リアクション
8.そして、目覚める
――世界が終わる夢から、目覚めた。
「はっ!?」
トマス・ファーニナル(とます・ふぁーになる)はがばりと起き上がると、慌てて周囲を確認する。
つい先程まで、世界は終わろうとしていた。
トマスはなんとかそれを阻止しようと、ひたすら悪戦苦闘していた。
たとえ無駄な足掻きであっても、やらずにはいられなかった。
今にも自らの手から零れ落ちそうになる世界を、そして秩序を守ろうとしていた。
「夢……だったのか」
ほうと長い息を吐く。
そして改めて窓の外を見る。
青い空は今日もどこまでも広がり、美しい世界を照らしている。
その下には、人々が新しい一日を足取り軽く踏み出そうとしている。
今の、この世界のなんと愛おしいことか。
日常の、なんと愛おしいことか。
「生きているんだ……なあ」
当たり前のことを口にしてしまい、つい苦笑する。
よし、とトマスはベッドから飛び降りた。
せっかく生きているんだから。
世界は、続いているんだから。
今までついつい後回しにしていたあれこれを、今日から始めてみようかな。
そんなことを考えながら、一歩足を踏み出した。