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地球に帰らせていただきますっ! ~2~

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地球に帰らせていただきますっ! ~2~
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リアクション

 
 
 
 パラミタで見いだしたもの
 
 
 
 ロンドン郊外にある墓標の前に、ルナティエール・玲姫・セレティ(るなてぃえーるれき・せれてぃ)は花束をそっと置いた。
「父さん、母さん。もしかしたらこの前、ナラカで俺たちの姿を遠くから見ていたかもしないな……」
 中流階級の家庭で何不自由なく暮らしていたルナティエールは、10歳の頃、両親をパラミタの魔物に殺された。その後、両親の遺産で親戚内がもめるのを避けるため、自ら養護施設への入所を選び、それから天涯孤独に生きてきた。
「あれから俺はロイヤル・バレエ団のプリンシパルとして活動したんだ。けど、退団した。真に自分が望む舞を求めて、今から3年前にアメリカに移住して、舞台女優を志したんだ」
 その後、独立して自らの劇団を立ち上げたこと。その後も様々な芸能活動をしてきたけれど、自分が求める舞は依然として見つけることが出来なかったこと。
 そして……そんな折り、誰もいない夜の稽古場で一人舞っていたところでセディ・クロス・ユグドラド(せでぃくろす・ゆぐどらど)に見初められ、半ば強引に契約を結ばされることになったこと。
 そこまでの経緯を語ると、ルナティエールは墓標をじっと見つめた。
「今はパラミタにいるんだ。父さん母さんを殺した魔物のことがあって、パラミタのことを俺はあんまり快く思ってなかったんだが……そこにならもしかしたら求めるものがあるかもしれない、と思ったんだ」
 そして……パラミタでルナティエールが見いだしたものは。
 ルナティエールは墓標に向かって微笑みかけると、セディの腕をひいた。
「このひとと結婚したんだ。いい男だろ。すごく頼れるし、俺に心安らげる居場所をくれた。……子供も出来たんだ。春には産まれると思う」
 セディはルナティエールに腕を引かれるまま進み出ると、墓標の前に膝をついた。
「義父上、義母上……そう呼ばせてほしい。ご挨拶が遅れたこと、申し訳なく思う。そしてとても感謝している。愛しく尊い我が姫を、この世に送り出してくれたことを」
 両親は亡くなってしまったけれど、その忘れ形見のルナティエールはセディを愛し、愛され、新たな生命を身に宿している。
「これまでずっとどこかで、ここから逃げてきた。でも、もうすぐ母親になる。ナラカへ行って、父さんと母さんときちんと話さなくちゃとも思ったんだ。……ごめん。こんなに遅くなって」
 けれどやっと報告することが出来た。それも、愛する人と共に。
「私はルナを愛している。貴方がたの大切なご令嬢を、私は生涯大切に預かろう。ルナが二度と、寂しく冷たく生きずにすむように。産まれてくる子がルナのように孤独に生きないように」
 そう宣言するセディにルナティエールは柔らかく微笑んだ。
 その時、街のどこからかパトカーのサイレンが聞こえてきた。何か事件だろうか。
 セディはその音に立ち上がり、ルナティエールを見て苦笑した。
「ヒーローに場所は関係ない。そうだなルナ?」
 そんなことだろうと用意してある、とセディは仮面をつけ、白騎士姿に早変わりした。
「当然だ。エリュト、お腹の子を全力フォローよろしく!」
「おう任せろ!」
 ルナティエールの言葉を受けて、それまで2人に遠慮して少し離れていたエリュト・ハルニッシュ(えりゅと・はるにっしゅ)が元気良く返すと、神楽鈴で舞い始めた。
「オンステージ! セレインナーガ!」
 ルナティエールはエリュトを纏い、紫の全身タイツに優美なフォルムの白い軽鎧、目元が隠れるハーフメット、両肩からマントのように垂れたショールと長い髪をたなびかせる、女ヒーロー・セレインナーガに変身した。
「父さん母さん、俺たちパラミタでヒーローになったんだ。見ててくれ! 行くぞセディ、エリュト!」
「ああ。義父上義母上に見てもらうとしよう。エリュト、ルナを全力で守れ!」
 ルナティエールとセディ、もとい、セレインナーガとディバインロードはサイレン音目指して駆け出した。