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雨と稲妻

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雨と稲妻

リアクション

 契約者たちは重い扉を開けてウェスペルが待ち受ける広間に入った。
中は石の壁に囲まれた広い部屋だった。奥には低いステージがありその上に男が一人待ち構えていた。
 すっとした鼻筋で目つきは日本刀のようにするどい。ドグマ教のボスのウェスペルだった。

「追い詰めたわよウェスペル!私たちが来たからにはドグマ教は終わりよ!」
 クレア・ワイズマン(くれあ・わいずまん)は握った【熾天使の焔】の切っ先をウェスペルに向けた。
「ふん――たった4人か。随分となめられたものだな。終わりだと?その言葉そっくり返すぞ!」
 突如、ウェスペルの体から白い光が放たれ契約者たちは咄嗟に腕で目を庇った。
彼らが目を開けると「あっ!」と声を上げ周囲を見回した。先ほどまでの石造りの空間はどこへ行ったのだろう。
辺りには荒野が広がっていた。岩山が取り囲み、地面はすっかり乾燥していてヒビが入っている。

「なるほど。魔力で空間を作り変えたようだな……危ない!」
涼介・フォレスト(りょうすけ・ふぉれすと)が声を上げた。
巨大な青い刃が契約者たちを襲う、4人はジャンプをして攻撃を回避し地面に着地する。
ウェスペルに向かって全員がファイティングポーズを構えた。
そう。ウェスペルは剣を横に振るって凝縮された魔力の刃を飛ばしてきたのだ。
「どうした。掛かってこないのか?」
「望むところだ!全力で行くぞ!」
 涼介は呪文を唱える。すると前方の足元から巨大な魔方陣が浮かび上がった。
魔方陣に光が満ちるとそこから【バハムート】が勢いよく空中へ飛び立った。
空中で旋空を繰り返すそれは、背中に大きな翼を持ち、全身を覆うくろがねの鱗は
太陽の光を反射してギラギラと輝いている。

「行け!バハムート」
 【バハムート】はウェスペル目掛けて体当たりを仕掛ける。
ウェスペルは素早く動いて攻撃を回避、攻撃は続く。【バハムート】の口の中が真っ赤に輝き球状の炎の塊が発射された。
巨大な炎が迫り来る。だが彼は動じない。
「その程度!」
 剣を大降りして炎の塊を斬りつける、瞬時に真っ白な水蒸気が広がった。
 霧の中で彼は素早く振り返る、目の前に炎の刃、すぐさまそれを回避する。
攻撃の主はクレアだった。彼女は霧に紛れながら斬撃を繰り出したのだ。
「負けまない!たあぁぁっ!」
「ほう。悪くはない太刀筋だ」
 【強化光翼】で自身を強化したクレアは【熾天使の焔】で何度も斬りつける。
しかし、攻撃は当たらない。クレアは間髪いれず攻撃を続ける、炎の刃が空を斬っていく。
突如。クレアの動きが止まった。いや、止められた。
「笑止!」
 青い水を纏った片手に刃は握り締められていた。よく見ればただの水ではない。ジェル状でかなりの弾力がある。
「私をただの水使いと思うな!その気になれば水の性質すら変化させることができるのだ!」
 ウェスペルは【熾天使の焔】を振りほどく、そして手にした自身の剣でクレアを斬りつけた。

「きゃああ!」
 地面へと落下していくクレア。
「させないっ!」
 彼女を助けるためコハク・ソーロッド(こはく・そーろっど)が落下するクレアに向かって突き進み、両腕で受け止めた。
「――ふぅ。危なかったぜ」
 コハクは素早く地上へ降り立ち、クレアを静かに地上へ寝かせた。
安心するのもつかの間、背後からウェスペルが襲い掛かってきた。
 コハクは自身の槍を取り出し攻撃を受け止めた。
刃の攻撃は続いている、攻めに転じたい彼だがウェスペルの攻撃に隙がない。
そのときだ。バハムートの攻撃だ。ウェスペルに向かってが炎を飛ばしてきた。
「小賢しい!」
 青い刃を飛ばして炎を斬り裂く、刃は炎を貫通して【バハムート】に直撃光となって消えてしまった。
「今だッ!」
 コハクは攻撃の際に出来た隙を見逃さなかった。握った槍の柄で敵のみぞおちを突いた。
「うぐっ!け、契約者ッ!!」
 攻撃を食らったウェスペルはうずくまった。
みぞおちは人間の急所、弱点だ。
「コハク!逃げてくれ!」
 遠くにいた涼介は叫んだ。身構えた涼介は【トリニティブラスト】の発射準備をしていた。
コハクは「わかったぜ!」と返事を返すとその場から素早く離れた。
「さあ、ウェスペルよ。ドグマ教もこれでお終いだ。貴様の身勝手に苦しんだ者に対してあの世で詫びるがいい!」
 トリニティブラストが放たれる。強力な魔力がウェスペルへと突き進む。
「ぐっ、負けるものか!!」
ウェスペルは手のひらを突き出し【トリニティブラスト】を受け止めた。
「ぐっ!やるな、だが……はあああああっ!!」ウェスペルは自身の魔力をさらに解き放ち攻撃をかき消した。
「それならこれでどう!えいっ!」
 小鳥遊 美羽(たかなし・みわ)が【ファイナルレジェンド】を放った。
光り輝く球状の攻撃がウェスペルに向かって突き進む。
「その程度の攻撃など!」
 同じく手のひらを突き出して攻撃を受けとめる。
「私を甘く見ちゃだめだよ!攻撃はまだ終わってないんだから!」
 美羽は魔力を込めて受け止められている【ファイナルレジェンド】を爆発させた。
「ぐっ!しまった」
 瞬時に光が弾けウェスペルを包み込んだ。