き抜けてやるみたいよ」
 ほらと自分も手伝った校舎の設計図をコルセアは見せる。
「これは……本当に木造校舎なのでありますか?」
「らしいわね」
 校舎の設計図は一目見るだけで壮大だと分かる。本当にオーケストラをやれるような施設が校舎の中にできるた思っていなかった。
「……あの村長、たまにポカすると言うか……限度を忘れることあるのよね」
「それを叶えてしまうのが契約者のすごさでありますな」
 少しだけ得意げな吹雪。
「どちらかというと無茶苦茶さっていうのが正解ね」
 ひとつため息をつくコルセア。
「この会場で全員で合唱でもできれば楽しそうであります」
 そんな願いを思い浮かべながら吹雪は買出しへと出るのだった。



「これでよしっと……これなら冬でも暖かく過ごせて音楽に打ち込めるよね」
 校舎の床下に温泉水を通すパイプが通ったのを確認してネージュ・フロゥ(ねーじゅ・ふろう)はそう言う。
「天然の床暖房ですか……私一人では絶対に思いつきませんでした」
 ネージュの横に立つミナホは感心した様子でそう言う。
「校舎の総責任者を私ではなくネージュさんにお任せしたのはやっぱり間違いじゃなかったですね」
 今回の音楽学校作り。ミナホがそれを最初に相談した相手はネージュだった。そして肝心の校舎作り。それも自分より適任だろうとミナホはネージュに総責任者を任せていた。
 ……セレンの木を移植するという大事業を知らなかったのもけしてミナホが残念な村長であるからでh……あるからだけではない。
「……いい学校になるといいよね」
「大丈夫ですよきっと」
 これだけの人が手伝ってくれているんですからとミナホは言う。
「ちょっと大げさだけど……この学校はミナホとあたしの夢の結晶かな」
「はい。そして皆の夢です」
「……うん。そうだね」
 ミナホが夢を見て、それをネージュが手伝い二人の夢になった。そして今はニルミナスにかかわる者たちすべての夢だ。
「絶対にいい学校にしよう」
「はい……絶対に」


 そうして『ノクターン音楽学校』。その校舎は完成へと近づいていく。