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リアクション
「あ、おーい、ボク達も一緒に行っていい〜?」
ゴーレムに荷物を運ばせていたロイヤルガードのカレン・クレスティア(かれん・くれすてぃあ)は、同じ年頃の少女達の姿をみつけて、駆け寄った。
「今のところ何事もないようだな」
カレンの後から、パートナーのジュレール・リーヴェンディ(じゅれーる・りーべんでぃ)も続いていく。
「優子隊長とアレナさんが服くれるんだってね」
カレンは百合園生の朝倉 千歳(あさくら・ちとせ)に笑顔を向けた。
「ボクが預かったダンボールにも、二人の洋服入ってるのかなあ。隊長とアレナさんの服なら、可愛くてセンス抜群なのは間違いなし。早く開けたいな〜」
カレンはわくわく胸を膨らませていた。
いつもイルミンスールの制服で過ごしているカレンは可愛い洋服など、あまり持ってはいない。
今日は宿舎に向かうこともあり、ロイヤルガードの衣装を纏っている。もちろん、これも普段着ではない。
「我も同感であるな。優子隊長とアレナ以外の服も混じっていると聞いた。我に合うサイズの服もあると良いが」
ジュレールも箱の中身に興味を示す。
もし無くとも、無理やり寸をつめて仕立ててもらうつもりだった。
「尤も荷物に何かがあっては、中を確認することも叶わんからな」
カレンは箱の中身の想像に夢中だったけれど、ジュレールは襲われる可能性も考え、周囲に警戒を払っていた。
「確かに、この中には二人の服以外の服も混じってる……彼女達が落札した衣類もな」
千歳は百合園の制服姿で、ダンボールを抱えて歩いていた。彼女は判官だが、今日はそれを感じさせるようなものは、身に着けてはいない。鞄の中にしまってあった。
「その当人達が落札した下着自体は問題のないものだが。また、下着を売ること自体は普通の売買行為だし、それ自体は犯罪ではないが、盗品と分かっていてそれを譲り受けると、盗品等譲受罪が成立する」
「……屑ですわね」
隣で、イルマ・レスト(いるま・れすと)は微笑みを浮かべている。
「まぁ、それ以前に偽物とはいえ、自分が知らないうちに、自分の下着が売り買いされているとか、考えたら、ぞっとするな」
千歳は想像して、大きく息をついた。
「自分が同じ境遇になったりしたら、発狂するかもしれん。いや、そこまでいかなくても、当分は部屋に篭って表には出ないな。恥ずかしいし……」
ちょっと赤くなり、千歳はうつむいた。
きっと優子やアレナも平気な訳はないと、千歳は思う。
「許せんな。判官としての責務以前に、女性として許せん」
「ん?」
先ほどからの千歳の言葉に、カレンは軽く首をかしげる。
なんだか難しい案件でも抱えているのかなーと。
カレンは引越しのお手伝いに来ただけなのだ。
「塵は屑籠に。社会の基本ですわ。私は、メイドですから、掃除は得意ですし好きですわ。綺麗になって行くのは気分がいいですものね」
イルマは微笑んでいたが、真面目な顔つきだった。
なんで掃除の話が出てくるんだろうとカレンはちょっと不思議に思いながらも「そうだね!」と頷いておいた。
「……何事もないといいわね。まあ、これだけ女子が集まってたら、何事もないはずはないけどね。フフ……」
百合園の制服を纏った、眼鏡をかけた三つ編みのほっか・むり子と名乗る伏見 明子(ふしみ・めいこ)は、遠い目をしていた。
(パラ実に限らず何故シャンバラには大変な変態が多いのかッ! 問い詰めたい 小一時間問い詰めたいッッ!!!)
彼女の心はすさまじく荒れていた。
だけど、心の赴くまま暴れたら、変態をおびき寄せることなどできやしない。
ぐっと抑えて、荷物をポニーに引かせて、百合園生らしくおっとりのんびり歩いていく。
「そういえば私も以前、所属の教導団南西分校が敵に占拠された時に、私物とか写真付きでオークション出されてたような気がしますね……」
唯一、ここにいるメンバーのうち少女からは程遠い女性、御茶ノ水 千代(おちゃのみず・ちよ)が、思い出しながら言う。
「というか、オークションの結果は……見てはいませんが、はたして今年で40歳になる私の下着に需要があったのかは気になるところではありますが」
「……」
「……」
「……」
少女達は皆、返答に迷った。大いに迷った。
「……千代さんは大人の魅力あるし、同じ年頃の女性に喜ばれたんじゃないかな」
そう言葉を発したのは、パンツを盗まれたことのある熾月 瑛菜(しづき・えいな)だった。
「そうかしら……使ってもらえた方が良いですね。秘密をしられたら……大変なことになりますから」
そう、底上げされたバストのヒミツを知った者は生かしてはおけない!
