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仲秋の一日~美景の出で湯、大地の楽曲~

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仲秋の一日~美景の出で湯、大地の楽曲~

リアクション

 露天風呂が男女別だったことに、レイカは少しほっとした。
 音楽祭を恋人のカガミと並んで見ることは出来なかったが、仕切り越しに会話を楽しむことは出来ていた。
 ゆっくり、温泉と音楽祭を楽しんだ後。
 2人は部屋に戻ってきた。
「…………」
 レイカは緊張でカチコチになっていた。
「どうした?」
 カガミが怪訝そうに尋ねる。
 とはいえ、大体察しはついていた。
 部屋に敷かれた、2組の布団。
(付き合い始めて、1年以上経つのか)
 彼女とはキス以上のことを、したことがなかった。
(……そうだな、意識しない方が変、か)
「寝ようか」
「う、うん」
 灯を落として、それぞれ布団に入る。
(この機会に……って、ききき期待してるとか、そういうことじゃなくて)
 布団をかぶりながら、レイカは一人悶えていた。
「レイカ」
 名を呼ぶ声に、レイカはびくりと震えた。
 すぐに返事をしたかったけれど、緊張で声が出てこなかった。
 彼女が返事をするより先に――彼女の布団の中に、カガミの腕が入ってきた。
「こっちに、来ないか」
「……う、うん」
 小さくレイカが返事をした途端。
 腕がぐいっと引かれて、カガミの布団の中に引っ張られて。
 抱き寄せられた。
(心臓が口から飛び出しそうです……。カガミには絶対聞こえてる)
 でも、レイカは気付く。
 抱きしめてくれているカガミの心臓も高鳴っていることに。
 次第に、2人の鼓動は同じリズムを刻んでいき――。
 カガミは、レイカの顔を上げさせて、彼女の唇に、自分の唇を重ねた。
 それから再び、彼女を愛しげに抱きしめる。
 言葉は少なくても、確かな愛情を感じて、レイカの心と目頭が熱くなっていく。
 カガミの唇が、レイカの首筋に触れた。
 レイカはぎゅっと目を閉じた。
 こういう時、どうしたらいいのか分からない。
 だからただ、あなたが好きという想いを込めて。
 彼の逞しい背を抱きしめ、身をゆだねていた。
 ――今夜は眠れないかもしれない。

