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バレンタインは誰が為に

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バレンタインは誰が為に
バレンタインは誰が為に バレンタインは誰が為に

リアクション

 さて、場面は戻って空京。
 大暴れする暴徒達に、それに対抗してラブをアピールする者達の入り混じるそのバレンタインならではの戦場では、まだまだラブを見せ付けるために馳せ参じた者達によって、混乱を引き起こされようとしているところだった。

「まったくもう……なんだっていうのよ、もう!」

 その内の一人。苛立ちの混じる声を漏らしながら、空京を闊歩していたのは綾原 さゆみ(あやはら・さゆみ)と、その恋人のアデリーヌ・シャントルイユ(あでりーぬ・しゃんとるいゆ)だ。甘っ甘なバレンタインデーを過ごすべく、今日一日はデートのはずだったのだが、毎年恒例の「リア充爆発しろ!」が街を包んでいるのだ。手を繋いだりなどしようものなら、早速襲ってきた暴徒達によって、あっという間にチョコまみれになる始末である。
「うう……折角の服が、台無しですわ……」
 アデリーヌはデート用に用意していた自分の服の無残な光景に、涙でも流しそうなか細い声を漏らした。本当なら、ラジオで放送があった時点で安全な所へ逃げるか、家で引き篭もるかしておきたかったのだ。だが、それに対してさゆみの反応はデートの続行だった。
「こんなことでくじけてなんかられないわ。行きましょ?」
 恋人からそう言われれば、断るわけには行かない。伸ばされた手を取って、何とか恐る恐る着いてきてはいるものの、途中で襲ってきた暴徒達は恐ろしいし、何より。
「あ゛ぁ゛? ンか用?」
 文字通り相手を睨み殺さんばかりの勢いで、暴徒達をその気迫と、時に容赦の無いチョコレート攻撃で薙ぎ払うさゆみの迫力が、怖い。アデリーヌは今にも泣き出しかけないほど、怯えて涙目になってしまっている。
 だが、別にさゆみのほうも、恋人を怖がらせたくてこんなことをしているのではないのだ。
 何しろ、最愛の恋人は千年以上を生きた、そして後数百年は生きる吸血鬼であり、半面で自分は彼女の十分の一も生きられないのである。一瞬一瞬を無駄にはできないのだから、デートは強引にでも続行せねばならないし、暴徒達に邪魔をさせはしない。寧ろ、妨害する存在すらも自分たちの限られた時間のうちで紡がれていく愛の物語を、より燃え上がらせる存在でしかないのだ。
 不意に立ち止まったさゆみは、恋人の手をぎゅっと握り締めると「アディ」とその名前を熱っぽく呼んだ。
「アディ……私はあなたのように長く生きられない」
 その言葉に、アデリーヌが僅かに目を見開いたのに、さゆみは微笑んで見せた。
「でも、その事を不幸だなんて思ったことはない。だって、これから先、ずっとアディと一緒にいられるんだもの」
 確実に先に終ってしまう人生なら、逆を言えばその人生の中で恋人のいない時間は存在しない、ということでもある。終わりの時まで必ずアデリーヌは傍にいて、自分はずっと最後までアデリーヌの傍にいられるのだ。そんなさゆみの言葉に、強張っていたアデリーヌの顔が、少しずつ和らいでいくのに、さゆみはゆっくり顔を近づけて、ささやくように続ける。
「これからもこうしてずーっと……いつまでも変わらないままでいたい……好きよ、アディ」
 その言葉が耳に染みるにつけ、アデリーヌの心に広がっていくのは、周囲を覆うヘイトなどものともしないような愛情と幸福だ。それを言葉にするのはとても野暮ったいように思えて、アデリーヌは言葉の代わりにそっと肩を寄せた。それが、アデリーヌの返事だった。

(二人なら、地獄行きだって怖くない……)


 そんな二人の周りには、ヘイトを寄せ付けないラブの輝きに満ちていたのだった。
 尚、ここに来て邪魔が入らないのは、ヘイトの尖兵たちは各所で撃墜されたり自爆したりしているからである。

 とは言え、ヘイトの全体数が減ったかと言うと微妙な所で、何しろ巻き添えになるたびにヘイトは増えていく傾向にあるのだ。今もまだ減ったり増えたりを繰り返す中で、また別のひと組もまたその騒動の渦中へと足を踏み出していたのだった。


