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【裂空の弾丸】Dawn of Departure

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【裂空の弾丸】Dawn of Departure

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第二章 ホーティ盗賊団 2

 飛空艇に乗り込んだ飛行生物たちは、防衛に回った乗組員たちを退けてブリッジへとやってきた。
 扉を壊して、粉塵の向こうから姿を現す。ベルネッサたちはそれを見て、ハッとなった。そこにいたのは、他の飛行生物とは明らかに異質な存在だった。
 その生物は、鳥や小さなドラゴンのような姿ではなく、二足歩行の人型に近いものだった。ただし、肉感的な身体はむき出しにはされておらず、真っ白な外装が隠すようにそれを覆っていた。騎士の純白の鎧を彷彿とさせる。異質な生物は、ブリッジにいるベルネッサとそれを守ろうとする契約者たちを見ると、ぎろりと、魚眼のような目でベルネッサに視線を戻した。
「な、なんなんだ、この野郎は……」
 ベルネッサを守ろうとする匿名 某(とくな・なにがし)が、巨大な剣に変形したフェニックスアヴァターラ・ブレイドを握りながら言った。
「なんだか、ベルネッサさんを見ているみたいです……」
 結崎 綾耶(ゆうざき・あや)がそっとつぶやく。ベルは驚いたように、綾耶を見た。
「あたし?」
「はい。あの先頭にいる変な生き物だけは、なんだか……」
「ごちゃごちゃ言ったってはじまらねぇ! とにかく敵なのは間違いないんだ! 奴らが襲ってくるなら、ぶっ倒すまでよ!」
 綾耶の言葉を遮って、聖騎士槍グランツと呼ばれる槍を構える大谷地 康之(おおやち・やすゆき)が言った。
 すると、飛行生物たちも動き出した。先頭の異形の白い者が指示を出し、契約者たちを取り囲もうとする。すかさず、康之がそれに反応して敵を切り裂いた。
「ベル! 後ろに下がってて!」
 フェイ・カーライズ(ふぇい・かーらいど)がベルネッサを背後に押しやった。
 ベルのことであれば、きっと自分も戦いに加わろうとするはず。案の定、その通りで、勢いが削がれたベルはたたらを踏んだ。
「敵は数が多い! ベルを守るわよ!」
「ええ……絶対にこちら側には通さない!」
 フェイの呼び声に応えて、宇都宮 祥子(うつのみや・さちこ)がベルを守るために壁となった。
 艦内を傷つけないように威力を押さえた爆炎波を放ち、飛行生物たちをふき飛ばす。だが、数が多すぎる。いくら爆炎波を撃っても、敵は見る見るうちに祥子へと押し寄せてきた。
「祥子おねーちゃん!」
 宇都宮 義弘(うつのみや・よしひろ)が、重力を操るグラビティコントロールやカタクリズムと呼ばれる強力な念力で祥子をフォローするが、それでも止めきれない敵がいた。
 祥子は幾度とない攻撃を受ける。純白のスーツに無数の傷が走り、血がたっぷりとそれを染めるが、祥子は一歩も動かなかった。
「絶対に、ここは動かないわよ! ベルのもとにいかせるものですか!」
「祥子……!」
 ベルはとっさに飛びだそうとする。
 が、それを神楽坂 翡翠(かぐらざか・ひすい)が引き留めた。肩をつかまれ、ベルはふり返った。
「焦ってはだめです。どうやら連中の狙いはあなたのようですから。祥子さんやフェイさんが、あなたを守ろうとしているのを無駄にしてはいけませんよ」
「だけど、このままじゃ……!」
「大丈夫です。この程度でやられるほど、契約者たちはやわじゃありませんよ。……美鈴!」
「はい」
 翡翠が呼びかけると、黒髪の美しき女精霊――柊 美鈴(ひいらぎ・みすず)があらわれた。
「任せてください」
 美鈴は翡翠から言葉をいただくまでもなく、翡翠の意思を理解して答えた。すかさず、光や氷の魔法を放ち、弓を射る。
「援護いたします。思い切り暴れて大丈夫ですわよ。皆さん」
 美鈴の援護を受けて、防御に徹していたレギオン・ヴァルザード(れぎおん・う゛ぁるざーど)が、刀を敵に突きつけた。
「ありがたい。これで、俺も剣に専念できるというものだ」
 流れの傭兵時代、時には味方として、時には敵として、ローザフレックとはよく顔を合わせていたが、こうして身をていして守ることになるとは。運命は皮肉なものだ。レギオンは、そう思いながら襲いかかる飛行生物を切り倒していった。
 飛行生物たちに指示を出していた白い者は、そのうち分が悪いと判断したのか、飛行生物たちを引き連れて飛空艇から逃げていった。が、安心するのはまだ早い。敵は一時的に引き上げただけに過ぎない。飛空艇の周りにはまだ無数の飛行生物たちがうようよしているし、いつ総攻撃を仕掛けてきてもおかしくなかった。
「これ以上、艦内に敵の侵入を許してはならない。俺は甲板に行く。あとのみんなはローザフレックを守ってくれ」
 レギオンはそう言って、ブリッジを出て甲板に向かった。
「このままだと、浮遊島に到着するまでにやられちゃう。なにか突破口はないの……。なにか……」
 飛空艇の速度に苛立ちながら、ベルは募る思いを吐き出した。