胸パット大盛りの数々の服――広まったりしていないといいが。広まっていたら、抹殺しなければならない者が増えてしまう。
「警戒はしていますが、人通りが多いので判断つかない気配も多いです。十分注意してくださいね」
教導団員の千代は、少女達が運ぶ荷物も全てチェックをさせてもらっている。
超感覚で警戒もしているが、人の姿の多いこのあたりでは、不審者かどうかまだ判断は出来ない。
千代以外の女性達は、ゴーレムや馬に荷物を運ばせながら、ほのぼの、のんびり、華やかに微笑みあいながら歩いていく。
心は19歳の千代も、試着の話で盛り上がる彼女達に混ざりたくなるが、自分は団員として仕事で来ているのだと……決して、トシのせいで、ガールズトークに入り込めないわけじゃないんだと、自分に言い聞かせながら警戒を続けていた。
橋を渡り、住宅街へと出た頃――。
その者達は現れた。
「そこのキミ達! その荷……」
「出たなッ!」
現れたのは、マスクを被った男数十人。
彼らが用件を言うより早く、がちゃっとカーマインを取り出したむり子がダッシュローラーで急接近。
ドスッ、ドスッ、ドスッっと、歴戦の武術で男達の腹を拳で貫いた。
「食らいなさい! 仕置いてくれるわ!!」
「ま……」
続いて「待て」と言う時間さえも与えず、歴戦の魔術をぶっ放して男達をまる焦げにしていく。
あたりは一瞬にして、血の海と化し、焦げ臭い匂いが漂う凄惨な処刑場と化した……。
「な、なになに!? 用件も聞かないで攻撃したりしたら、ダメなんじゃないかな!」
カレンが慌てて止めに入る。
「よく見なさい、現実を……!」
むり子は腹を抱えて倒れている男の頭を指差した。
「あ、れ……このマスクって」
「ショーツよ、ショーツ! ……って、何言わせてんのよー!」
叫びながら、むり子は逃げ出そうとした男に飛びついて、容赦なく首の骨を砕く。
「隠れてやり過ごそうなんて甘いッ!」
更に、神の目であぶり出し、パンツマスクを被った男に魔法を打ち下ろした。
「人の古巣に手を出そうとしたのを後悔するが良いわー!」
言いながら、残りの変態達にも拳と魔法を浴びせる。そして息の根を止めた後、百合園生の千歳の方へと投げ飛ばす(注:ここまで誇大描写。まだ誰も死んでません)。
「凄い人数だな……服を奪いに来たというわけか」
鞄の中から手錠やロープを取り出して、千歳は男達を拘束していく。
……気持ち悪いので、パンツも強引に剥ぎ取る。
「逃げられると思うなよ。二度と悪さができないようにしてやるッ」
命からがら逃げ出そうとする者は、スタンスタッフで昏倒させる。
「あらまあ、綺麗なお顔。潰れてぐちゃぐちゃになっていませんのね。わたくしとしては、射殺でもよろしかったのですけれど、社会的な抹……いえ、何でもありません」
言いながら、イルマはデジカメで男達の素顔を映していく。
むり子にぶっとばされている最中の男達のことも。
「気付いていないとでも?」
男達登場後、即座に荷物護衛についた千代は、背後からの接近に気付いていた。
曙光銃エルドリッジで周囲を撃ち、変態を近づけさせない。
「くっそー、せめて1枚だけでも、戦利品をー!」
残った男達が集団で、一人のターゲット……ひとりあわあわしているカレンに迫る!
