First Previous |
3 |
4 |
5 |
6 |
7 |
8 |
9 |
10 |
11 |
12 |
13 |
Next Last
リアクション
ニルヴァーナ捜索隊の補充・援軍部隊として、単独行動でパラミタの月を目指していた桐ヶ谷 煉(きりがや・れん)とエヴァ・ヴォルテール(えう゛ぁ・う゛ぉるてーる)のゼファー、無限 大吾(むげん・だいご)と西表 アリカ(いりおもて・ありか)のアペイリアー・ヘーリオスの二機は、思いもよらないところで戦線にはち合わせるハメになった。
「ん? なあ煉くん、捜索隊の要塞だが……アルカンシェルの他に何か聞いていたか?」
大吾は遠くに見える妙な円形の飛行物体を見て、煉に通信する。
煉は首をひねりながら、
「どういうことだ? パラミタの月に降下する円盤のことか?」
「いや、円盤って感じじゃないんだが……」
煉の返事を聞いて、大吾はラピュマルの方を指さす。
煉もそれを見て、モニターと見比べる。
「おかしいな……見たことない形状だし、たとえアルカンシェルだとしても、座標がずいぶんずれてる……」
「てゆーか……あの要塞、戦ってる……?」
アリカが目を凝らす。
エヴァにもイコンと機晶姫が戦っているのが見え、
「うひょーっ! やってるやってるぅ! なあどうする? 当然行くよな? なあっ?」
と、目をキラキラさせて煉を振り返る。
「なるほど、ダークサイズか……」
「ダーク、何?」
煉がラピュマルやその上に立つ人々を分析してつぶやくのを、大吾が聞き返す。
「今は小さいが、悪人どもの集まりさ。きっと何かを企んで月を目指してるんだろう」
煉はそう説明して、捜索隊への合流を優先すべきかと考える。
「なんだかあの人たち、負けそうだよ?」
機晶姫を徐々に撃退しているとはいえ、見るからに多勢に無勢。
アリカは心配そうに言う。
大吾もそれを認識しつつも、
「だが、よく見ると何かバリアらしきもので覆ってあるな……手こずるだろうが、負けることはな……」
と言いかけたところで、ラピュマルを覆う半透明の膜が、フッと消えてなくなる。
「……って、消えた!?」
「わあ! 機晶姫が要塞に押し寄せてるよお!」
「マズいな……アリカ!」
大吾はアリカに指示すると同時に、イコンの向きをラピュマルへ変える。
煉はそれを見て、
「なっ……大ちゃん!?」
「ダークサイズだか洋服サイズだか知らねえが、ここで機晶姫と戦ってるってことは、捜索隊の味方ってことだ。ほっとくわけにはいかねえぜ!」
大吾は堪え切れずに、一足先に突進してゆく。
「ほらほらー、先越されちまったぜ、煉! とっとと指示くれよ! あたしがぶっ壊すぶんがなくなっちまうだろ」
待ちきれないエヴァに、煉はやれやれ、と肩をすくめ、
「エヴァっち、敵隊列の横腹から攻めろ。ダークサイズの支援は必要ないぞ。あの機晶姫を全滅させるだけだ。結果的に捜索隊の援護になることを……って最後まで聞けっ!」
「はいはい、聞いてるよおーっ!!」
と、メインパイロット席のエヴァは煉の指示もそこそこに、加速して参戦に向かう。
☆★☆★☆
マナとグラキエスの活躍(?)により、とうとう料理が間に合わなくなったラピュマルは、最悪の事態を迎える。
アルテミスのバリアが解除され、生身を宇宙空間に晒すことになったラピュマルは、推進力を失ってスピードは落ちないものの、惰性で進行する。
バリアが空気を抑え込むことで発生していた重力も、質量の大きいラピュマルの引力のみとなり、全員の機動力もガクリと落ち、そして、機晶姫の攻撃も受け放題という状態に。
アルテミスの加護に依存していたイコンはラピュマルに張り付かざるを得なくなり、完全な防戦体勢。
また、危惧すべきは空気の問題で、一気に吹き飛んでしまうわけではないが、皮が剥がれおちるように空気の層が少しずつラピュマルから離脱してゆく。
「ふっふっふ。もはやダークサイズは風前の灯火!」
クロセルは宣言するものの、自分の命も吹き消されそうな状況のため、明らかに足が震えている。
布陣が崩れたダークサイズは、ついにブラッディ・ディバインの直接攻撃を許し、機晶姫がビームライフルを撃ち込んでくる。
さらに、数体の機晶姫がラピュマルに上陸せんと降り立ってくる。
「やはりこうなったか。前線は任せて、弾数を温存しておいてよかった」
重量級のイコンである悠のスマラクトヴォルゲ隊は、打って出るのは得策ではないと待機していたが、いよいよパートナー達との合体を開始。
悠の声を聞いて、ネルの犬耳がピクリと反応する。
「行きますか、悠さん!」
翼も満を持した感じで、
「いいでしょう。ボクの左腕部ガトリングで、上陸した機晶姫はせん滅してあげます!」
「そうですか……ならば、わたくしの右腕部パイルバンカーの出番はないかもしれませんね」
「だっから! ガトリングの花嫁って……」
「言ってません」
那未のマジなのかからかってるのか良く分からないコメントに、翼は翻弄される。
悠がパワードスーツの中から声を高める。
「いくぞっ! 四神合体! スマラクトヴォルゲ!!」
「……合体の時、そんな号令ありましたっけ……?」
「……///」
ネルがぽつりと言うが、悠は少しだけ顔を赤くしながらあえて無視。
