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目からビーム出そうぜ! ビームだよビーム!

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第5章


「くっ……」
 街の片隅で、琳 鳳明(りん・ほうめい)は空を睨んだ。
 ふとした用事で訪れたツァンダで停電に見舞われた彼女は、教導団の一員としていち早く行動を開始していた。

 地域の住民を落ち着かせる、無駄な外出を抑えさせるために呼びかけを開始したのは良かった。
 軍人としての名声を利用すれば、一般市民にはそれなりに効果があるし、何だかんだと言っても非常時にはコントラクターは頼りになるのだ。

 しかし、とりあえずの脅威とみられた『パラミタ電気クラゲ』に生身の肉体と武器で挑んだのは誤算だったと言うべきだろう。
「な……なんて防御力……」
 日頃から鍛錬を積んでいる八極拳も、六合大槍による攻撃もあらゆる衝撃を吸い取ってしまうパラミタ電気クラゲには大した効果はない。
 何しろ、多勢に無勢。
 基本的に接近戦を得意とする鳳明は、近づくだけで浴びせられる電気クラゲの電撃に、少しずつ追い詰められていった。

 だが――。

「私はこれでも、皆を守るために戦うと誓った――軍人なんだ。
 こんなところで、膝をついているわけにはいかない!!」
 鳳明の瞳は、まだ負けていはいなかった。

 その上空を、空飛ぶ魔法で浮かんだ秋月 葵(あきづき・あおい)が飛んで行く。
「お願い、精霊さんっ!!」
 魔砲ステッキを振る葵の胸元に、星の形をした『情熱クリスタル』が光っている。カメリアからメール受け取った葵は状況を察知し、情熱クリスタルによるビームで、街中で戦うコントラクターたちの援護を始めたのだ。
 葵の後を追尾するように飛行する人工精霊と、葵の吸ステッキからスカイブルーのビームが発射された。
「いっくよー!! スターライト・シュート!!」
 星のような輝きのビームが、次々とクラゲを落としていく。

 葵のパートナー、イングリット・ローゼンベルグ(いんぐりっと・ろーぜんべるぐ)も葵のサポートとしてビームを発射して頑張っている。
「ふふふ……街を助けたヒーローともなれば、お礼の食べ物を差し入れてもらえるかもしれないにゃー!!」
 野球の練習試合の帰りだったのだろうか、野球のユニフォームを着たままのイングリットは、両手に持ったバットをクロスさせ、そこから赤い色のビームを発射した!!
「燃えてきたにゃー!! バーニングにゃー!! イグリット、クロス・ビィィィム!!」
 赤いビームが激しく夜空を照らし、並みいるクラゲに命中していく。

 次第に鳳明を取り巻いていたパラミタ電気クラゲは数を減らし、周囲の状況が飲み込めてきた。
「ビーム……あれは、一体?」
 呟く鳳明の横を一陣の風のように駆け抜けていった者がいる。

 それは、獣人であり猫であり猫神様であるところの、クロ・ト・シロ(くろと・しろ)であった。
 後ろからゆっくりとやって来たのはそのパートナー、ラムズ・シュリュズベリィ(らむず・しゅりゅずべりぃ)である。
「あの……本当にやるんですか?」
 尋ねるラムズに対し、クロはにやりと笑みを浮かべた。
「あったりめぇだろwwwwwこちとらKAMISAMAだっつーのwwwww」
 あっけにとられる鳳明の前で、二人は何事かを叫び始める。


「しりとりしようぜwwwwwだめならいのちはもらうぞ!!wwwww」


「……はい?」
 ぽつりと突っ込んだ鳳明の呟きももはや遠い。
 だが、そんな鳳明を無視してラムズとクロは本当にしりとりを始めてしまった。

「えー……と、『挨拶』」
 ラムズのジャブに対して、クロの反撃。
「『ツンデレ乙』wwwww」
 すると、不思議なことにクロの口から放たれたしりとりの反撃が、そのまま文字となって飛んでいくではないか。


 美しい軌道を描いて夜空へと飛んでいく『ツンデレ乙』!!