「何故そちらに行くのです! 私の大人の魅力がわからないのですか!! 今日は新制服を纏ってきましたのに。初々しさもプラスですよ!」
主張しながら、千代はゴム弾をスナイプで的確な攻撃。
「アンタらにくれてやるものなんてなーい!」
そしてむり子の強烈な魔法に、男達は志半ばで……無残に倒されていった。
「さあ、解らせてあげます。私の下着が欲しいと土下座したくなるくらいに」
千代は倒れた男達に更なる攻撃を浴びせようとする。
「情けない奴らだぜ、ヒャッハー!」
血みどろの戦場に、突如男性の声が響き渡る。
「あ、あれは……」
「助けに来てくれたんだな!」
マスクパンツと共に、朽ち果てようとしていた男達が、バイクに乗ったモヒカン男性に向かって手を伸ばす。
そう彼こそは、パラミタパンツ四天王の一人、南 鮪(みなみ・まぐろ)だ。
「やはり、我らは同志! 我らの代わりに一矢報いて、お宝をゲットしてくれ〜〜〜」
「サジタリウスと、神楽崎姐御のパンツを我らの手に!」
絶叫する男の顔を、ゴスンと千歳は殴っておく。
「優子さんのロイヤルパンツだとォー? あれは神を超えたパンツだぜ、お前ら如きの手におえるシロモノじゃあねえぜ! ヒャッハァー!」
「出たな、南鮪!」
瑛菜がバッドを手に鮪の前に飛び出す。
「あんた、去年の夏、あたしの着替え持って行っただろ! ショーツだけ戻ってきてないんだけど、どうした!?」
瑛菜はバッドをぶんぶん振り回して、鮪に向かっていく。
「コイツらに売ったり、ネットに流したのか!?」
「心配するな、俺は独占欲が強いからなァ〜。瑛菜、もう既にお前の物は例え複製品だろうが俺の物だぜ」
鮪は瑛菜の攻撃をかわしながら、彼女を安心させるために言葉を続ける。
「あんな連中にお前のパンツが出回る事は無いぜ。お前のパンツは俺とパンツ神によって保護されているからな!」
「は、はあ!?」
「誤解をして貰っては困るぜェ〜俺は金に興味はねえ! パンツならタダで穿かせてやるぜ。今日もお前等の為に新品を吟味してきてやったぜー!」
鮪は新品の下着を瑛菜に向かって大量に投げた。瑛菜は唖然としている。
「おまえが穿き替えてる間に、新種を狙うぜェ! ヒャッハー」
バイクから飛び降りた鮪の姿がフッと消えた。
「え……あっ、何っ!?」
小さく悲鳴を上げたのは、事態が飲み込めずにいたカレンだった。
突如風が吹いたかと思うと、スカートの中がすーすーしだした。
「動揺してはいけません。衣服は死守します……えっ……」
ダンボールを守る千代の足の付け根も、なんだかひんやりとしてきた。
「し、し、下着ドロー!!」
事態に気付いたカレンが大声を上げる。
次の瞬間には、怒り狂いながら歴戦の魔術で周囲を無差別攻撃!
既に瀕死だったパンツマスクの男達に止めをさし、鮪にもダメージを与えていく。
「その程度の攻撃、パンツ力の前では無味無臭無意味だぜ、ヒャッハー!」
構わず、鮪はパンツゲットに走り回る。
「……さて、優子さんに報告ですわね」
しかし、その一言に鮪は自分に急ブレーキ。
デジカメを持った、イルマの一言だった。
「ヒャッハー! 証拠写真いただくぜェ」
鮪はパンツを奪う神的能力があるが、残念ながらデジカメを奪う能力は持ち合わせていなかった。
千歳に阻まれ、イルマに近づくことさえ出来ない。女性達が距離を縮めてくる。このままでは袋叩きのピンチ。
「ゆ、優子サンには、俺から報告するぜェ! す、全ては優子さんのロイヤルパンツを守るためにやったんだぜ! ヒャッハー」
なぜか足を振るわせながら、鮪はバイクに飛び乗ると急発進して宿舎とは反対の方へ走っていった。
「ま、待ちなさい……」
そうは言うものも、千代は追うことが出来なかった。
「強引に、私の下着を奪っていくなんて……。許せません。ほしいなら、そう言ってくれればいいのに……っ」
パンツを盗られたのに、千代はなんだか怒りながらも嬉しそうだった。
実に南鮪の守備範囲はかなり広い。
「うわーん、新制服着てくるんじゃなかったー! 下着ドロ許すまじー!!!!」
カレンは荒れに荒れまくっていた。今日はロイヤルガードの制服の下に、スカートの新制服を着ていたのだ。
「大丈夫だ。宿舎に着けば、下着ももらえるはずだからな」
ジュレールは押さえつけて彼女の無差別攻撃を止めようとしている。
「アンタ達は白百合会行きね」
「ひぃぃ……直接会うのは勘弁!」
むり子……もとい、明子は呆れ顔で、男達を一箇所に集める。
「親玉についても、話してもらうぞ。素直に話さないと、神楽崎優子さんに、千人斬りに挑戦してもらうことになるな」
千歳は手錠やロープで男達を拘束しながら、脅していく。
「……まあ、取りあえず土下座からだとは思うけど。つかカツアゲは兎も角なんで下着ドロなんだアンタ達は。パラ実硬派はどこへいったのよドコへ」
明子はぐりぐり男達の額に拳を当てるのだった。
「素直にお話になっても……流しますけれどね」
イルマは撮った写真を確認していく。
素直に住所氏名を吐けばそれを。吐かなくてもパソコンで個人を特定していき、写真と一緒にネットに流す予定だった。
「もちろん、新たな犠牲者がでないように世の女性たちに注意を促すのが目的ですよ。それだけです。他意はありませんわ」
軽く彼女が冷笑する様子を、男達は見たのだった。
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