「今年もこうなる訳ね」

 そのひと組。セレンフィリティ・シャーレット(せれんふぃりてぃ・しゃーれっと)は盛大に溜め息を吐き出した。
 
 寒さにも負けず恋人とデートに繰り出したわけだが、懸念通り、大体毎年変わらぬ光景か広がっているのである。当然想定済みとばかり、セレンフィリティに引く気配は無いし、セレアナ・ミアキス(せれあな・みあきす)の方も予測の範囲内、と溜め息をついただけだ。だが、予測出来ていたからと言って安心出来るわけでもなければ、事態が解決するわけでもない。
「でもまぁ、攻撃がチョコレートだけっていうなら、平和なぐらいじゃない?」
 襲ってくるチョコレートが街を闊歩している光景が不気味と言う以外は確かに平和と言えなくもない、のだろうか。兎も角、ヘイトに呑まれた暴徒たちに屈してなるものかと言わんばかりに、二人はこれでもかとその扇情的な身体を寄せ合って街中を堂々と練り歩いた。
 負けないどころか、見せつけ、煽っているのではという態度に、当然暴徒たちが襲いかかってきたが、せいぜいがチョコレート塗れにする程度の攻撃だ。ベテラン契約者である二人には、露程もダメージはない。
 それどころか、互いに掛かったドロドロのチョコレートに、セレンフィリティは薄く笑みを浮かべた。
「案外、こういうのも悪く無いわね」
 囁きと同時、指先がセレアナの頬に掛かるチョコレートを拭って、わざとらしく舌で音を立てて舐め取った。
「甘さも丁度良いし、ふふ」
 その言葉でセレンの意図を悟って、セレアナは身をよしったが、遅い。
「セレアナ! あたしのチョコレートよりも熱くて甘い愛を受け取って!」
 言うが否や、その唇はゆっくりと頬を這って、耳元まで辿っていく。
「ちょっと、セレン! こんなところで……あっ」
 流石にこんな公衆の面前では恥ずかしい。そう頬を赤らめるセレアナだが、それはどうも逆効果のようで、がっちりと体を抱きしめたセレンフィリティの腕はまるで放す気配は無く、這っていく舌は遠慮なく耳朶を舐って舌先でつうっと更に首筋を辿って降りていく。
「ん……、セレン……」
 そうしている内に、互いの密着する体温がそうさせるのか、身体に纏わりつくチョコレートの甘い匂いがそうさせるのか、次第にセレアナの方も、衆人監修がどうとかそんなことの一切が認識から遠ざかっていき、気がつけば自分もまたセレンフィリティの背中に手を回すと、その肩口に唇を押し付けるようなかたちで密着して、とろりと流れるチョコレートを舌で掬い取った。
「ふふ……くすぐったいわ、セレアナ」
「あなたこそ」
 身を捩るセレンフィリティに微笑んで、セレアナは更にチョコレートを食べようとしているかのように小さく歯を当てた。負けじとセレンフィリティの舌の動きも激しいものになっていき、チョコレートまみれの中で二人が互いを舐めながら身を捩る姿は、なんとも言えず扇情的である。というかぶっちゃけ目の毒な程の光景である。
「愛してるわ……セレアナ……っ」
「私もよ、セレン……ああ、もう、ダメ……!」
 お互い感情の昂ぶるまま、情熱的に愛の告白をし合っているが、やってることも情熱的である。
 もはやラブもヘイトも関係なく周りがあっけにとられているというか目が勝手にそっちへいってしまう状態であったが、本人達はもうすでにある意味で二人だけの世界である。

「おいこら、公共の場だぞっ」

 流石のブラックも突っ込まざるをえなかったようだ。と言うより色々引っ掛かりそうなのだった。
「それはもう今更だと思いますぅ」」
 ぴゅあのツッコミは一体誰に向けらたものだったのか、それは彼女のみぞ知るのである。