「……しりとりで……攻撃……ってこと?」
 もはや呆然とするしかない鳳明を振り返り、クロは妙に丁寧なポーズでお辞儀をし、言った。
「Exactly(その通りでございます)wwwww」
 と。

 だが、手段はともかくクロとラムズのしりとりは次々にクラゲを落としていく。
 葵とイングリットのコンビも、それぞれにビームを放ってクラゲ退治に一役買っているのは間違いない。

「く……私だけが……何もできてない」
 とりあえずクラゲの脅威から逃れた鳳明だが、無力感に苛まれ、一人で拳を握りしめた。
「私……軍人としての自分がこんなに無力だったなんて……。
 でも、私はまだ立っている。まだ諦めるわけにはいかない……この異常な事態を何とかすることが、私にもできるはず……!!」

 そのとき、夜空を切り裂いて、ひときわ眩しく輝くビームが夜空と鳳明を照らした。
 そのビームは一直線にクラゲの群れを貫き、次々にクラゲを爆発させていく。
「これは……イコンの援護射撃……? いや、違う……!!」
 そこに現れたのは鳳明のパートナー、南部 ヒラニィ(なんぶ・ひらにぃ)だった。

「鳳明っ!! 待たせたなっ!! お主の求める力はここにあるっ!!」
「ひらにぃちゃん!!」
 建物の屋根に乗ったヒラニィは、鳳明にクリスタルを投げ渡した。
「これはっ!?」
 ヒラニィは、鳳明の手の中で輝くクリスタルを指差して、言った。
「それが勝利の鍵じゃ!! お主の守りたいという想いを燃やし、一気に解き放て!!
 このわしとお主、そしてこの場の皆で想いの光輝を放つならば、それはまさに無双!!」
 見ると、劣勢を悟ったパラミタ電気クラゲが一箇所に密集しつつある。

 鳳明は、ヒラニィに渡された『情熱クリスタル』を握り締め、叫んだ。
「うん、分かった!! 私とひらにぃちゃんと――みんなで、この街を守るんだ!!!」
 気合を入れた鳳明とヒラニィの両手に、気合の光が集まっていくのを感じる。
 その様子に気付いた葵はイングリットの元へ飛来し、背中から人工精霊と魔砲ステッキを構え、言った。

「こっちも負けてられないよっ! イングリットちゃん、頑張ったら高級焼肉店に連れてってあげるから!!」

 イングリットの情熱は食い意地で間違っていなかったらしい。その言葉でさらにイングリットは内なる情熱をたぎらせ、その情熱を受けて得両手のバットが激しく燃え盛った!!
「高級焼肉店と聞いては黙っていられないにゃーーーっ!!!」

「……積み木?」
「『気色悪いんで年齢考えてくだしあ』wwwww」
 ラムズのしりとりで発生したセリフビームが、また大きなテキストとなって、ゆっくりとクラゲ群生体へと飛んでいく。
 そこへ、葵とイングリットの合体ビームが放たれた!!


「スターライト・スペシャル・エクスプロージョン!!!」


 葵の人工精霊2対と魔砲ステッキ、そしてイングリットのバットから5本のビームが放たれ、クロの発射した『気色悪いんで年齢考えて下しあ』に合流する。
 そこにタイミングをあわせ、ヒラニィと鳳明は必殺のビームを放つ!!


「いくぞ、これがわしとお主の、『ひらにら波』じゃーーーっ!!!」


 それぞれの両手を合わせた二人の気合ビームは、螺旋を描くように絡まりながら、葵とイングリット、そしてクロのビームを後押しして、ひとつの巨大な光となってクラゲ群生体を包み込んだ。
 やがて、中心から巻き起こる大爆発。
 そんな光景を見守りつつ、鳳明は後に、この日のことを友人に語ったという。


「うん、あのネーミングはないよね」
 と。
 

                              ☆