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リアクション
清泉 北都(いずみ・ほくと)は、
守護天使のクナイ・アヤシ(くない・あやし)が、
何かを感じたと言うので、
旧シャンバラ王都に向かうことになった。
北都の目的は、宝探しではなく、
王都の様子を確認することであった。
「逆さって事だけど、実は蜃気楼で本物は真下にあるとか……ないよね?」
古代文字を探して、文字も逆になってるかどうか確認する、
北都だったが、鏡文字ということはないようであった。
「蜃気楼ではないようですけれど……」
クナイがつぶやく。
ここには、シャンバラ古王国の都がほぼそのまま残っているようだった。
生活に必要な品々や、
調度品など、ほぼ、古王国の人々の暮らしがそのままうかがえるような状況だった。
「それが、どうして、急に、こうして現れたんだろう」
北都は、そう言いつつ、
王都を見て回る。
すべてを回るのは、広大なため、難しいが、
2人は、中枢へと向かっていく。
戦闘は引き受けてくれてる人のおかげで避けることができていた。
「クナイ、何か感じる?」
「いえ、今のところは。
ただ、この都が、逆さまなのは、それなりに意味があるのだろうとは思います」
北都に問われ、クナイはそう答えたのだった。
■
一方、エメネアと行動する者たちは。
遠野 歌菜(とおの・かな)がアルティメットフォームで魔法少女に変身し、
月崎 羽純(つきざき・はすみ)と連携しながら、
アールキングの根を相手にする。
「羽純くん、あっちからも来るよ!」
「ああ、後ろは任せろ」
「うん!
ハーモニックレイン!」
歌菜と羽純の攻撃で、アールキングの根は、やや、たじろいだようだった。
その一瞬の隙に、歌菜が叫ぶ。
「エメネアさん、ここは私たちに任せて、お宝を確保してください!」
「わかりましたぁ! ありがとうございますっ!」
エメネアたちは、前進していく。
「じゃあ、頑張ろうか、羽純くん」
「ああ。歌菜。
ここは、俺にとっても、懐かしい場所……壊させるわけにはいかない」
2人は、お互いの両手を握りしめ、
薔薇一閃でアールキングの根を打った。
「効いてるみたいだね!」
「よし、じゃあ、このまま、押し続けるぞ」
歌菜と羽純は、舞うように戦い、
アールキングの根を防いでいた。
そして、エメネアたちは。
「拙者トレハンとも成れば他の者よりも一家言あるゆえお任せ下され」
坂下 鹿次郎(さかのした・しかじろう)が、
エメネアの前でいいところを見せようと、張り切っていた。
姉ヶ崎 雪(あねがさき・ゆき)が、
別の場所から湧いて出たアールキングの根を、
イコン用手榴弾でぶっ飛ばす。
そこに、すでに説得されて、
一生懸命鳴く日々を送ろうとしていた蝉人間も飛んできたが。
「知ってます? 蝉って揚げると意外と美味ですのよ。
5千年熟成された珍味と考えると……じゅるっ」
雪の発言を聞いて、慌てて逃げて行った。
「頼りにしてますよぅ。
お宝でバーゲン行くお金ゲットです!」
エメネアがうなずく。
笹野 朔夜(ささの・さくや)も、
やはり、エメネアのことを想っていた。
そのため、エメネアを助けようと、アールキングの根に対抗する。
ドッペルゴーストに自分の姿を取らせ、
囮にすることで、
アールキングの根を引きつけておく。
奈落人の笹野 桜(ささの・さくら)が憑依している、
難波 朔夜(なんば・さくや)は、
対イコン手榴弾で、破壊工作で、
引きつけたアールキングの根を攻撃する。
爆発が起こり、アールキングの根が吹き飛ばされる。
「朔夜さんたちもありがとうございます!」
エメネアの言葉に、朔夜はうなずく。
「ええ、俺も、エメネアさんのお役にたちたいですから」
朔夜と鹿次郎の間で、
同じ女性を想う者同士、水面下で火花が散っているようであった。
エメネアは、自分を想ってくれる者たちのおかげで、
無傷でここまで進んで来れている。
こうして、アールキングの根を撃退しながら、
一行が進んでいくと。
「あっちです!」
エメネアが、旧シャンバラ王都の中心部を指し示した。
