天御柱学院へ

蒼空学園

校長室

イルミンスール魔法学校へ

ダークサイズ「蒼空の城ラピュマル」計画・後編

リアクション公開中!

ダークサイズ「蒼空の城ラピュマル」計画・後編

リアクション

9.ダイダリオン

 気がついて皆が周りを見渡すと、

「あれ……?」
「おかしい、空が動いて……」
「え、ウソだろ」
「と、飛んでるうー!!」

 パルナソス山が地面を穿ち、浮かび上がる。
 材質は頑丈な岩。形は変形して、ごつごつしているが平面の円盤状になっている。

『待たせたの。ではシャンバラへ行こうか』

 どこからともなく、ダイダル卿の声が聞こえる。
 ダイソウは立ち上がり、

「ダイダル卿か? これはどういうことだ」
『これがわしの、神だったころの肉体じゃ。人間の体は生活用のスペアみたいなもんじゃな』
「お前そのものが……浮遊要塞だということか」
『そういうのは聞き慣れんが、人間の言葉にするなら、そういうことじゃろう。魔鎧に近いと言ってもいいのう』
「『しゃべる浮遊要塞』……なるほど。よく分かった」

 と、あっさり納得するダイソウ。
 幹部たちは口々に、ダイソウに詰め寄る。

「いや、いいんだけど……これってアリなの? 大丈夫な設定なの?」
「大丈夫だ。ちゃんと確認はとってある」
「あ、そう……って誰にだよ!」

 そんな会話もありつつ、一人残念そうな綾香。

「なんじゃ。こうなってしもうたのか……まあ仕方あるまい。せめてエリュシオンに残したメンツを呼び戻してやるとしよう」

 綾香は、ダイダリオンの上に残った転送用魔法陣を逆回転に設定して発動させ、ユグドラシルに残っていたメンバーを転送する。

ヴンッ!!

 ダイダリオンの上に転送されたメンバーは驚いたりしながらも、

「ちょっとあなた! 何てことしてくれてんのよ!」

 怒り心頭に綾香に食って掛かるメニエス。

「何を怒っておる。置いてきぼりを食らわずにすんだであろう」
「そんなの自分で勝手に帰るわよ! ああもう! 魔術古書店でせっかく見つけた超絶破壊魔法! 買いそびれたじゃないのよー!」

 椎名や終夏、由宇も強制的にダイダリオンに送られている。
 隣には真っ黒焦げの司も転がっている。
 レキとミアは、がっかりしながら、

「ああ〜、観光あんまりできなかったね……」
「ワイバーン欲しかった……」

 と言いつつ、ダイダリオンの空の旅を楽しむことに切り替える。

(つ、ついにきた! チャンスだぜ!)

 満を持してエヴァルトが、ダイダリオン先頭あたりの高台に乗り、大きく叫ぶ。

「ふはははは! 待ったぞこの時を! この浮遊要塞は俺がいただく!」
「何っ!」

 エヴァルトにダイソウが対峙する。

「今回はいろいろ手伝ってくれてたではないか」
「くくく。甘いぜ。我が名はだてぃちょくと。『Dirty Choct』とは『卑怯なるちょくとさん』! この浮遊要塞は、女王アイシャ・シュヴァーラ陛下に献上するのだ!」
「苦労してきたのに横取りは許さぬ」

 と、非常に珍しいことに、ダイソウから攻撃を仕掛け、エヴァルトに飛びかかる。
 しかし、

がきんっ!

 ロートラウトが『アルテミス』で買った盾で、ダイソウの攻撃を弾き飛ばす。

「ボクだって女王陛下のお役に立ちたいもんね。浮遊要塞はいただくよ! エヴァルトくん、舵を奪うんだ!」
「分かってるぜ! この船はいただい、あれ、舵どこだ?」

 エヴァルトはキョロキョロするが、ダイダリオンの上は岩ばかりで何もない。

「舵どこだよ?」
『そんなもんないぞい。わしは船じゃないんじゃから』
「な、ええ? ウソだろ、そんなのありかよ!」

 同様の隙を突いて、アルテミスが魔力で砲を作り、攻撃を繰り出す。
 それをロートラウトが盾で防ぐが、

ばきいんっ!

「あああ! た、盾がー! 高かったのにぃ!」

 と、泣きながらうずくまる。

「愚か者め。我の魔力を人間の盾ごときで防ぎきれるものか」
「どうでもいいのだが……お前も来るのか?」

 ダイソウは今さらながらアルテミスにツッコむ。

「何を申されるやらダイソウトウさま。わ、我は今後の人生をあなたとともに……」
「いやそういうことではなく……お前はエリュシオンの選定神なのであろう。『アルテミス』はどうするのだ。お前がいなくては……」
「心配めさるな。アポロ、ヘルメェス」
「は、はい」

 なんだかんだで、結局ダイダリオンに乗ったままになっていた貴族二人。
 アルテミスは、二人に向かい、

「しばらく『アルテミス』を任せる」
「はあ!? な、何言って」
「我は……我はシャンバラに美を説きに出張せねばならん! そうであろう、祥子」
「えっ!? あ、はあ、まあそうですねぇ」
「我の指導は厳しいぞ。ついてこれるか」
「え、ホントに弟子になるんですか……ていうかダイソウトウのために行くんじゃないの?」
「恋路が言い訳だと格好がつかぬではないか」

 と、アルテミスは祥子に耳打ちする。
アルテミスの言い訳のだしに使われた格好だが、祥子は強制的に、アルテミスの弟子にさせられた格好。

「というわけで我は忙しいのだ。時々戻るから心配するな。ではゆけ」
「えっ、どわー!!」

 アルテミスはアポロとヘルメェスをダイダリオンから突き落とし、二人は『アルテミス』へと消えていく。

「落ち着いて考えてみると……神さまと選定神が味方になった……んだよね?」

 クマチャンが何とか状況を整理する。
 隣では何故かアレンが、クマチャンを見ながらにやにやしている。

「ん、なに?」
「いや何でも。オレはしがない由宇のアシスタントさ」
「あ、そう」
「ふ……ふふふ」
「なに?」
「何でもないって。……ふふふ」
「えーもう何―!? 何か不気味だよこの人―!」

 と、アレンの意味のない悪戯にまんまとはまるクマチャン。

『わっはっはっは! 楽しくなってきたのう!』

 仲間の増えたダイダリオンは、テンションが上がって、シャンバラに向けてスピードを上げる。