 兎も角、そんなこんなで空京は相変わらずの混沌に満ちており、暴れ回るヘイトに自分の世界で圧倒するラブが入り乱れて、よく判らない有様だ。特に目の前で繰り広げられるエロスな光景に至っては、ラブを溢れさせる反面で、それを目撃した者のヘイトが盛り上がってしまったりで、差し引きどちらの力が上かが判りづらい有様である。
「なんだかぁ……ラブって言い切って良いのかわからない感じですねぇ……」
 流石のぴゅあも思わず呟いた、が。

「あら、行動も愛ですよ。もちろん愛です!」

 声を大にしてそう叫んだのは風森 望(かぜもり・のぞみ)だ。
 いつの間にか接近していた望は、首を傾げるようにして振り返ったぴゅあに、にこり、と何だか据わった目で笑いかけた。
「ですからその愛、貴女も与え、受け入れるべきなのです」
 そう言って、ばっと手をかざした先に並んでいたのはヘイトの影響下にある暴徒達の中でも特に非モテと思われる(失礼)男性陣だ。
「……何事ですぅ?」
 戸惑うぴゅあに構わず、望はその男性達にふふりと邪悪に微笑みかける。
「さあ、皆さん! 今こそヘイトを越えて愛を手に入れる時です! あの人愛の人だから、あなた達何人居ても平等に愛してくださいますよ!」
 愛して、という所を妙に意味深に口にしたその声を合図に、非モテな男達がまるで襲いかかるように一斉にぴゅあに群がったのだ。突然のことに戸惑っているぴゅあに向かって、一体どう望に説得(?)されたのか、男達の行動は大胆かつ遠慮のないものだ。流石に笑顔をひきつらせながら、ぴゅあは手に持ったハンマーをぐっと握りしめた。
「ちょ……何してるんですかぁ? ぴゅあはそういうんじゃないですよ。あっ、何触ってるんですかぁ、痴漢ですかぁ? 痴漢ですねぇ?」
 見た目は華奢な少女だが、凄むと妙な貫禄があって、男達はたたらを踏んだが、その背中を押すのはやはり望だ。
「ふふ……何を恐れているのです。あれはツンデレ属性というやつですよ!」
 その声に、男達がざわっとざわめいた。
「違いますぅ。ツンデレはそこのぶらっくのほうですぅ」
「誰がツンデレだ!」
 気を逸らそうとしたぴゅあに指さされたぶらっくは喚いたが、望はまるで聞こえてないような素振りで男達の背中をぽん、ぽんと甘い言葉で誘惑ならぬ説得をしていく。
「言葉のキツさの裏にこそ、態度のキツさの裏にこそ、隠れているラブが見えませんか? むしろあなた方にとってはそのキツさをも愛となるはずです」
 強引な物言いだが、ヘイトに侵された男達の言葉にはすんなりと耳に届くようだ。ぴゅあは必死に違いますぅ、と文句を言っているが、まるで聞いてはいない。
「だいたい、ご覧なさい。あの甘いチョコレートのようなぴゅあ・ばれんたいん様を! 刺々しいだけの精霊が果たしてあんな姿をしているでしょうか? いえ、あり得ません! 突き放すその裏には、あなた方への甘ーいラブがたっぷり詰まっているのですよ!」
 言葉の端々で何だか意味深な言葉を混ぜ込まれ、非モテな男達の妄想も加速度的に膨らんでいく。そういう素質のありそうな男達を選んだからだろうが、望の言葉に煽られて、ぴゅあの方を見ながら興奮に蒸気を吹き上げ、息をはぁはぁやっているやっている様子は、控えめ似ても大変、キモイ。それが一斉に群がってくる様子たるや、ホラー映画もかくやと言った光景である。
「や、っちょっと、やめてくださぁい!」
 同じ口調、同じ毒舌具合と某選帝神の誰かと被るキャラではあるが、こちらはアイドルではない純粋な精霊である。
「ち、近寄らないでくださいよぉ! やだぁ、何するんですかぁ!」
 悲痛な声も、望には届かないようだ。逃げ腰になっているぴゅあを、寧ろ非難するように一括した。
「愛が地球を救う? ならば、貴女自身の愛でここにいる非モテな皆さんを、その身を持ってLOVEしてあげるべきでしょうが!!」
 その言葉はなんだか妙な説得力がある(ようにぴゅあには感じられた)って、その足を止めさせた。だが、突き飛ばしたり吹き飛ばしたりなどして、自らヘイトを作るわけにもいかず、せいぜいがいろいろ引っかかってしまいそうなあれこれな(割愛)行為をなんとかやり過ごすと、既に疲労困憊といった様子でぺたりと地面に座り込んでしまった。体力と言うよりも精神力の方が消耗しているようである。
「はぁ……はぁ……こんなの、ラブじゃないですぅ……」
 とは言え実際には幾らかカウントされているあたり、ラブとは様々な形があるのである。兎も角。そんなぴゅあに向かって、きらりと目を光らせ、最後の仕上げとばかりに望がその傍にそっと寄り添った。
「ふふふ。さあ、ぴゅあ・ぶらっくちゃん様。私の愛を受け止めていただきますよ」
 にじり寄る望に、ぴゅあの表情はざっと変わる。
「や……っ、いやぁ……っ」
「そんなに怯えることは無いではないですか。大丈夫、私はアーデルハイト・ワルプルギス(あーでるはいと・わるぷるぎす)様にこの身を捧げちゃってますんで、貴女に差し上げることはできませんし」
 そうは言うが、先のあれからこれである。ぴっとりとくっついてくるのが男ではないだけかなりマシではあるだろうが怯えるなと言うのが無理な話で、小さな身体が硬直してしまっている。
「こんなのは、ラブじゃないですぅ……」
 先のセリフをもう一度口にしたが、望は「何を言っているんですか!」と憤然と声を荒げた。