とにかく、スマラクトヴォルゲ隊はロボットアニメよろしく、回転しながら変形し、頭部、左腕部、右腕部、脚部が合わさって、重厚な合体イコンとなる。
「敵の数は多い。弾は無駄にするな!」
悠が指示を出しながら攻撃を開始。
ラピュマルに着地した機晶姫を、確実に一体ずつ仕留めていく。
ヴェルデ機や泰輔機をはじめ、アルテミスの加護を失ったイコン隊はやむを得ずラピュマル上から機晶姫への地対空攻撃。
乗員は、まるで一般人のように安全な場所を求めて走り回る。
「そこの綺麗でかわいい空京放送局特派員っ!」
サンダー明彦が、イコンのコックピットを開きながら向日葵に声をかける。
「乗れよ、こっちの方が安全だぜ」
「で、でもほかのみんなが……」
「言ってる場合か! まずは我が身を考えろ!」
ナンパのようにも聞こえるが、サンダー明彦は向日葵の身の安全を考えて、自分のイコンに乗せてあげる。
「こいつは鏖殺寺院の懸賞でもらったイコンだからな。外見はあいつらの味方だから、攻撃は受けないぜ」
「そうだったんだ」
「それにほら。この隙にたまには特派員の仕事でもしたらどうだ?」
「戦場リポートってやつだね!」
「臨場感あふれるドキュメンタリーで、エミー賞を狙えるぜ!」
お金がなくて武器を持たないサンダー明彦機は、戦闘に参加せずに見てるだけ。
「ご覧下さい! 今宇宙ではニルヴァーナを賭けた壮絶な戦いが繰り広げられております! あたし秋野向日葵は安全を確保しましたが、銃弾と機械の音は耳をつんざくようです!」
向日葵のリポート中に、敵機晶姫がサンダー明彦機に銃口を向ける。
「あっ! ブラッディ・ディバインの機晶姫が1体、あたしたちを攻撃しようと……ってあれ?」
向日葵とサンダー明彦が首をひねったとたん、機晶姫は発砲。
突然の攻撃に、サンダー明彦機は慌てて逃げまどう。
「ちょっとー! 攻撃受けないんじゃなかったのー!?」
「おっかしいなー!!」
所詮機晶姫。懸賞で当たったイコンそれだけでは、味方と認識してくれないらしい。
だが、彼らがおとりになったおかげで、
「っしゃあっ! 【機神掌】キメ放題だぜ!」
ヴェルデが機晶姫の背後から攻撃し続ける。
ラピュマルでの本土決戦が始まり、流れ弾による危険も、イコンを持たない者に迫り続ける。
「ふにゃーんっ」
日下部 千尋(くさかべ・ちひろ)がころぶのを見て、
「ちーっ! ちいいいいいっ!!」
日下部 社(くさかべ・やしろ)が取り乱したように千尋に駆け寄る。
「大丈夫か、ちー!? ケガはっ!? くそおっ、鏖殺寺院のやつら! ちーに何すんねん、このダボがあああっ!」
「大丈夫だよ、やー兄。ちーちゃん自分でこけただけだから」
「そ、そうか。よかった!」
千尋のこととなると、あっという間にいっぱいいっぱいになる社。
社は、とにかく千尋が身を隠せるところを求めてきょろきょろする。
そこに、
「わーはははは! ここは俺達の出番かな?」
唯一残った1体のDSIに乗りこんで、社と千尋の盾になるクマチャンと超人ハッチャン。
「すごいねクマチャン! 何でそんなに操縦上手いの?」
「俺、スキルも武器も何にもないから、これならできるんじゃないかなって思ってたんだよね。そういう設定がないと、今回俺マジいらない子だから!」
クマチャンは、設定とか若干意味の分からないことを言いながら、早速DSビームサーベルを出す。
やはり超人ハッチャンの頭に乗るラルムは、
「しゅごーい♪」
と、ぱちぱち手を叩く。
「いくぜーっ!」
クマチャンは1体の機晶姫に狙いを定め突進し、対する機晶姫もライフルで反撃してくる。
DSIは何とそれをスイスイ避けて前進。
「くまちゃ(クマチャン)はやーい♪」
「綾香の言った通り、装甲なんか飾りだ! 当たらなければどうということはな……」
ばすんっ
そこに、予期しないところから流れ弾が飛んで来て、DSIの腕を切り落とす。
「……やっぱさ、装甲って必要だよね。飾りじゃないのよ、装甲は」
「逃げろーっ!」
超人ハッチャンはラルムを抱えて飛び出し、クマチャンも逃げたところで、ダイソウのDSI−LLを残して、ダークサイズ用イコンは全て破壊されてしまった。
ブルタは戦況をビデオに収めながら、
「……この辺は不利だから使えないかな……ところでダイダル卿」
『なんじゃ』
「ここは思い切って、人型に変形する時じゃないかい? このサイズなら、機晶姫の100体や200体、ひと薙ぎでしょ」
どこの時空要塞と間違えたか、ブルタはダイダル卿に変身しろという。
『ダイソウトウもおぬしらも、何を勘違いしとるか知らんが、わしゃロボットじゃないんじゃて。そんな機能はついとらんわい』
「でもこのままじゃあ、みんなやられちゃうよ」
『できるとしたら、これくらいかのう』
とダイダル卿が言うと、ラピュマルの地面が盛り上がり、ちょうど塹壕のような避難場所が現れる。
「あそこに避難だ!」
「助かったよダイダル卿!」
「……ていうか、それできるなら先にやっといてくれよ……」
感謝と多少のクレームを受けながら、どうにか一時的に身を守れる状態になる。
First Previous |
3 |
4 |
5 |
6 |
7 |
8 |
9 |
10 |
11 |
12 |
13 |
Next Last