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【マスター合同シナリオ】百合園女学院合同忘年会!

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【マスター合同シナリオ】百合園女学院合同忘年会!

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「おひさま、でてきましたです〜」
 太陽を指差しながら、ヴァーナー・ヴォネガット(う゛ぁーなー・う゛ぉねがっと)が声を上げた。
「ほんとだー。初日の出〜。おめでと〜」
 手を叩いて喜んだのは、レイル・ヴァイシャリー。花柄のワンピース姿の女装した男の子だ。
 振袖を纏ったヴァーナーは、彼を後ろから温めるようにハグしてあげている。
「去年はいろんなたたかいがあったです」
 日の出を見ながら、ヴァーナーが小さな声で呟いた。
 皆を守るためには仕方がない戦いだったのだけれど。
 ただ、力が強くなっても次々に強い相手が現れて――いつになっても、終わらない。
「今年はもっとおはなしとか、たたかいいがいで何かできないか考えていきたいです」
 初日の出を見ながら、ヴァーナーはそんな思いを語った。
「レイちゃんは去年、訓練頑張ってたですかー?」
「うん、魔法ずいぶん上手くなったよ! 同い年の子にはぜったい負けないー。それから、剣術の勉強とか、ごしんじゅつっていうのも、習ってるんだよ」
「そうですかー。レイちゃんにも強くなって百合園に来てほしいけど、力がつよくなくても、がんばりとかいろんな強さがあると思うんです」
「うん」
「レイちゃんらしくがんばったらいいと思うです〜」
「うん! 百合園いいよね。可愛い女の子いっぱいだし。ヴァーナーおねぇちゃんもとってもかわいいー。この服、日本のだよね〜。きれいー」
 レイルはヴァーナーの振袖の腕をぎゅっと抱きしめて、頬を当てた。
「レイちゃんもかわいいです」
 でも、可愛いだけじゃダメなんですよね、と。
 ヴァーナーは少し切なく思いながら、レイルの頭を撫でてあげた。
「まわりのみんなの笑顔とかを守る強さや、力だけでない強さを見つけたいです〜」
「むずかしいね。ヴァーナーおねぇちゃんは、強いしかわいいし、いっしょにいるとうれしくなるから、ぜんぶ持ってる気がするよ」
「ありがとです」
 レイルの言葉に素直にお礼を言って。
「もっと、がんばりたいです。レイちゃんも同じようにがんばってみませんですか〜」
 ヴァーナーはそうレイルに尋ねた。
「うん。ボクに何ができるのかなー。学校とか通えたら、何かかわるのかなぁ」
「そうですね。みんなと会えたときのために、いろいろなことを勉強しておくといいかもです」
 彼がこうして自分や皆と――同じ年頃の子供達と交わって、共に成長していくことが出来る。そんな日が、早く訪れればいいなと思いながら。
「あともうちょっとで全部出るよー」
「ほんとです。今年初めての朝ですー」
 ヴァーナーはレイルと共に日が昇りきるまで一緒に見続ける――。

「日本のニューイヤーイベントって静かにやるんですねぇ」
「新年を迎えた後は、そう騒ぐものではありませんね」
「そうですかぁ……」
 リナリエッタは、鈴子と共に、屋上の隅で静かに日の出を眺めていた。
「……」
 鈴子は淡い日の光を浴びながら、目を細めて遠くの空を見ていた。
 彼女が何を考えているのか、リナリエッタには想像がつかない。
 だけれどその表情から、暗い事を考えてはいない、ということはわかる。
「……あっ……!」
 突然、鈴子の細めていた目が見開かれる。
 空を見ていたはずなのに、今目に映っているのは――リナリエッタの顔。
「リ、リナさん?」
 驚いて目を大きく開けたままの顔で、鈴子が声を上げる。
「へへ、こう見えても私、力あるんですよお」
 リナリエッタは、突然鈴子の背後に回り込んで、彼女をお姫様抱っこで持ち上げたのだ。
「ふふ、今から鈴子さんを綺麗な場所にごあんなーい」
「きゃっ」
 小さな悲鳴を上げて、自分に抱き着いてくる鈴子を、リナリエッタは片腕で抱いて給水タンクの上に運ぶ。
「どうです惚れちゃいますかあ?」
「もう……っ」
 鈴子は少し照れた顔で、くすくす笑い出した。
 給水タンクの上でリナリエッタは鈴子を下ろし、一緒に太陽に目を向ける――。
「……とっても、綺麗ですわねえ」
 少し上った朝日を、2人で眺めた。
 地上に顔を出した太陽も、その光も。
 色づいていく街も、とても美しかった。
「……来年も、その先も一緒に……鈴子さんと日の出、見たいですわア」
 ふと、そんな風に呟いたリナリエッタは。
 はっとして鈴子に目を向ける。
 鈴子は優しい目をリナリエッタに向けていた。
「……い、今のはひとり言ですわぁ」
「ええ。OG会の行事として日の出を見てはどうでしょう。元旦に集まるのは難しいかもしれませんが……毎年のように、一緒に見れるといいですわね」
 小さな声で言った後。
 リナリエッタに目を向けて、僅かに悪戯気な目で鈴子は付け加えた。
「今のは私の、独り言ですけれど」
 月日が巡っても、年をとっても。
 2人が共に百合園生であったこと、共に百合園の出身者であることは永久に変わらない。

 アレナは、竜司と若葉分校生や、康之達と語り合いながら、ほのぼの日の出を見ていた。
「あっ」
 着信音に気付いて、アレナが携帯電話を取り出す。
「……はいっ。綺麗です」
 日の出を見ながら、アレナはゆっくりと会話をしていく。
 電話の相手は――。
 康之は知っている。
 電話越しでいいからアレナと一緒に日の出を観てくれないかと、こっそり康之がお願いをした相手に間違いないから。
 アレナの嬉しそうな表情を見れば分かる。
 隣で笑みを浮かべながら康之は、日の出とアレナを見ていた。
 少し離れた場所には、ゼスタの姿がある。
 彼らは悪戯し合った者達と一緒に大勢で初日の出を笑いながら観賞していた。

「Happy New Year!」
 太陽が全て地上に顔を出した途端。
 ヴァーナーが光を背に大きな声で言った。
「あけまして、おめでとー!」
 隣で、レイちゃんも明るい声を上げる。
「おめでとう」
「良い一年になりますように」
「今年も、いっぱいよろしくねっ!」
 優しい朝の光の中、若者達の明るい声が上がった。