「愛欲と! 自己愛と! 同性愛に! 小児愛もおまけしたこの私が! この私こそが! 愛の権化で権現として顕現ですよ!」

 堂々と言うことじゃない、と言うツッコミが方々から聞こえてきそうだが、全くそれに構ったこっちゃ無いとばかりに抱きつくと、その口に強引にキスをした。より正確に言えば、マレフィキウム……ぴゅあの持つラブのエネルギーを吸収しようとしたのである。ほんとにこれ、どう考えてもラブサイドではなような気がするが、気のせいである。多分。
「んーっ、んんー!!」
 と、言うわけでれっきとしたスキルであると同時に実際にはその効果は発動しなかったわけだが、これ、なんと言うかセクハラである。

「い、い、か、げ、ん、に……しやがれぇえええ!!

 半ばあっけに取られていたぶらっくは、気を取り戻すと白皙の頬を真っ赤にしながら、望を引き剥がしてぴゅあの腕を引っ張って遠くへと投げ飛ばし、気のせいか涙目のぴゅあを庇うように背中へやった。その様子をひとりのんびりと頬杖をつきながらテラスで見ていたニキータは、思わずと言った様子で息をついた。
「なぁに、あんたたち、つきあってるの?」
「付き合ってねえよ!」
 客観的に見て今の行為はどう考えてもそうだろうと思われたが、即座に否定するぶらっくの顔は真っ赤ではあったものの、嘘をついていると言うようにも余り見えない。とはいえ、好意が完全に無いとも思えないので、からかい半分でニキータは肩を竦めた。
「じゃあ付き合っちゃえばいいのに」
「出来るわけがないだろうが!」
 途端、喚いたぶらっくはステッキを構えた。パラミタ各所で満ちるラヴオーラのせいで、その光は随分薄まってはきているようだが、その目はまだ苦く重たいヘイトに満ちている。
「オレは、この日に宿る怨念だ。報われねぇ、寂しい、羨ましい……そういうのがオレを作るんだ」
 どうやら、ぶらっく・ばれんたいんという存在はヘイトを操ってはいるものの実際にはヘイトを司っている精、というわけではないようだ。どちらかといえば、ヘイトが生まれることによって誕生し、それを少しでも慰め、諌め、駆逐するの元来の役目のようである。聞くだけでも面倒くさいのが判る、胃の痛くなりそうな仕事である。
「減らしても減らしても、おまえらがヘイトを溜めやがるんだろうが! 付き合うだのなんだの、そんな余裕があるわけねえだろ!」
 わなわなとステッキを握り締める力に、日頃の苦労が垣間見える。なんだか申し訳ない気持ちになった者も中にはいるのではないだろうか。つまりはミイラ取りがミイラになったような状況なわけだが、その叫びを聞いて、ようやくひと心地ついたぴゅあがぱんぱんと服をはたいて気を取り直すと、そのハンマーを構えてぶらっくに向き合った。
「まったくぅ……素直じゃないんですよねぇ」
 だいぶ消耗してはいるが、ぶらっくの方もヘイトが溜まりこんだとはとても言えない状況である。向き合った二人は今が勝負の時、とぶらっくはそのステッキを、ぴゅあはそのハンマーを構えた。そこに溜まりこんだ互いのパワーをつぎ込むと、黒と白の光がぶわりと互いの背中に翼を作って、空を染め上げていく。今までのくだらな……いや、カオスな雰囲気にはそぐわない唐突な光景に、皆が目を疑いながら見やっていると、次の瞬間には二人は激突していた。
