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【マスター合同シナリオ】百合園女学院合同忘年会!

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あけましておめでとう!

 ──そして、再びホール。

 日本で新年の前日と言えば、大晦日。大晦日と言えば年越し蕎麦と、お参り。
 ──和室部分の一角に、小さな神棚があった。
 神棚の側には、白い布をかけた細長い台の上に木の箱が置かれ、箱の中には御守りや破魔矢が並んでいる。
 それらを用意した姫宮 みこと(ひめみや・みこと)は巫女姿だ。ぽつぽつと訪れる参拝者、興味を持った人たちに説明をし、お守りを授けている。
 ここにだって神社にお参りをしたいと思う日本人(に限らないけれど)がいるかもしれない、と思ったのだ。
「あ、はい。二年参りというのは大晦日と新年に……」
 みことの実家は神社なのだ、説明も慣れている。
「ご希望の方には、未熟な身ながらボクが自らお祓いをいたします」
 と、手にした御幣(先っぽに白いぴらぴらの紙が付いたあの棒だ)を持って──厳密には巫女と巫(覡)と女性の神職とその資格ともろもろとは色々区別があるのだろうが、その辺はパラミタでのこと──お祓いをしていた。
(気がつけば2022年もあとわずか。新しい年はすぐそこまで来ていますね)
 そう思うと自然に厳かな気持ちになってくる。
 来年も良い年でありますように、と願いを込めつつ、みことは参拝者にお祓いをしていった。

ラズィーヤさん、ありがとうございました! あなたおかげで開催できました! 桜井校長も!
 あっ! あなたは! これは粗末なものですがほんの気持ちです〜」
 せかせかと、手土産の菓子折りが沢山入った紙袋を腕にかけて、挨拶回りをしているのは、レオーナ・ニムラヴス(れおーな・にむらゔす)だった。
「学園祭では思わぬ展開になり、不肖レオーナ・ニムラヴス18歳、応援して下さった皆々様に恐縮と感謝しきりです!」
 テンション高く手土産を配って回るレオーナが、スタッフの一人一人にまで頭を下げたり、小さなお菓子を渡したり、手を握ったり、腕をからめたり(女性限定)、抱き付いたり(女性限定)、胸いっぱいの感謝に(百合的な)愛情をこめたので、
「今度キスしてお礼しますね」
「あのー、レオーナ様、ちょっとやりすぎですよ」
 どんどん高くなるテンションに危機感を感じたパートナーのクレア・ラントレット(くれあ・らんとれっと)が注意を促すも、
「ごめんごめん、妬いた? それはそうといつもありがとね。新年もいっぱいらぶらぶしたげるからね」
 混じりけのない純粋な瞳なものだからタチが悪い。
「レオーナ様、一年間おつかれさまでした。でも、らぶらぶはしなくて良いです。って……公衆の面前で絡みつかないでくださいっ!!」
 腕をからめてくる彼女から慌てて体を離すクレアを、物欲しげな目で見るレオーナ。
 そんなテンションはレオーナ自身でも、自覚している。
(あぁ、可愛い女の子や綺麗なお姉さまでいっぱいだけど……鼻血出さないように気をつけよう……。
 その上、新年前で無駄にテンションうなぎのぼりだけど、興奮して何かやらかさないように気をつけよう……あ、ティッシュどこだったっけ)
 クレアは反省しているらしきレオーナに疑いの目を向けつつも、彼女と一緒に関係者に挨拶周りをしていく。
 そして時が過ぎ、年越し蕎麦を手早くすすった後、二人はホールの一角に行ってマイクを握った。
 新年のカウントダウンを叫ばせてほしい、とラズィーヤに願い出たのだった。
 ラズィーヤは来賓の方もいらっしゃるから、とメインイベントとしては認めてくれなかったのだが、自分たちで自主的にする分には止めはしない、ということだった。
「昨年一年間お世話になった……ご迷惑をおかけした方々に、ご挨拶をさせていただきます!」
 合同学園祭はありがとうから挨拶を始めたレオーナだったが、その顔は、話しているうちに紅潮してきて……。
「じゅー、きゅー」
(……やば、新年のカウントダウンしてたらテンションが大気圏突入レベルまで上がってきた。ああもう限界)
「さんー、にー、いち……あけましておめでとう……私、脱ぎます!!」
 スポーン。
(……やっちゃった)
 レオーナが手を振り上げたと同時に、彼女の服が空に舞った。
「レオーナ様、なんで新年早々脱ぐんですか!! こんな大勢の前で!!!」
 そうクレアが叫び声をあげようとした──が、それは、結局声にならなかった。
「……え?」
 レオーナが目を白黒させている。というのも、彼女が脱ぎ捨てようとした瞬間、ふわりと布が被さって、一瞬にしてドレスに着替えさせられていたからである。
 レオーナの周囲は、いつの間にか、百合園の家庭科部の生徒達が取り囲んでいたのだった。
 彼女を着せ替えて、女生徒たちがささっと去っていったその後には、
「私を甘く見てもらっては困りますわ☆」
 と、微笑んだラズィーヤいた。


 友人とバカ騒ぎをしたり。
 愛しい人と語り合ったり。
 そんな風に今年の一年は過ぎて、終わり。
 窓の外に教会の鐘が響き、夜空に華が咲き乱れ。

 ──新しい年がやってきた。