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リアクション
騎沙良 詩穂(きさら・しほ)は、吸血鬼の少女 アイシャ(きゅうけつきのしょうじょ・あいしゃ)のことを想っていた。
窓の外には、夏の澄み切った夜空が広がっている。
きっとアイシャも病院の窓の外を見れば、見える景色だろう。
(今頃……眠ってるかな。ゆっくり休めているかな……)
療養中のアイシャを想うと、アイシャの傍にいて励ますことのできない自分が悔しくもあった。
先日、テレビ電話で話したアイシャの姿を思い返し、詩穂はロケットペンダントを見つめた。
テレビ電話を通じて話したいと思ってくれたアイシャ。
けれど、それさえも負担になってしまうほどに、アイシャは弱っている。
(アイシャちゃん……)
弱っているアイシャの姿を見て、詩穂は悩んできた。
何もできない自分が悔しくもあった。
どうにかして力になりたいと思い続けてきた。
(……だから)
アイシャと手紙を交換するより、テレビ電話で話すより、今は何よりゆっくりと休んで欲しい。アイシャとまた会える日を信じて、詩穂は祈った。
(ゆっくり休んで……良くなってね)
空に瞬く星に願い、詩穂はそっと目蓋を閉じた。
◆
(……?)
病室のアイシャは、何となく誰かに呼びかけられたような気がして、ベッドから窓の外を見た。
明かりの消えた病室からは、窓の外に煌めく星が点々と見える。
(……詩穂)
アイシャは、詩穂からもらった悠久と慈愛のペンダントを手に取った。
大切なお守りであるペンダントを握り締めて、アイシャは窓の外を見た。
(詩穂は……今、何をしているんでしょうか)
ロケットの、二人の写真を見つめて、アイシャは詩穂のことを想う。
今もどこかで、心配してくれているのだろうか。
だから今、何となく詩穂のことが気にかかったのだろうか。
アイシャは、先日電話で話した詩穂のことを思い遣る。
そして、アイシャを大切に想ってくれる詩穂に、感謝の気持ちを込めて祈った。
(……本当に、幸せ者ですね)
ペンダントを握ったまま眠りについたアイシャは、幸せそうに微笑んでいた。
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