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学生たちの休日17+

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学生たちの休日17+

リアクション

    ★    ★    ★

「はははははは、見ろ、周囲の物すべてがアワビのようだ!」
 マネキ・ング(まねき・んぐ)が、モニターに映し出される周囲の状況を目にして高笑いをあげていた。
 パラミタ内海の入り江の一つに鎮座ましました生体要塞ル・リエーが高速回転をし、機動要塞表面に貼りついていたアワビを大量に周囲にばらまいている。
「これじゃあ、まったく、環境破壊だな……」
 やれやれと言う顔で、セリス・ファーランド(せりす・ふぁーらんど)が頭をかかえている。アワビの養殖もいいが、これではまるで生態系の破壊だ。パラミタ内海の頂点に立つ生物をアワビにしてどうすると言うのだろうか。

    ★    ★    ★

 そこへ、静かに伊勢が航行してきた。
 伊勢のブリッジの窓ガラスにも、飛んできたアワビがべちゃりと貼りつく。
「こ、これはなんでありますか」
 予想もしなかったアワビの雨に、さすがに葛城吹雪もビビる。

    ★    ★    ★

「なんか、船がやってきたぞ」
「むむ、商売敵か、産業スパイか。いったん、姿を隠すのだ」
 伊勢に気づいたセリス・ファーランドの言葉に、マネキ・ングが要塞にジャマーカウンターバリアーを張っていったん水中へと身を隠した。

    ★    ★    ★

「ええい、アワビだらけになる前に、ビッグバンブラストを発射するであります。目標、セントアンドリューのリア充! であります」
「あいあいさー。あっ、コルセアが見あたらないのだが……」
 準備に入ろうとしたイングラハム・カニンガムが、葛城吹雪に確認した。
「構うなであります。どうせいつものことでありま……、はっ、まさか……。い、急ぐであります!」
 まさか、またチクったのではと思いあたって、葛城吹雪がイングラハム・カニンガムを急かした。
 だが、まさにそのとおりだったのである。

    ★    ★    ★

『……ということなのでよろしく』
「分かったわ。邪魔はさせないから」
 コルセア・レキシントンから連絡を受けたローザマリア・クライツァールが、伊勢の討伐を指示する。
「了解した。伊勢の行動パターンから、船を潜めるとすればこのあたりだろう」
 状況を分析して、常闇夜月が伊勢の位置を予測する。
「確認した。その位置に、伊勢を発見したと報告が入っている」
 コームラント小隊に偵察を命じた湊川亮一が、報告を入れる。
「しかたがない。ちょっと締めてこようか?」
 やれやれという感じで、大田川龍一が言った。
「いや、そこならば、フリングホルニの方が近い。なあに、行動不能にすればいいんだろう。任せておけ」
 そう言うと、デュランドール・ロンバスがフリングホルニに連絡を入れた。
「了解した。新装備の試し撃ちにちょうどいいだろう」
 連絡を受けたグレン・ドミトリーが、即座に対応する。
「甲板中央リフトハッチ開放! 墜天・滅、垂直試射。初弾は弱威力の模擬弾を使用する。威嚇によって敵が撤退しない場合は、四番艦から通上弾攻撃を行う。初弾、撃て!」
 グレン・ドミトリーが命じ、フリングホルニの甲板中央に設置された墜天から、クラスター弾が一斉に発射された。

    ★    ★    ★

「準備完了。ビッグバンブラスト発……。おい、なんか飛んでくるぞ!」
「構わないであります。発射であります!」
 慌てるイングラハム・カニンガムに、葛城吹雪が命令する。
 ついにビッグバンブラストが発射されるが、雨霰と降り注いだクラスター弾が発射直後のビッグバンブラストの弾頭に直撃した。当然のように、伊勢の直上でビッグバンブラストが誘爆する。
「うぎゃああ、撤退であります。リア充を滅ぼすまで、死ぬわけにはいかないであります」
 炎につつまれた伊勢の中でイングラハム・カニンガムと共にたこ焼きになりかけながら、伊勢が逃げだしていった。
「とりあえず、アトラスの傷跡あたりに身を潜めるであります」
 ついでに遊園地でリア充狩りを続行するのだとなおも悪巧みを描きながら、葛城吹雪は全速でパラミタ内海を離れていった。

    ★    ★    ★

「ちょ、愛しのアワビたちが焼きアワビに!!」
 焦ったのは、マネキ・ングである。
 せっかく放流した、アワビのほとんどが焼かれてしまったのだ。
「い、急ぎ、回収するのだ!」
「いや、さすがに、もう死んじゃってるだろう」
 今さら回収してもと、命令するマネキ・ングにむかって、セリス・ファーランドが言い返した。
「何を言ってるか。焼きたてじゃなければ、出荷できないだろうが。すぐに回収して出荷するのだあ!!」
 転んでもただでは起きないマネキ・ングであった。