○     ○     ○


 深夜。
 ロザリンド・セリナ(ろざりんど・せりな)は、恋人の桜井 静香(さくらい・しずか)と共に、露天風呂を訪れていた。
 日中は音楽祭を楽しみ、出店を見て回って。
 日が暮れてからは、宿で休憩をとって、夕食を戴き。
 そして、パートナーの テレサ・エーメンス(てれさ・えーめんす)と、メリッサ・マルシアーノ(めりっさ・まるしあーの)が眠りに落ち、露天風呂に誰も居なくなった頃に、ロザリンドは静香を誘ったのだ。
 湯浴み着があるのなら、女湯に入った方が自然な静香だが、湯浴み着を着たままでは体を洗う事が難しい。
 そのため、静香は男湯、ロザリンドは女湯へと入った。
 洗い場で体を洗ってから、湯船に入り。
 ロザリンドは空を見上げた。
 ここから見えるのは、パラミタの夜空。
 星々の配置は、地球の夜空とは違っていた。
「綺麗ですね。街中では、こんなにはっきりと見えませんから」
「ホント、星ってこんなに多いんだね……」
 男湯の方から、静香の声が響いてくる。
 景色のことや、肌や髪の手入れのこと。
 女の子同士のような、他愛もない話をして。
 それから、百合園女学院のことも、ロザリンドは少し聞いてみる。
 静香は、百合園をどうしたいのかと。
 静香の考えは、以前と変わりはないようだった。
 みんな仲良く。
 仲良く出来るよう、努力したいと思っていること。
 静香の考えは、子供のように単純だ。
 だけれど、それを実行し続けることは、叶えることも非常に難しいことだと、ロザリンドは分かっている。
「校長もロイヤルガードですが、もし女王様や代王様達だけでなく、一般の人や、そして私も危険な時は、誰を真っ先に助けたいですか?」
 ふと、ロザリンドは静香にそう尋ねてみた。
 この中から誰かを選ぶのであれば、責任ある者として全体の優先順位が分かっているということだったり、力のない人を護ろうとする心を持っていることがわかったり、そして……一個人として嬉しくもあるのだけれど。
「僕は、大切な人を守りたい……ロザリンドさんのことが大切で、そして百合園女学院の生徒も、女王様も、代王様も、一般の人たちもみんな大切なんだ」
 静香は、たどたどしく、でも迷いのない声で答えていく。
「だから、出来ないって言われるかもしれないけど、みんな助けたいと思う」
「それは全てをどうにかしたいという、甘くて貪欲で難しく厳しい選択ですね」
 ――でも、あなたは、その道を選ばれるのですね。
 そんなロザリンドの言葉に、静香は少し間を開けた後、「うん」と答えた。
「手が足りない部分を、補う事ができたらと思います。そのためには、少しでも強く賢くなりませんと」
「ロザリンドさんは、今でも強くて賢いけれどね。手が届かない人になりそうだよ」
 ロザリンドはくすっと笑みを浮かべた。
「で、ロザリンドさんの答えは? 誰を真っ先に助けたい?」
「……いえ、今の話は冗談です。女王との天秤とか不敬罪にも程がありますから」
 ロザリンドは軽い口調で、こう続ける。
「あ、校長のお背中流しにそちらに行きましょうか?」
 ぴちゃんと音がした。
 静香が湯船で動いた音だ。
 姿は見えないが、静香はロザリンドのすぐ近くにいる――。
「ず、随分と積極的になったね。ほ、本気?」
「これも冗談です」
 ロザリンドはそう言って微笑んだ。
 多分静香も、赤くなって微笑んでいるだろう。
(湯浴み着お借りして、一緒に貸切で露天風呂に入るのも良かったと思いますけれど……)
 姿が見えない方が、素直に言えることもあるなとロザリンドは思った。

 長い間、温泉と会話を楽しんだ後は、ロザリンドのパートナー達を起こさないよう、静かに部屋に戻って。
 並んで一緒に眠りについた。

担当マスターより

▼担当マスター

川岸満里亜

▼マスターコメント

こちらのシナリオは、川岸満里亜と、冷泉みのりの2人で担当させていただきました。
ご参加、ありがとうございました。

■川岸満里亜
 いつもお世話になっております、川岸満里亜です。
 夜風が冷たくなり、温泉や鍋が恋しくなってきました。

 状況的に登場シーンを2か所に分けさせていただいた方や、ご行動が後の誰かのシーンに若干の影響を及ぼしている方がいます。
 少し長くなってしまいましたが、よろしければ全て読んでいただけましたら幸いです。

 貴重なアクション欄を割いての私信等、ありがとうございます。なかなかお返事を書く余裕が持てず、申し訳ありません。

 川岸が担当したページ以下になります。

 1〜2ページ
 4〜8ページ
 13ページ
 16〜19ページ
 21〜24ページ
 26ページ

 次のシナリオでも皆様にお会いできましたら、嬉しいです。

■冷泉みのり
 こんにちは、川岸マスターと一緒にシナリオを担当しました冷泉みのりです。
 今回は当シナリオにご参加いただき、ありがとうございました。
 これから秋の行楽シーズンがやって来ますね。
 皆様も楽しい日々をお過ごしくださいませ。

 冷泉が担当したページは以下になります。

 3ページ
 9〜12ページ
 14〜15ページ
 20ページ
 25ページ

 また、パラ実軽音部へ入部希望の方へ称号を発行しました。
 ご確認ください。

 それではまた、ご縁がありましたらお会いしましょう。