 ハデスの改造もあって、ステッキの精度が上がっているのか、黒い光は刃と化してぴゅあへと向かって飛び込んでいったが、ぴゅあのハンマー捌きも負けていない。大きく振り払ったその反動で光を弾き飛ばすと、そのまま一気に加速と共にぶらっくへと肉薄した。
「おいたは、ここで終了ですぅ!」
 一声。最大のパワーを放ったぴゅあとぶらっくの力が正面から激突した。世界が一気に光で塗りつぶされたかと思うと、次の瞬間には、きらきらと砕けた光の残滓がぴゅあの周りを舞っていた。その手には、力を失ったからなのか、小さくなってしまったぶらっくの姿がある。その姿を苦笑しながら見下ろして、ぴゅあは肩を竦めた。 
「バレンタインのシーズンはどうしてもヘイトが溜まるのでぇ……ぶらっくもこんなのになっちゃうんですよねぇ」
 そう言って、腕の中にぶらっくを抱きかかえたぴゅあは、あっけに取られる一同に向けてにっこりと笑みを浮かべた。
「みなさんを利用する形になっちゃったのはぁ、本当に申し訳ないと思ってますがぁ……わたしもちょっとだけ、思い知っちゃえ☆ なんて思っちゃいましてぇ」
 最後にさらりと毒を吐いて笑ったぴゅあに、皆もなんとも言えない顔だ。とは言え、ぴゅあのほうも思いもよらない反撃を食らったりだのしたのだから、どっこい……かもしれない。
「ちなみに……バレンタインはあくまできっかけですぅ。本当のラブはぁ、これからですよ、これから」
 ふふ、と笑ったぴゅあは、ぶらっくの残したステッキをくるりと振った。

「お詫びとお礼に、ちょっとした奇跡を、お贈りしておきますねぇ。それではみなさん、良いバレンタインを!」

 その一言と共に、ぴゅあの輪郭がふわりと溶けたかと思うと、そのまま光の粒が空一面に広がった。
 きらきらと光る雪の結晶のような淡い光は、それぞれの上にふわふわと降りては消えていく。それは、出会いのきっかけであったり、仲を深めるほんの少しの導きであったりという、ほんの僅かな祝福として、ヘイトを爆発させて涙を呑んだ者たち、そしてラブでそれを乗り越えた者たちへも分け隔てることなく降り注いでいく。

 どうやら、バレンタインの騒動は、これで閉幕のようである。
 皆様の上にも、よきバレンタインの祝福がありますように。


 END


担当マスターより

▼担当マスター

逆凪 まこと

▼マスターコメント

ご参加された皆さま、大変お疲れ様でした
蓋を開けてみたらコメディと言うかラブというか砂糖で一杯だったといいますか
ヘイトサイドのマスターの心がお疲れ様でし……何でもありません(血涙)

実際は始終とてもテンション高く執筆させていただきました
普段扱わない題材なだけに、これ大丈夫なんだろうかと自問自答も何度繰り返したかしれませんが
頂いたアクションはどれも個性的かつユニークなものばかりで楽しませていただきました
どう考えてもオチのほうが弱い感じではありますが、それは皆様参加者様のアクションの濃さゆえと言いますか
もうなんか、何名かは味付けもいらないんじゃないかと言う濃さで、正直敵う気がいたしませんです、はい

そしてガイド記載の通り、最優秀ラブとして遠野 歌菜さん、最優秀ヘイトとして葛城 吹雪さんに、それぞれに称号を贈らせていただきました。
少しでも楽しんでいただけましたら幸いです