「あれは、宮殿?」
鹿次郎がつぶやく。
■
早川 呼雪(はやかわ・こゆき)と
ヘル・ラージャ(へる・らーじゃ)は、
玉座の間に辿り着いていた。
途中までエメネアと行動を共にしていたが、
最初から、この場所を目指していたので、一足早く到達できたのである。
そして、ヘルのテレパシーに、応えてくれる者がおり、
誘導してくれていたのも、早く着いた理由であった。
「ご無事で何よりです」
「ありがとう、助けに来てくれて」
呼雪の言葉に、赤毛の美しいヴァルキリー……ネフェルティティがうなずいた。
呼雪は、現在の、ジークリンデの状況を、妹であるネフェルティティに、かいつまんで説明する。
今、パラ実校長を決める、バスケに参加していると。
「叶うなら、あなたと姉君をお引き合わせしたいのです。
あなたをここから解放する手段はありませんか?」
「はい、きっと、石原元校長が、
私を助けに、あなた方を向かわせてくれたのですね」
「よかった、
僕は鏖殺寺院に掛けられた呪いから解き放たれて
殆ど自由みたいに過ごしてるのに、ネフェルティティちゃんだけ
ずっとここに縛り付けられてるの、心残りだったんだよね。
ジークリンデちゃんを応援しに来て欲しいし!」
ヘルも、笑顔になって言う。
「ところで、この王都はいったい?」
「この場所は、特殊な空間に封印されているのです。
ですから、本来は溶岩があるはずなのに、影響を受けていないのです。
逆さまになっているのも、
“普通に地下に存在している”わけではないから、そのようになっているのです」
「なるほど。完全な復活ではないのですね。
ひとまず、ここから脱出しましょう」
呼雪が、ネフェルティティに言った時。
そこに、エメネアたちが到着する。
「ネフェルティティ様!?
ふおおおおお、わかりましたよお!
つまり、ネフェルティティ様こそ、シャンバラの宝だったのですぅ!
……って、それだと私のお金がー!?」
がっくりとひざを折るエメネアを、
鹿次郎と笹野 朔夜がなだめる。
「まあまあ、エメネアさん、金などなんとでもなるでござるよ」
「そうですよ、エメネアさん!」
「いざとなればエメネアさんの一生分のバーゲンの費用程度
拙者が稼ぎ出して進ぜるでござるよ」
その言葉に、エメネアが顔を上げる。
「だから結婚してください!」
鹿次郎の何回目かのプロポーズに。
「ほんとですかぁ。お金、お金……」
あきらかに金に目がくらんでる状態のエメネアだが。
「な、ちょ、待ってください!」
朔夜が慌てる。
「俺だって、エメネアさんのことが……!」
そんな会話をしていると、アールキングの根が、
玉座の間にまで侵入してきていた。
(許さぬ……。シャンバラ女王を継ぐ者よ。
貴様は、我が、力となれ!
シャンバラへの復讐、果たさせてもらうぞ!)
アールキングが、ネフェルティティを飲み込もうと、根を伸ばしてくる。
その刹那であった。
エメネアが、ネフェルティティを突き飛ばす。
「私、わかりました。
私は、十二星華の中でもお荷物で、
良雄さんにも他に大事な人がいて、
本当に自分を愛してくれる相手がいないのかもって思ってましたが、
少なくとも、ここにいる方々は、私を愛してくれるんですねぇ」
真剣な表情で言うエメネアに、雪がうなずく。
「ここにいない他の方々だって、
貴女を大事に思う方はいますわ!
わたくしも同じ父を持つ者として、貴女を大事に思ってますし」
「そうでござる、エメネアさん……何を考えて!?」
「……!? ダメです、エメネアさん!」
鹿次郎と朔夜は、エメネアの様子に気づく。
「ネフェルティティ様をお願いします!」
エメネアは、その言葉を残し、アールキングの根に飲み込まれた。
呼雪とヘルが、ネフェルティティをかばう。
「エメネアさーん!!」
「エメネアさーん!!」
鹿次郎と朔夜の絶叫が響く中、
エメネアは王宮ごと、アールキングの根に飲み込まれる。
やがて、アールキングの根がはびこり、
旧シャンバラ王都を埋め尽くしていった。
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