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ひとりぼっちのラッキーガール 後編

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ひとりぼっちのラッキーガール 後編

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第37章


 だいたいさ。

 あたしは、目立たない子供だったと思う。
 そう、17番目の四葉 恋歌になる前から。ずっと前から。

 いてもいなくても関係ないっていうか。
 何をさせても人並み。特にできないことはなかったけど、得意なものもない。

 どうして親に捨てられたかも分からなかった。
 そもそも、親がどこの誰かも全く分からないし。探すつもりもないし。

 孤児院の中でも、よく忘れられてるような……そんな子供だった。
 だから、四葉 幸輝に目をつけられたのかも知れない、と思う。


 あたしがいなくなったとしても、誰も気にしないような、そんな子供だったから。


「誰も気にしないだって? 気にするに決まってんだろ!!
 恋歌、死ぬんじゃねえぞ?
 死んだらナラカまでぶん殴りに行くからな!!」

 あ、刀真さんだ。
 そうかなぁ……みんな……気にして……くれるかな。


「逃げずに生きていくのは辛いよ、確かにね。
 僕だってそうだ、必ずしもまともな道を歩いてきたわけじゃない。この手でいくつもの命を奪ったこともある。
 いくつかの命は、救うことが出来たはずなのに、できなかった。
 それでも僕は生きている……そういうものを背負って。
 そこから逃げてしまったら、信じてきたものも、信じてくれたものも、全部裏切ることになるからね。
 同じだよ……今は逃げてもいい。でも、いつかは向き合わなきゃいけない、自分の人生ってやつと。
 確かに四葉 幸輝の道具として利用されてきた。
 確かに四葉 恋歌としての人生は空っぽだっただろうと思うよ。
 でも、大事なのはこれからだ。
 あんたは、あんただ!! 他の誰でもない、新しい四葉 恋歌になればいいんだ!!
 今は何もなくても……これから自分の新しい人生を見つければいいんだよ!!」

 朝斗さん……。逃げずに、向き合う……できるかな、あたしに。


「目を覚まして、恋歌さん……。
 私が友達になったのは、『今の』恋歌さんですぅ……。『四葉 恋歌』という名前を持った誰かじゃない……。
 誰かが『四葉 恋歌』と名乗ったところで、代わりになんてならない……私にとっては知らない人なのですよ……?
 恋歌さん……幸輝さんに利用されたままではなく……新しい自分に変わるのです……まだ、この悲しい連鎖を繰り返すつもりなのですか……?」

 ルーシェリアさん……ゴメン……泣かないで……でもさ……そう簡単には、変われないよ……。


「やあ……ここは暖かいところだね。
 16人の恋歌……連なる歌が奏でたメロディは、さぞ不幸な音色だったことだろう。
 けど、それももう終わり……曲は16小節で一区切りだ。
 これからは、君が新しい17小節目の歌になるんだ。
 四葉 恋歌の不幸なメロディは終わる……君はその幸福だけを引き継ぐ……クローバーの花言葉、『復讐』と共に。
 君は奏でればいい……恋歌達が咲かせられなかった花を、君の一生と共に。
 さあ、もう目覚める時間だよ……」

 あ……八雲さん……これから……できるのかな……あたしに……。


「ふざけるな、あんなクソ親父や胸糞悪い亡霊のために恋歌が犠牲になるなんて納得いくかよ!!
 アニーのために自分が死ぬしかないって、本気で思ってんのか!?
 まだ方法はあるはずなんだ、いくらでもな。
 あたい達がどうしてここに集まってるのか、考えたことはねえのかよ!!」

 乱世さん……そうだよね……迷惑かけてるのに……ゴメンね……。


「まだよ……まだ、貴女はまだ何もしてないじゃないの!!」

 あ……アスカさん……ルーツさんのパートナーの人だ……そういえば、一緒にケーキ、作ったっけ……。

「貴女はパラミタに来てからも3年、しっかり生き残って来られた!
 幸輝の能力にも対抗できる能力があって……まだ生き残れる希望がある!!
 こうやって皆がまだ戦っているのは恋歌ちゃんを助けたいからでしょ!?
 貴女はまだルーツの想いにも応えてない! あのふざけた親父を殴ってない!!
 アニーにも会えないまま……何もできてないじゃない!!
 それに……私はまだ……恋歌ちゃんの友達じゃない……。
 友達にすら、なれてない。
 また、一緒にケーキ作りしたいよぉ……私の中の未来には、まだ恋歌ちゃんの姿がある……恋歌ちゃんがいる……。
 だから、死なないで……絶対に……死なせないから……!!」

 アスカさん……友達……なって、くれるのかな……。
 それに、ルーツさんに悪いこと、しちゃったな……でも……私にそんな、資格なんて……。


「はーい、皆さんこんばんは!!
 倒壊しかけたビルから送る、恋歌たん応援番組、だーいいっかーい、はっじまーるよーーーっ☆」



 ……。


 …………。


 ………………。




 何コレ。